【完結】あなたのことが好きでした

蜜柑マル

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「明日からいよいよ学園だね」

ジェンキンス侯爵家の庭園をソフィアの手を大事そうに握りながら歩くオーウェンは、傍らのソフィアを見つめた。目が合うとニッコリ微笑むソフィアに、オーウェンの胸は酷く掻き乱される。

(…っ、かっ…、か…っっっっわいい…っ!!!なんなんだこの可愛さは、なんでこんなに可愛いんだ、僕の理性を試しているのか!?…くそぅ…つらい…)

まったく顔には出さず心の中で本能、煩悩と闘うオーウェンとはまた違う意味でソフィアも心中で闘っていた。

(学園に通いはじめたら、…オーウェン様は、私では物足りなくお思いになるかもしれない)

オーウェンが自分を大切に思ってくれていることは常々感じているが、それに見合うだけのものが自分にあるとは思えなかった。オーウェンは、まだ「国王になる(そのために王太子になる)」とソフィアに言ったことはない。以前話した時には「実力がない」とも言っていた。しかし、周囲はそうは見ていない。年が一番上だから、というのを差し引いてもオーウェンが優れていることは明白の事実だ。自分の前ではまったくそんな素振りも見せず、いつも柔らかく優しい笑顔のオーウェンは、父によればいつでも平淡で冷静、もっと言えば冷酷さを併せ持っているらしい。様々な面で王族としての責務を果たし、国王陛下の信任も厚いという。

(それに比べて私は…)

国王になると決めたならオーウェンを応援すると言ったその気持ちに偽りはないものの、そのオーウェンの隣に立つのが果たして自分でいいのかどうか。第3王子のパーシヴァルが学園を卒業するまでは立太子はないが、それが果たして3年後かと言われればそうではない。何しろ第2王子のベンジャミンが、ひとつ下にも関わらずオーウェンと共に学園に通うと飛び級することになったのだ。パーシヴァルの婚約者であるオランジェの話では、オーウェンを尊敬しているパーシヴァルも相当優秀だと聞く。嬉しそうに可愛らしくパーシヴァルのことを惚気るオランジェの顔を、ソフィアは複雑な思いで見つめた。
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