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番外編
☆【R18】【BL要素含みます】ジェライト君⑤(アキラさん視点)
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「アキラさん…」
耳元で囁かれる声にビクッとすると、「あれ、」と戸惑ったような声がする。
これ…誰の声だっけ…。
そんなことをぼんやり思っていると、くちびるにふにゅっと何かが押し当てられる。ちゅ、ちゅ、と何度か繰り返され、また、「アキラさん…」と聞こえてくる。
顎のあたりから下にちゅ、ちゅ、とその温かいものがおりていく。同時に、胸に何か温かいものが触れ、やさしく撫で始めた。何度も何度もさすられているうちに、自分の肌にひっかかりができる。「アキラさん、今日もマッサージだよ。気持ちいい?」そういうと、そのひっかかりをペロッと温かい、湿ったものが撫であげた。何度か撫でると、全体を温かいもので覆われ、ジュッと刺激を与えられる。「ひ…っ」と声が洩れたところ、すべての動きがピタッと止まった。
ぼんやりと目を開ける。目の前には、僕を覗き込む…
「アキラさん…っ!」
「…ジェライト君…?」
熱をはらんだ緑色の瞳がみるみる潤み、ポタポタと涙が落ち始める。その涙が僕の顔を濡らす。
「どうしたの。なんで泣くの。泣かないで、ジェライト君」
「…ア、アキラさ、」
「ジェライト君」
頭を撫でてやろうとするが、腕が上がらない。力がうまく入らない。
「ジェライト君、泣かないで。どうしたの」
「アキラさ…っ、アキラ、アキラさん…っ」
ジェライト君がギュッと僕を抱き締める。温かい感触…はいいんだけど、直接肌が触れ合ってる感じがする。トクトクと、ジェライト君の鼓動が伝わる。
何度も名前を呼んでみたが、ジェライト君は一向に泣き止まず、僕の肩に顔を押しつけ「アキラさん…っ」と繰り返す。
ぼんやりあたりを見回すと、白い天井とたくさんの蔵書が並ぶ本棚が見えた。ここは…
「ジェライト君、僕、どうしたのかな。あの時、お茶を飲んで気分が悪くなったのは覚えてるんだけど」
そういうと、ジェライト君がガバッと顔をあげた。真っ赤な顔をしている。目も赤い。顔が涙だらけだ。
「ジェライト君、なんで泣いてるの」
また手を動かそうとすると、今度は持ち上げることができた。震えながらジェライト君の頭を撫でる。
「ごめん、うまく力が入らない。泣かないで、ジェライト君、大丈夫かい」
「アキラさん…」
「ん?」
ジェライト君の顔が離れると、ジェライト君のカラダが必然的に目に入る。ほどよく鍛えられた、すべすべした肌。…肌?
頭を持ち上げようとするが難しいので視線を自分のカラダに向けると、自分も肌が露出している。
「あれ?なんで、僕、…吐いたりした?ごめんね、汚しちゃったかな。…ジェライト君?」
「アキラさん。どこか、痛いところはないですか」
真っ赤な目のまま、じっと真剣な顔で僕を見下ろすジェライト君。あぁ、心配かけちゃったなぁ。
「痛いとこはないんだけど、体がうまく動かない」
「当たり前ですよ。2週間も動いてないんですから」
「…2週間?」
「アキラさん、何か飲みましょう。俺、準備してくるので、ちょっと待っててください」
ジェライト君はそういうとスッと消えた。
なんとか首を動かすと、床が目に入る。そこには、本棚の一角の本がぐちゃぐちゃに投げ捨てられていた。あんなにキレイに並んでたのに、どうしたんだろう。
「アキラさん」
ジェライト君は戻ってくると、「起こしますね」と僕の背中に手を差し入れた。そのまま、横抱きにしてソファに座る。目に入った自分のカラダはかろうじてパンツは履いている。良かった、全裸ではいたたまれない。
「ジェライト君、迷惑かけたね。申し訳ない。僕、2週間も寝てたの?仕事大丈夫かな。クビかな」
「アキラさん、まだ持てないと思うので、俺が飲ませますね」
失礼します、と言うと、ジェライト君はコップに口をつけ中身を含み、そのまま僕に口づけた。
「!?」
少しずつ液体が僕の口に流れこんでくる。うまく飲み込めなくてむせると、慌てて口を離し「大丈夫ですか、アキラさん」と背中をさする。
「大丈夫なんだけど、口移ししなくていいよ。僕、子どもじゃないんだから」
「子どもにはしないでしょ」
「まぁ、しないけど」
僕の顔をじっと見るジェライト君の顔。
