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あれから、2年。私のお腹には、新しい命が芽吹いた。

義理の両親にはだいぶ急かされたらしいが、夫は、「1年はサーラのカラダを独り占めする」と頑として譲らず、義父に殴られていた。

夫が言うところの「サーラコレクション」を毎日着せられ、朝も晩もしない日はないのではないかと思うくらい、毎日毎日抱き合った。夫が休みの日は部屋から出してもらえず、義母が「監禁は犯罪よ!」と夫に詰め寄ることもあった。

一年間の我慢が爆発したのだから仕方ない、とまったく悪びれない夫に私は何も言えず、しかしカラダを重ねる度に、お互いへの愛情は間違いなく育まれたように思う。

夫も私も言いたいこと、伝えたいことを我慢せず言い合えるようになった。

「サーラ、ただいま。大丈夫か?」

「ライアン様、お帰りなさい。今日、動いたんですよ。ポコン、って」

夫は破顔すると、ひざまずき私のお腹に耳を当てた。

「…どっちかな。どっちでもいいから、元気に生まれて欲しい」

目をつぶり、うっとりした顔になる夫をそっと見る。

あの時、粉々に砕けた私を、夫は手をかけ、時間をかけ、もう一度生み出してくれた。不要だと思った愛を、受け取る気にさせてくれた。

あなたの愛は、もういらない。

そう傷ついた私は、もういない。







【了】
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