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ぼんやりと目を開ける。頭の下がふんわりと柔らかい…。

自分をじっと見下ろす紫色の瞳と目が合っても、覚醒しきらないソフィアは自分の状況を認識できずにいた。心配そうなその瞳を見て、どうしたのだろうかと思わず手を伸ばす。

「…だいじょうぶ?」

ハッ、としたようにカラダを固まらせた、その感触が頭の下から伝わり、ソフィアも一気に覚醒する。

「も、うしわけありません…っ!」

慌てて起き上がろうとしたソフィアの肩を押さえたオーウェンは、「落ち着いて、ソフィア嬢」とソフィアを安心させるように優しく微笑んでみせた。

「急に起き上がると危ないよ。…ほら、ゆっくり深呼吸してごらん」

そんなことを言われても、こんな状態で不敬ではないのか。また顔を青くしていくソフィアに、オーウェンは「こら」と声をかけると頬をそっと撫でた。

「深呼吸するんだよ、ソフィア嬢。僕もキミも同じ人間だろう。キミを食う怪物じゃないんだよ、僕は。そんな反応をされるとさすがに傷つくよ」

しょんぼりしたように目線を落とされて、ソフィアは息が苦しくなるのを感じた。何をどうするのが正解なのかわからず、とうとう涙腺が決壊したように一気に泣き出した。

「申し訳ありません…っ!もう、やだぁ…っ!わたし、わ、わたし、なんか、殿下に近づくのも無理なのに、だいたい、消去法で選ぶしかなかったのに…っ!わたし、悪くない…っ!」

うわーん、うわーん、と大声で泣き出したソフィアを、オーウェンはそっと抱き起こすと横抱きのままギュッと抱き締めた。

「悪くないよ」

「やだ、もう、わたし、やめて」

「やめないよ」

「やだ」

「ソフィア嬢がいいんだよ」

「うそ…うそばっかり」

わんわん泣きながら自分の胸を弱々しい力で叩くソフィアを見て、なぜ消去法などと言い出したのかオーウェンは怒りを感じた。ソフィア本人に、ではなく、ソフィアにそう思わせるような言い方をしたであろうジェンキンス侯爵に。

ソフィアはまったく覚えていないようだが、オーウェンは3歳の時初めて会って一日だけ一緒に遊んだソフィアのことが好きだった。ただ、王妃である母に面白がられ揶揄われるのが目に見えていたために、無意味な条件をつけてソフィアしか選べないようにしたのだ。ソフィアを望んだのはオーウェン自身の恋心、それだった。
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