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執事の「…お嬢様、」というなんとも言えない感情の載せられた声で我に返ったソフィアは、そっとオーウェンを見上げた。
「オーウェン、さま」
「…っ、…もう一回、呼んで、ソフィア」
「…オーウェン様」
「もう、一回、」
「オーウェン様」
「もう一回、お願い、」
「オーウェン様」
またお互いに真っ赤になりながら見つめ合ったふたりは、同時にプッ、と吹き出した。
「…ソフィア、大好きだよ。ありがとう。…大好き」
「私も、…すき、です、オーウェン様」
そう言ってソフィアは、執事に手渡された封筒をオーウェンに差し出した。
「…これは?」
「オーウェン様が、毎日お花を持ってきてくださって、嬉しくて、何かお返しを、と思って考えたのですが、…お返しになるか、わかりませんが、私は文字を、オーウェン様に贈ろうと思って、したためました…」
差し出された手が少しだけ震えていて、オーウェンはあの日ソフィアがしてくれたように両手でその封筒ごとそっとソフィアの手を包んだ。
「とっても嬉しい、僕に、時間を…会っていない、一緒にいないときでも、僕のために、僕のことを考えてソフィアが手紙を書いてくれるなんて、…とても幸せな気持ちになる。…ありがとう、ソフィア」
オーウェンの言葉に驚いたように顔を上げたソフィアは、自分を見つめるオーウェンを見て瞳を潤ませた。
「オーウェン様、」
「ソフィア…?」
ポタリと零れる涙に驚いたオーウェンが慌ててハンカチを探すと、「私、」とソフィアが泣きながら笑った。
「私、オーウェン様が見つけてくださって、私を好きになってくださって、本当に、幸せです。そんなふうに言っていただけるなんて、…嬉しいです」
キュッ、と抱き付いてくるソフィアの感触に今更ながらオーウェンは身を固まらせ、そのまま赤い顔で天を見上げた。周囲がそろそろ、と憚られるように声を掛けたのは、それからさらに10分後のことだ。
「オーウェン、さま」
「…っ、…もう一回、呼んで、ソフィア」
「…オーウェン様」
「もう、一回、」
「オーウェン様」
「もう一回、お願い、」
「オーウェン様」
またお互いに真っ赤になりながら見つめ合ったふたりは、同時にプッ、と吹き出した。
「…ソフィア、大好きだよ。ありがとう。…大好き」
「私も、…すき、です、オーウェン様」
そう言ってソフィアは、執事に手渡された封筒をオーウェンに差し出した。
「…これは?」
「オーウェン様が、毎日お花を持ってきてくださって、嬉しくて、何かお返しを、と思って考えたのですが、…お返しになるか、わかりませんが、私は文字を、オーウェン様に贈ろうと思って、したためました…」
差し出された手が少しだけ震えていて、オーウェンはあの日ソフィアがしてくれたように両手でその封筒ごとそっとソフィアの手を包んだ。
「とっても嬉しい、僕に、時間を…会っていない、一緒にいないときでも、僕のために、僕のことを考えてソフィアが手紙を書いてくれるなんて、…とても幸せな気持ちになる。…ありがとう、ソフィア」
オーウェンの言葉に驚いたように顔を上げたソフィアは、自分を見つめるオーウェンを見て瞳を潤ませた。
「オーウェン様、」
「ソフィア…?」
ポタリと零れる涙に驚いたオーウェンが慌ててハンカチを探すと、「私、」とソフィアが泣きながら笑った。
「私、オーウェン様が見つけてくださって、私を好きになってくださって、本当に、幸せです。そんなふうに言っていただけるなんて、…嬉しいです」
キュッ、と抱き付いてくるソフィアの感触に今更ながらオーウェンは身を固まらせ、そのまま赤い顔で天を見上げた。周囲がそろそろ、と憚られるように声を掛けたのは、それからさらに10分後のことだ。
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