こわれたこころ

蜜柑マル

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僕とローラの子どもユアンは、ウィルキンソン侯爵が養子として育てることになったらしい。本来なら婿を取り、侯爵家を夫とともに継ぐはずだったリンダが出奔してしまって、後継ぎをどうしようか、家を断絶するしかないのかと思い悩む彼に、陛下が是非にもと「お願い」したのだという。不義を働いた父親をなかったことにしてやりたい、そのために、実の母であるローラからも離したほうがいい。ローラはユアンに申し訳ないと涙を流したそうだが、実の父が育ててくれるのならばと最後は納得して手放したのだという。

ウィルキンソン侯爵家の親戚筋だった父母が事故で亡くなり、養子として引き取ることになった、という「真実」の元に、ユアンはウィルキンソン侯爵夫妻の惜しみ無い愛情を一身に受けスクスクと育っているそうだ。

僕がユアンをこの腕に抱いたのは、生まれてから1ヶ月だけだ。もう、あの柔らかな感触も眠くなるような甘い匂いも思い出せない。

これはなんの罰なんだ?

僕は、ローラを愛していた、いや、今でも、僕の妻は彼女ひとりだと思っている。リンダなんて、数居る欲を吐き出すためのひとりでしかなかった。なのに、どうして。

行く宛てがあるわけでもなく、仕方なくあの屋敷に帰る。ドアを開けた途端、何かを嗅がされた。カラダから力が抜ける…。
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