【完結】あなたのことが好きでした

３９

一通り騒がしくしたレイノルドが、ソフィアが脱いだドレスを大事そうに抱えて意気揚々と引き揚げていく。

「…ずいぶん、…打ち解けているというか、…仲が、…いいんだね、」

絞り出すように呟くオーウェンに視線を向けたソフィアは、「そうですね…」と首を傾げると、

「家族になりますからね」

と困ったような顔で微笑んだ。その微笑みが、レイノルドのすべてを肯定しているように見えてオーウェンは苛つく心を抑えることができない。確かに学園の３年間、自分はソフィアから距離を置いていた。それであってもこの二人の親密さはなんだ？影から報告があがらなかっただけで、…ソフィアは、あの男と愛を育んでいたのか？

「…貴女に会いたいと、ジェンキンス侯爵に再三お願いしていたんだが、指定されたのが今日だったんだ。まさか、結婚式だなんて、」

「私もつい半月前に知らされたばかりなんです。お父様は殿下にも参列していただきたかったのですね」

フワリ、と微笑んだソフィアに、オーウェンは粉々に打ちのめされた。もう、すべてが遅いのだと、そう言われているも同然だ。

「…帰るよ」

そう呟き、フラリと立ち上がったオーウェンの手を、ソフィアが掴んだ。その久し振りすぎる柔らかな温もりに胸が熱くなり、しかし、この温もりが今夜他の男のものになるのかと思い至って、オーウェンのカラダは急速に冷えていく。ドクン、ドクン、と鼓動だけがうるさく反響する耳に、残酷な言葉が届く。

「殿下、せっかく来てくださったのですから…結婚式、出席してくださいませ。見届けていただきたいですわ」

ニコリと微笑むソフィアの顔がぐにゃりと歪み、オーウェンは生涯で初めて気を失った。