【完結】あなたのことが好きでした

蜜柑マル

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「こんにちは、ソフィア・ジェンキンス侯爵令嬢。こうして会うのは初めてだね。僕はオーウェン・ハロウズ、国王陛下の第一子だよ。…緊張してるのかな、顔が真っ青だ」

オーウェンにそっと頬に手を添えられ、ビクッとカラダを跳ねさせたソフィアはますます顔を青くし、「も、うしわけ、ございま、せん、」と途切れ途切れに答え頭を下げた。その震えるカラダを見たオーウェンは、

「父上、母上、彼女はどうやら恥ずかしがりやのようです。庭園を案内しながら、二人きりで話をしたほうが緊張はほぐれるかと。ジェンキンス侯爵、構わないだろうか」

バッ、と顔を勢いよく上げてブンブンと首を横に振ってみせる真っ青な顔の娘を気の毒に思いながらも、ジェンキンス侯爵はにこやかにオーウェンに答えた。

「ええ、殿下。娘は花が好きでして…庭園をご案内いただけるとは大変喜ばしいことです。お恥ずかしながら、娘は何しろ世間知らずでまともに王宮に連れて来たのも本日が初めてです。殿下にお会いするというだけでも舞い上がっておりましたのに、ご一緒の時間を過ごさせていただけるとは…舞い上がりすぎて何か粗相をするといけませんので、一時間ほどしたらお戻りいただけますか」

ジェンキンス侯爵の言葉にニコリと微笑んだオーウェンは、

「あいわかった」

と言うと、顔面蒼白なソフィアに手を差し出した。

「ソフィア嬢、エスコートさせてくれるかな…さ、お手をどうぞ」

ここまでされて断れるはずもなく、ソフィアは嘔吐しそうな自分を必死に鼓舞し「…ありがとうございます」と囁くようなか細い声でなんとか答え、差し出されたオーウェンの手にそっと己の手を重ねた。震える手を止めることができず、動悸も激しくなり息が止まりそうになっているソフィアは、なんとか吐かないようにしようと頭がいっぱいで、エスコートしているオーウェンの手がひんやりしていることにはまったく気づけなかった。自分の手もそれ以上に冷えていたこともある。

なんとか庭園まで辿り着いたソフィアは、「着いた」という安心から緊張が途切れ、ふ、と意識が遠退いた。
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