【完結】あなたのことが好きでした

蜜柑マル

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婚約解消後、パーシヴァルは両親ではなくオーウェンに自分の婚約者の選定を相談した。常にソフィアのことを見守らせ、自分も手を尽くしているオーウェンの眼鏡に叶う令嬢であれば、と考えてのことだ。前回同様の事態になったら今度は自分が消されるかもしれないという恐怖心が働いたことは言うまでもない。

「少し待つことはできるかい」

そう言った兄に一も二もなく頷いたパーシヴァルに提示されたのは、ジェンキンス侯爵家が家族ぐるみで付き合いのある、同じ侯爵家の令嬢だった。オランジェ・アビントン侯爵令嬢は、パーシヴァルのひとつ年下で、ソフィアを「お姉様」と慕う笑顔の可憐な少女だった。初めて顔を合わせた時、オランジェはパーシヴァルをじっと見つめたあと、ふわりと微笑んだ。その愛らしいオレンジの瞳に一瞬で恋に落ちたパーシヴァルは、その日からオーウェンと行動を共にするようになる。もちろん、兄とその婚約者であるソフィアが会っている時間は避けて。

オランジェを手放したくないと思ったパーシヴァルは、婚約者を大事にするオーウェンから学び取ろうと躍起になった。何週間か経つと、相手を大事にするだけではなく、自分に夢中になってくれるように自分自身を高めなくてはならないのだということに気付いた。そこからは時間の許す限りオーウェンと共に学び、理解できないことは蔵書庫に籠り本を読み漁った。半年ほど経つとそこに第4王子も混ざるようになり、3人で切磋琢磨しながら学ぶ様子は国王の耳にも届くようになった。

「オーウェン。おまえは弟たちをよく導いているな」

ある晩餐時にそう声を掛けられ、それに対していつも通り「ありがとうございます」と平静に答えたオーウェンを、ベンジャミンが鼻で嗤った。

「兄上は一人では立てないから弟たちを巻き込んで数で勝とうという魂胆ですか」

何も答えずうっすらと微笑んだままのオーウェンに、ベンジャミン以外の弟たちもなんの反応も見せなかった。煽りに乗らないオーウェンにベンジャミンは苛立ちのまま口汚く罵る。国王の瞳の色には気づかないままに。
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