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ソフィアがオーウェンに正式に会ったのは、13歳になる春だった。第1王子であるオーウェンは立太子こそしていないものの、将来の国王に一番近い立場であると言われている。そのオーウェンの婚約者に、と父に言われた時、ソフィアは青ざめ首を横に振った。
「お、とうさ、ま、…私には、そんな…無理です、お断りしてください」
真っ青になる娘にジェンキンス侯爵は心を痛めたが、王家からの申し込みを断ることはできない。
「ソフィア、…すでに決まったことなんだ。公爵家にもオーウェン殿下と同い年の令嬢はいるが、血が近いからと陛下が渋られてね。侯爵家で同い年なのは、ソフィアと、それからマーベリック家の令嬢の二人だが、あちらはすでに婚約者がいる。だから、」
だから。
消去法で選ばれたと言われ、ソフィアは惨めな気持ちになった。そうだ。私なんかが元々選ばれたりするはずがない。たまたま、条件にあったのが私だ、というだけで。
そう考えて、ソフィアはさらに惨めになり、同時に底知れぬ恐怖も感じた。私しかいないから、だから仕方なく私を選ぶしかなかった。そのことをオーウェン殿下はどう思っているのだろう。眉目秀麗で、文武に優れた第1王子殿下。その隣に立つのが私だなんて…。
オーウェンは、王家の血筋であることを示す、闇夜に美しく煌めく三日月を思わせる銀髪に、深い紫の瞳を持つ。対してソフィアは平凡な栗色の髪に新緑の緑の瞳。自分で自分の容姿を卑下したことなどなかったが、あのオーウェンの隣に立つには「地味」としか言い様がない。余り物で、しかも地味。オーウェンにとっていいことなど何もない、それが私だ。
顔合わせを2週間後に、と言われ、ソフィアは毎日鬱々と過ごした。やっぱり間違いだったと言ってくれないかと心から願ってみたが、ついぞその祈りが叶えられることはなく、オーウェンとの顔合わせの日を迎えてしまった。
「お、とうさ、ま、…私には、そんな…無理です、お断りしてください」
真っ青になる娘にジェンキンス侯爵は心を痛めたが、王家からの申し込みを断ることはできない。
「ソフィア、…すでに決まったことなんだ。公爵家にもオーウェン殿下と同い年の令嬢はいるが、血が近いからと陛下が渋られてね。侯爵家で同い年なのは、ソフィアと、それからマーベリック家の令嬢の二人だが、あちらはすでに婚約者がいる。だから、」
だから。
消去法で選ばれたと言われ、ソフィアは惨めな気持ちになった。そうだ。私なんかが元々選ばれたりするはずがない。たまたま、条件にあったのが私だ、というだけで。
そう考えて、ソフィアはさらに惨めになり、同時に底知れぬ恐怖も感じた。私しかいないから、だから仕方なく私を選ぶしかなかった。そのことをオーウェン殿下はどう思っているのだろう。眉目秀麗で、文武に優れた第1王子殿下。その隣に立つのが私だなんて…。
オーウェンは、王家の血筋であることを示す、闇夜に美しく煌めく三日月を思わせる銀髪に、深い紫の瞳を持つ。対してソフィアは平凡な栗色の髪に新緑の緑の瞳。自分で自分の容姿を卑下したことなどなかったが、あのオーウェンの隣に立つには「地味」としか言い様がない。余り物で、しかも地味。オーウェンにとっていいことなど何もない、それが私だ。
顔合わせを2週間後に、と言われ、ソフィアは毎日鬱々と過ごした。やっぱり間違いだったと言ってくれないかと心から願ってみたが、ついぞその祈りが叶えられることはなく、オーウェンとの顔合わせの日を迎えてしまった。
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