38 / 57
38
しおりを挟む
二人で席に付き、出された紅茶を含んだ後、オーウェンは震えだす手を必死に握りしめ「パーカー君」と呼んだ。
「はい、なんでしょう?」
ニコニコと屈託なく笑うレイノルドの瞳にイヤな色を感じ、オーウェンは一瞬黙った後、振り切るように首を振り口を開いた。
「今夜、…結婚式なのかい?」
「ええ!そうなんです!やっとこの日を迎えました!」
ムカムカする心を必死に押さえ、オーウェンは笑顔を取り繕う。
「…夜に結婚式だなんて、変わっているね」
「ええ、こちらでは特に披露する必要もありませんし、何しろ結婚式が終わったらすぐに初夜を迎えたくて、僕が!待ちに待った今夜、初めてカラダを見ることができるかと思うともう、はち切れんばかりです!」
楽しみだなぁ、といいながら股間に手を当てるレイノルドに、オーウェンはあからさまな嫌悪感を見せた。その表情を見て、レイノルドがニヤーッと嗤う。
「…まさか、こんな形で手に入れることができるなんて、入学する前は思ってもみませんでした。これもすべて第1王子殿下のおかげです!」
ありがとうございます、とニヤニヤされ、オーウェンはもう取り繕うことができなかった。
「…ずっと、狙っていたと、そういうことか?」
斬り殺さんばかりの威圧を向けられてもヘラリとかわしたレイノルドは、
「ええ!入学前からずーっと狙っていたんです!」
とニヤニヤする。そのバカにしたような物言いにオーウェンが怒鳴りつけようと立ち上がった時、「お待たせしました」と声がした。
「ソフィア!」
バッ、と立ち上がったレイノルドは主人に纏わりつく犬のようにソフィアの周りをグルグル回りながら、「可愛い!」「美しい!」「あー、やっぱり純白にしてよかったぁ!」「僕も白のタキシードだからね、ソフィア!」「可愛い!」とニコニコする。それを呆れたように見ていたソフィアが、ふ、と微笑むのを見て、オーウェンの胸は締め付けられるように痛んだ。
「わざわざこんなことしなくてもいいでしょうに…」
「ふふ、僕なりの愛情表現だから!」
また呆れたように笑うソフィアを呆然と見やるオーウェンは、レイノルドが自分を見ながらニヤリとしたことに気づけなかった。
「はい、なんでしょう?」
ニコニコと屈託なく笑うレイノルドの瞳にイヤな色を感じ、オーウェンは一瞬黙った後、振り切るように首を振り口を開いた。
「今夜、…結婚式なのかい?」
「ええ!そうなんです!やっとこの日を迎えました!」
ムカムカする心を必死に押さえ、オーウェンは笑顔を取り繕う。
「…夜に結婚式だなんて、変わっているね」
「ええ、こちらでは特に披露する必要もありませんし、何しろ結婚式が終わったらすぐに初夜を迎えたくて、僕が!待ちに待った今夜、初めてカラダを見ることができるかと思うともう、はち切れんばかりです!」
楽しみだなぁ、といいながら股間に手を当てるレイノルドに、オーウェンはあからさまな嫌悪感を見せた。その表情を見て、レイノルドがニヤーッと嗤う。
「…まさか、こんな形で手に入れることができるなんて、入学する前は思ってもみませんでした。これもすべて第1王子殿下のおかげです!」
ありがとうございます、とニヤニヤされ、オーウェンはもう取り繕うことができなかった。
「…ずっと、狙っていたと、そういうことか?」
斬り殺さんばかりの威圧を向けられてもヘラリとかわしたレイノルドは、
「ええ!入学前からずーっと狙っていたんです!」
とニヤニヤする。そのバカにしたような物言いにオーウェンが怒鳴りつけようと立ち上がった時、「お待たせしました」と声がした。
「ソフィア!」
バッ、と立ち上がったレイノルドは主人に纏わりつく犬のようにソフィアの周りをグルグル回りながら、「可愛い!」「美しい!」「あー、やっぱり純白にしてよかったぁ!」「僕も白のタキシードだからね、ソフィア!」「可愛い!」とニコニコする。それを呆れたように見ていたソフィアが、ふ、と微笑むのを見て、オーウェンの胸は締め付けられるように痛んだ。
「わざわざこんなことしなくてもいいでしょうに…」
「ふふ、僕なりの愛情表現だから!」
また呆れたように笑うソフィアを呆然と見やるオーウェンは、レイノルドが自分を見ながらニヤリとしたことに気づけなかった。
68
お気に入りに追加
2,898
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる