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「あの学園での異常さを感じていなかった学生は少ないと思いますが、真実を知らないのにも関わらず正確に嗅ぎ取ったのが、今夜義兄となったレイノルド様なのです」
レイノルドの名前にピクリと反応するオーウェンを見て、しかしソフィアは何も声を掛けず話を続けた。
「レイノルド様は、愚兄を元から自分のモノにできないかと…本人が仰るには『絶対に実現しない妄想』だったそうですが、それがあの女性のおかげで叶うのではないかと思い、だいぶ早い時期に父に話を持ちかけていたそうです。父は、殿下たちから内容をある程度聞かされていたことと、愚兄の態度がまったく改まらないことに憤りを募らせていたようで…自分はまだまだ現役だし、孫を後継にしてもよいかと…それで、レイノルド様のお話に乗ったそうです」
「…そう」
ポツリと反応したオーウェンからはまた言葉が出てこなくなる。
「…それで、…ウソのような話なんですが、レイノルド様の執念というか…男性のカラダを、女性に作り替えるクスリというものを、ある国から手に入れたそうで」
「…は?」
思わず顔を上げ、視線がぶつかるとオーウェンは恥じるようにフイッと目を逸らした。その目元が赤く染まり、紫の瞳が潤んでいるのをソフィアは見逃さなかった。しかしそれにはわざと触れず、話を進める。
「レイノルド様は伯爵家の後継です。貴族として後継を残すことが義務だということは重々わかっているけれど、愚兄を諦めきれず」
「…男色ならば、そもそも後継は無理なんじゃないのかい。女性を抱くことはできないと聞くけれど」
俯いたまま口を開いたオーウェンのつむじを凝視しながら、ソフィアは、「いいえ」と答えた。
「レイノルド様は男色ではありません。愚兄が好きな変態なんですの、殿下」
「…変態」
「ええ。変態でしかありませんわ…今朝私にドレスを着せたでしょう?あれは、私のことを嫌いな愚兄に対する虐めですの。ウェディングドレスだというのに他の女…それもよりによって自分が憎んでいる私に、先に袖を通されてしまって。それを告げた時の傷付き、泣く顔がたまらないんですって。勃起する、って仰ってましたわ」
「ソフィア…」
自分の言葉に呆然としたように顔を上げたオーウェンに、ソフィアは微笑んだ。
「こんな言葉を発するなんて、はしたないとお思いですか?でも私はこれから、ジェンキンス侯爵家の後継として海千山千の相手をしなくてはなりません。奥ゆかしくいることがすべてではない、それでは闘えない。箱入りの令嬢でいられないと気付かせてくださったのは殿下です。感謝申し上げます」
笑っていないソフィアの瞳に、オーウェンの絶望はさらに深くなる。
レイノルドの名前にピクリと反応するオーウェンを見て、しかしソフィアは何も声を掛けず話を続けた。
「レイノルド様は、愚兄を元から自分のモノにできないかと…本人が仰るには『絶対に実現しない妄想』だったそうですが、それがあの女性のおかげで叶うのではないかと思い、だいぶ早い時期に父に話を持ちかけていたそうです。父は、殿下たちから内容をある程度聞かされていたことと、愚兄の態度がまったく改まらないことに憤りを募らせていたようで…自分はまだまだ現役だし、孫を後継にしてもよいかと…それで、レイノルド様のお話に乗ったそうです」
「…そう」
ポツリと反応したオーウェンからはまた言葉が出てこなくなる。
「…それで、…ウソのような話なんですが、レイノルド様の執念というか…男性のカラダを、女性に作り替えるクスリというものを、ある国から手に入れたそうで」
「…は?」
思わず顔を上げ、視線がぶつかるとオーウェンは恥じるようにフイッと目を逸らした。その目元が赤く染まり、紫の瞳が潤んでいるのをソフィアは見逃さなかった。しかしそれにはわざと触れず、話を進める。
「レイノルド様は伯爵家の後継です。貴族として後継を残すことが義務だということは重々わかっているけれど、愚兄を諦めきれず」
「…男色ならば、そもそも後継は無理なんじゃないのかい。女性を抱くことはできないと聞くけれど」
俯いたまま口を開いたオーウェンのつむじを凝視しながら、ソフィアは、「いいえ」と答えた。
「レイノルド様は男色ではありません。愚兄が好きな変態なんですの、殿下」
「…変態」
「ええ。変態でしかありませんわ…今朝私にドレスを着せたでしょう?あれは、私のことを嫌いな愚兄に対する虐めですの。ウェディングドレスだというのに他の女…それもよりによって自分が憎んでいる私に、先に袖を通されてしまって。それを告げた時の傷付き、泣く顔がたまらないんですって。勃起する、って仰ってましたわ」
「ソフィア…」
自分の言葉に呆然としたように顔を上げたオーウェンに、ソフィアは微笑んだ。
「こんな言葉を発するなんて、はしたないとお思いですか?でも私はこれから、ジェンキンス侯爵家の後継として海千山千の相手をしなくてはなりません。奥ゆかしくいることがすべてではない、それでは闘えない。箱入りの令嬢でいられないと気付かせてくださったのは殿下です。感謝申し上げます」
笑っていないソフィアの瞳に、オーウェンの絶望はさらに深くなる。
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