「ねぇ、ジェライト君、何があったのかな。僕、キミが最後にすごく怖い顔してたのは覚えてるんだけど」
「アキラさん、俺が、逃がしませんよって言ったの覚えてますか」
「逃がしませんよ…?あぁ、戸籍が云々言ってたけど、あれ、どういう意味なの?」
それもだが、この状態が気になる。何か着たい。できればジェライト君も着てくれ。
「ジェライト君、服、着たいんだけど」
そういうと、ジェライト君の眉がピクッとし、「寒いですか」
「いや、寒くはないけど、なんか、」
「アキラさん」
ジェライト君は、僕を抱いたまま立ち上がると、姿見の前に立ち、「支えますから。立てますか」と言って僕をおろした。
「…あれ?」
ジェライト君に支えられながら震える足で必死に立つ。姿見に映っているのは、ジェライト君と、
「これ、誰」
「アキラさんです」
「え…?」
姿見のジェライト君の隣に立つ人間をマジマジと見る。身長は変わってないみたいだけど、
「瞳の色が変わりましたね」
「え?」
良く見ると、本当だ、榛色だったのに、青い色に変わってる。そして何より、
「ねぇ、ジェライト君。なんで僕、こんな若くなってるの。どうみてもキミくらいにしか見えないんだけど」
ジェライト君は何も言わずにまた僕を抱き上げると、ベッドに移動し、僕をそっと寝せると、上に覆い被さるように自分を腕で支えて見下ろした。
「アキラさん。あの時飲んだお茶。あれ、アキラさんを若返らせるためのお茶だったんです」
…は?
「あの時、3杯飲んでもらったので、今は20歳になったはずです」
意味がわからない。
「ねぇ、ジェライト君。若返らせるお茶ってなに?そんなものあったの?いくらファンタジーでも、そんな女性が喜びそうな、」
「俺が調合したんです。研究してきたって言ったでしょう」
「調合」
確かに研究って言ってたけど、中身は聞かなかったからなぁ。
「ジェライト君、あのさ、なんで僕にそのお茶を…んっ」
ジェライト君にペロッとくちびるを舐められる。
「ジェライト君、いま、話してるんだよ。ふざけないで聞いて」
「アキラさん、味は変わってない。香りも」
「あのさ、」
「アキラさん、俺と付き合ってください」
「え?」
「好きです」
「いや、ちょっと待って。なんで若くなってるの」
「アキラさんと付き合うためです」
「つながってないよ、ジェライト君。付き合ってはきたでしょ、若くなくても」
「アキラさん、俺はあなたが好きなんです。付き合うっていうのは、恋人としてですよ」
「恋人?」
「本当は結婚したいけど、カーディナルには同性婚を認める法律がないので。うちの養子になってもらえますか。父上の子どもがイヤなら、ナディール大叔父上に頼みますから」
「あの、ジェライト君?」
「好きです、アキラさん。目が覚めてくれて嬉しい。なかなか目が覚めなくて、ダメだったのかと思って、本とかぐちゃぐちゃにして暴れてみたりしたんですけど…良かった」
「ジェライト君、僕、」
「…怒ってますか」
「なにが?」
「こんな、勝手に、年齢を変えられたりして。ねじまげられて」
「いや、そこは問題じゃなくて、」
「…え」
「これだけ変わってしまったら、別人だよね。今までの証明書使えない。仕事クビ?あ、だからジェライト君、働かなくてって…でも僕は働きたいんだけど。ナディール様の子どもになったら、新しく身分を作ってもらえるのかな。あ、ジェライト君」
「…はい」
「僕の特性見える?」
「見えます。変わってません」
「そう。じゃあ、やっぱり今まで通りリッツさんの下がいいな」
またピクッとしたジェライト君は、いきなり口づけてきた。
ちゅ、ちゅ、と何度もくちびるを押しつけ、たまにペロッと舐める。
「アキラさんは、やっぱりリッツさんが好きなんですか」
「リッツさんは妻帯者ですが」
「でも、」
「僕は陛下と戦う気はないし、そもそもリッツさんをかけてなんで戦わなきゃいけないの」
「じゃあ、なんで」
「僕の特性は機密だからだよ」
「え?」
「僕の特性、色は見えても中身は知らない人いっぱいいる。知ってる人のほうが少ないの。いろんなことに利用されたら困るからって、だから、リッツさんの下についたんだよ。当時、リッツさんが団長についで力があったから」
「…そうなんですか」
「そうだよ。ジェライト君、僕は基本的に人と付き合わないの。ウソつくのイヤだから」
「ウソ?」
「特性についてのウソ。だから、特に恋人は作らない」
まぁそれ以前に枯れてるから、必要性を感じないんだけど。
「じゃあ、俺は大丈夫ですよね」
なにが?
