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「ただの刷り込みだと言われてしまえばそうなのかもしれないね。でも、…僕はキミのことをその時好きになった。ずっと一緒にいたい、って。あの日一日しか会えなかったのはね、ソフィア嬢。僕が愚かにもキミと結婚したいなんて言ってしまったからなんだ。第1王子である僕と縁を繋ぎたい貴族はたくさんいる。不敬にも、間者を忍ばせているような家もある。おまえの不用意な発言でジェンキンス侯爵家に迷惑がかかったら責任がとれるのか、と、…陛下に、叱責されてね。3歳だからよくわからない部分もあって質問したら、『おまえのせいでソフィア嬢が死んだらどうするんだ』って言われて…殺されるかもしれないんだぞ、って、…あまりにも直接すぎるけど、その言葉は僕を律するに余りあるくらい、そのくらい衝撃的だった。ソフィア嬢、キミを欲しいのに、キミを奪われるなんて、しかも自分の行動のせいで…。
それで、我慢したんだ。弟たちがたくさん生まれたおかげで、ましてや我が国は王子がたくさんいる場合、そのうちの3人が学園を卒業するまでは立太子しないから、僕だけに集中しなくなったからね、ありがたいことに。だけど、学園に入る前にははっきり僕のモノだと、…こんな言い方ごめん。でも、僕の婚約者なんだと絶対に知らしめたくて、キミを誰にも渡したくなくて、…無理に進めて、申し訳なかった。…好きなんだ、ソフィア嬢。だから、僕を知って欲しいし、他の男が入ってこないよう、…婚約者に…なって欲しいんだ…」

最後は呟くような小さな声でそう告げたオーウェンのカラダは、小刻みに震えていた。ソフィアは何も言葉が出てこなかった。一緒に遊んだことすら忘れている薄情な自分を守るために、オーウェンが頑張ってくれていたことに衝撃を受けたのと、なぜ自分を好きだと思うのか理解はしたけれども、それは遠い日の幼い自分だ。今のソフィアではない。今のソフィアを、自分を、オーウェンがどう感じるのか、…怖い。「やっぱり違う」と拒絶されたら、…断りたかったのに、なぜかそんなふうに思ってしまう自分の心がよくわからなかった。

「…あの、殿下、私は、…申し訳ありません、まったく覚えてなくて、それに殿下が好きになったというあの頃の私とは違うかもしれませんし」

「…そんな簡単に、本質は変わらない」

オーウェンはまだ震えながら、細く息を吐いた。
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