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あまりに間の抜けた話に呆然としてしまう。いま、…なんて言った?

「だから、リリアに求められるままに籍を入れることにしたんだよな?公に、リリアは国王の妃、つまり王妃だと認めさせるために。リリアに言われるがままに、オパールの存在を記録から消し、一年後にはオパールを追い出し、実家にも手を回し、彼女を追い詰めて自殺させるつもりだったんだろ?あのリリアとやらはかなり頭が回るな、ユージーン、おまえに比べれば。ただ、…残念ながら俺たちからすればバカなクソガキのお伽噺にすぎないがな」

嬉しそうに嗤うフェルナンドにもはや「悪代官」という言葉しか浮かばない。このおっさん、全部全部わかったうえで、息子がやることをそのまま放置してた、ってことだよね。

「おまえとリリアの婚姻が成り立っただけならまだしも、記録を改竄した。書類の偽造は立派な罪だ。そんなことにも思い至らず女に求められるまま罪を犯す貴様はもはや国王失格だ。しかしながら、貴様のような何もできない、生活力もない人間を野放しにしては民に迷惑がかかる。ここまでバカを放置した俺の責任だから、俺の私財で食費は賄ってやる。人前に出る必要はないから衣類は3年に一度の新調とする。…北の塔に生涯幽閉だ」

「幽閉…っ!?そんな、そんな、横暴だ…っ」

叫んだユージーンが立ち上がると、音もせず入ってきたイーグルさんがすかさずユージーンを拘束した。カッコいい…!!…そしてその後ろから誰か入ってきた…縄でグルグル巻きにされた女性を引き摺るようにして…あの容姿、顔は、…リリア?

リリアと思われる女性は、髪が乱れ唇が切れて血が滲んでいた。憎々しげにこちらを睨み付けるその頬が赤く腫れている。

「セザール、話はついたか」

セザール、と呼ばれた男性は黒髪に切れ長の緑色の瞳のおじ様だった。しかもまた眼鏡。なんなの、眼鏡男子率が高すぎない!?カッコいい!ダンディ!(語彙力)

「話はつきませんでしたのでこうして連れてまいりました。我が娘ながら、こんなにも言葉が通じないとは…正直なところ、三歳児と話したほうがマシです」

そう言ってため息を吐いたおじ様は、私を見るとニッコリした。

「王妃…いえ、オパール様にはいつも滞りなく仕事に励んでいただき…我ら文官一同、感謝しかございません。ようやくこやつらを駆除できますゆえ、今後ともどうぞ心置きなくお仕事に励んでくださいませ!あ、世継ぎもどうぞお忘れなく…次の王子はこんなバカぼんに育たないよう乳母も侍従もすべて厳選いたしますゆえ!」

ニコニコしながらなんか意味不明なこと言ってる…世継ぎ?

「あの、私は、もう離縁されたので、」

私の言葉を聞いてキョトンとした顔になったセザールさんは、フェルナンドに「…まだお話が済んでいないので?」と尋ねた。…なんの話?フェルナンドを見上げると、「うん、まだ」とニコニコしているが、私を見下ろすその瞳は笑っていなかった。なんかゾワゾワする。逃げたい。怖い。

「ユージーン、おまえたちふたりの…リリアとおまえの婚姻関係はそのままだ、良かったな。罪を犯したから幽閉になるわけだが、それでは各方面に迷惑がかかるしおまえの名誉のためにも『子どもができないリリアのことを慮り、国王を退くこととした。この後はリリアとふたり、穏やかに過ごしたい』ということにしておいてやる」

…それも改竄じゃないのか、おっさんよ。

私の心の中のツッコミは当然届くはずもなく、フェルナンドの話はつづく。

「北の塔への幽閉は一年後だが、今日からおまえたちふたりはこの隣の部屋に軟禁とする。オパールが幸せに暮らす様を見て反省するがいい」

するとリリアが、「ふざけないでよ…っ」と叫んだ。

「私は王妃になりたくてこの男と結婚したのよ!なんで北の塔に幽閉されなきゃならないの…っ、キャッ!」

腫れている側と反対の頬をセザールさんに叩かれたリリアは、その衝撃で倒れてしまった。

「お父様、なんで叩くの!?実の娘に手を挙げるなんて!それ以上に、私は王妃なのよ!不敬だわ!…ひっ」

セザールさんの氷のように冷たい視線を受けて、リリアは喉を鳴らした。…フェルナンドといい、セザールさんといい、なんか、カラダから迸る威圧感が半端ないんだけど…?

「…だいたいな。人様のものに手を出した時点で貴様は泥棒なんだぞ。泥棒が不敬を語るな、烏滸がましいにも程がある。フェルナンド様の温情でこれから生活できるんだ、ありがたく思って生きていくんだな」

ニヤリとしたセザールさんは、「フェルナンド様、カラダの処置はどのように?」とフェルナンドに視線を向ける。カラダの、処置とは…。

「そうだな…万が一にも間違いがあっては困るからユージーンのパイプカットだな。リリアにはピルを」

「かしこまりました」

…パイプカット?パイプカットって言った?

「ち、父上、俺が間違っておりました、リリアは自分が王妃になりたいからとオパールを嵌めたのです、俺はリリアに騙されたんです!これからはオパールを大事にします、俺の妻はオパールしかおりません!」

私が頭でグルグル考えている間にとんでもない発言をしたユージーンは、私を抱いたまま立ち上がったフェルナンドに鳩尾を蹴られ悶絶した。

「…誰がおまえの妻だって?」
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