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入学式が無事に終わり式場から順番に生徒が出始める。成績順で決められたクラスは5クラスでオーウェン、ソフィア、チェイサー、ベンジャミンは同じ1組だった。1組から退場、と教師の誘導に従い歩き始めたオーウェンは、式場から出たところで前を歩いていた女子学生にぶつかった。突然歩みを止めてしまったから避けることもできずに、倒れてしまった女子学生に手を伸ばした。
「すまない。大丈夫かな」
「い、いえ、こちらこそ、申し訳ございません」
そう言って躊躇うことなくオーウェンの手を取った女子学生は、立ち上がりニッコリと微笑んだ。
「ありがとうございます、殿下」
立ち上がっても自分の手を離さず、それどころか距離を詰めようとする女子学生にオーウェンの表情が変わる。
「いきなり立ち止まるものではないよ。周囲に迷惑だ」
オーウェンの冷たい声に、しかし女子学生はまったく怯むことなく、
「申し訳ございません、少し、立ちくらみがしたものですから、…あっ」
とオーウェンにしなだれかかるように倒れた。
「…」
周囲に聞こえない程度に舌打ちをしたオーウェンは、
「ソフィア、ごめんね、乗り掛かった、…無理矢理乗せられた船だから、この生徒を保健室に連れていくから…」
するとベンジャミンが「兄上」と声をかけた。いつものウザ絡みか、こんな時に面倒な、と内心イライラしながら顔には出さずに
「なんだい」
と視線を向けると、そこには今まで見たことのない顔をしたベンジャミンが立っていた。
「…ベン?」
「兄上がわざわざ連れていく必要はないでしょう…学園では身分による区別をしないとは言え、そんなのは建前だと誰もが知っていることだ。…キミ、不敬だよ。いつまで第1王子にベタベタ触れているのかな…。婚約者の令嬢もいるというのに、あまりにも常識がなっていないんじゃないか?それともまさか、兄上の命を狙っての狼藉なのかい?」
ベンジャミンの冷たい言葉に、
「そ、んな、」
とフルフルとカラダを震わせるクリスティーナ。庇護欲をそそるようなその仕草に、しかしベンジャミンはまったく意識を向けず、傍らの侍従に「職員を呼べ」と指示し、クリスティーナの腕をグッ、と引っ張った。
「兄上から離れなさい」
「すまない。大丈夫かな」
「い、いえ、こちらこそ、申し訳ございません」
そう言って躊躇うことなくオーウェンの手を取った女子学生は、立ち上がりニッコリと微笑んだ。
「ありがとうございます、殿下」
立ち上がっても自分の手を離さず、それどころか距離を詰めようとする女子学生にオーウェンの表情が変わる。
「いきなり立ち止まるものではないよ。周囲に迷惑だ」
オーウェンの冷たい声に、しかし女子学生はまったく怯むことなく、
「申し訳ございません、少し、立ちくらみがしたものですから、…あっ」
とオーウェンにしなだれかかるように倒れた。
「…」
周囲に聞こえない程度に舌打ちをしたオーウェンは、
「ソフィア、ごめんね、乗り掛かった、…無理矢理乗せられた船だから、この生徒を保健室に連れていくから…」
するとベンジャミンが「兄上」と声をかけた。いつものウザ絡みか、こんな時に面倒な、と内心イライラしながら顔には出さずに
「なんだい」
と視線を向けると、そこには今まで見たことのない顔をしたベンジャミンが立っていた。
「…ベン?」
「兄上がわざわざ連れていく必要はないでしょう…学園では身分による区別をしないとは言え、そんなのは建前だと誰もが知っていることだ。…キミ、不敬だよ。いつまで第1王子にベタベタ触れているのかな…。婚約者の令嬢もいるというのに、あまりにも常識がなっていないんじゃないか?それともまさか、兄上の命を狙っての狼藉なのかい?」
ベンジャミンの冷たい言葉に、
「そ、んな、」
とフルフルとカラダを震わせるクリスティーナ。庇護欲をそそるようなその仕草に、しかしベンジャミンはまったく意識を向けず、傍らの侍従に「職員を呼べ」と指示し、クリスティーナの腕をグッ、と引っ張った。
「兄上から離れなさい」
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