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ガタガタと揺れを感じて目を開けると、見下ろすライアンの顔が見えた。

「子どもじゃあるまいし、具合が悪いことすら申告できないのか?おかげでブリジットを途中で放り出さねばならなくなった。まったく、」

「離してください。停めて」

夫の膝から転がるように落ち、馭者に声をかける。急に停まったため、バランスを崩し頭をしたたかに打った。

「奥様、ご気分でも、」

外から開けてくれた馭者に、「旦那様を王宮にお送りして」と声をかけ、そのまま外に飛び出した。もう限界だ。そんなに私が邪魔だと言うなら望み通り出て行く。

「サーラ!馬車に戻れ!」

窓から叫んでいるようだが振り返ったりしない。もう、うんざりだ。たとえ野垂れ死のうが、あの男の側にいるより数倍マシだ。

数歩進んだところで、腕を掴まれる。

「サーラ!俺の言うことが聞けないのか!」

「離してください」

ギリギリと腕を捻り上げられ、痛みに顔をしかめると、ハッとしたように夫は手を離した。

「…すまない、痛かったな、おまえが強情だから」

「離縁してください」

「…なに?」

顎をぐっと掴まれ、無理矢理上を向かせられる。睨み付けてくる夫を、私も睨み付けた。

「おまえ、自分が言ってることがわかってるのか?」

「わかっています。離縁してください」

夫は、ギリッと歯を噛み締めると、私のカラダを抱き上げ、そのまま馬車に乗り込んだ。

「離して!」

「ダメだ。離縁だと?バカなことをいうおまえに、おまえは誰のモノなのか教えこんでやる」

夫はハンカチで私の両手を縛りあげると、唇を重ね舌を差し入れてきた。夫の意図に気付き、血の気が一気に引いていく。

「いやっ!」

「おまえは俺の妻なんだぞ。拒否権などあるか」

私を冷酷に見下ろした夫は、「おまえを抱いてやる」と吐き捨てるように言った。

そのまま、口を塞ぐように口づけられ、邸に着くと夫の自室へと運ばれた。ベッドの上に放り投げられ、のし掛かってきた夫の手がドレスを破く。本気でするつもりなのだと、恐怖でカラダが震え始める。

「いや!やめて、いやっ!」

「うるさい、だまれ!おまえは俺の妻だろう、おまえをどうしようと俺の勝手だ!」

露になった胸に歯をたてられ、ブツリ、と皮膚が裂ける音がした。

「キャア…ッ!!」

ジンジンと痺れるような痛みに襲われ涙を流す私を気遣うことなく、夫はサイドチェストを乱暴に開けて何かを取り出した。

無理矢理拡げられた脚の間に冷たい何かが垂らされ、その冷たさに身が固まった時、夫のモノを突き立てられた。

「イヤーッ!!」

「これでもうおまえは処女じゃなくなった。誰にも嫁いだりできない、おまえは俺のモノなんだからな!」

杭を刺されているような痛みに襲われ、涙をボロボロと零す私の秘処を無理矢理押し広げた夫は、私の中で何度も弾ぜた。その間、一言も口をきかず、ただ腰を打ち付けては思い出したように私の肌に噛みついた。

私が何をしたというのだろう。一年も放置した上に、初めてがこんな形で奪われるなんて。ブリジットを放置する原因になった私がそんなに憎らしいの?

涙が後から後から溢れてくる。少しでもいいから、愛して欲しかった。たとえブリジットに心があっても、それでも仕方ないと思えるくらいには、私を気遣って欲しかった。そんなささやかな願いをもつことすら、私には許されないのか。

カラダを揺さぶられながら、もう、考えるのはやめることにした。私には意思なんて必要ないんだから。愛を求める資格すら、初めから与えられていなかったのだから。

あなたの愛が欲しかった。

でももう、諦める。

あなたの愛は、もういらない。
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