「俺はアキラさんの特性知ってます」
「うん、まぁ。そうだね」
「じゃあ、付き合えますよね」
じゃあ、につながるのかな。なんか違う気がするけど。
「ジェライト君、僕は男だよ」
「アキラさんです」
「話を聞いて。僕は男なんだよ」
「でも、アキラさんです」
「ジェライト君…あのね、男は子どもつくれないでしょ」
「いりません」
「ジェライト君、キミは、ものすごくいいとこのお坊ちゃんなのに、血を残さないわけにいかないでしょ」
「なぜですか。オーウェン大叔父上だって残してません。今のところ、ナディール大叔父上だって。俺より身分上ですよ」
「でも、キミ、跡継ぎでしょ」
「アキラさんは、俺に変質者の跡を継げっていうんですか」
「いや、それは可哀想だと思うけど」
「下の双子もいますし、今回また産まれますから」
「え?」
「母上、妊娠したので」
「…そうなんだ。ジーク君、元気だね」
「だから、俺と付き合ってください。アキラさんがいいんです。こんな、勝手に若返らせたりした俺はイヤですか」
「さっきから言ってるけど、僕はそこはどうでもいいよ。ただ与えられたものを淡々とこなしていくだけだから」
「淡々とはダメです」
「なんで」
「俺にドキドキしてください」
そういうと、ジェライト君はまたペロッと僕のくちびるを舐めた。
「ジェライト君、僕は痛いのはイヤだよ」
「…痛い?俺、アキラさんに痛いことしません」
「男同士で付き合うなら痛いじゃない。無理だよ、キミのを挿れるなんて」
「俺のなにを入れるんですか」
「ナニだよ」
「え?」
「これだよ」
ジェライト君の股関をグリグリしてやる。
途端に真っ赤になったジェライト君は、「挿れる?どこに挿れるんですか?」
「…え?」
サッと顔色を変えたジェライト君は、「まさかアキラさん…」と僕を睨み付けた。
「誰か、男と付き合ったことがあるんですか!?俺がアキラさんを見れなかった間に!?」
「ないです」
「じゃあ、なんで知ってるんですか」
「ちなみに、キミは僕と付き合って何をするつもりなの」
「キスして、抱き締めて、お風呂に入ってアキラさんのカラダを洗って、俺のカラダも洗ってください、ね、アキラさん。ごはんを一緒に食べて、アキラさんを抱っこして寝て、そしてアキラさんの全身を舐めます」
ここにも変態がいた。僕が変態を呼び寄せる体質なのか。断じてそうではないと思いたい。
「セックスはしないのかい」
「…セックス?」
この子、どうやって育ってきたのかな。
「あのさ、ジェライト君。10歳のとき、僕を押し倒してキスもしたよね。あれは何をするつもりだったの」
「舐めたいって言いましたよね」
「え?」
「アキラさんを舐めたいって言いましたよね、俺。アキラさんを舐めたいんです。全部」
「…はぁ、」
ちょっとどういう性癖なのかわからない。
「アキラさんの肌、すごく甘くて美味しいんです。3歳のときに舐めて、あれから忘れられなくて。舐めていいですか」
「困ります」
「舐めた後にちゃんと、お風呂でキレイにしますから、俺が。お願いします、アキラさん、舐めたいんです」
いや、そういう問題ではない。
「舐めていいですか」
「ジェライト君、」
「ライト君、入ってもいいかい」
「ひぇっ」
ナディール様の声だ。相変わらずどこから来るかわからない。
「ダメです」
「入るよ」
「ダメです!アキラさんの肌は見せません!」
「じゃあ布団でも掛けてよ」
「あ、そうですね」
そういうとジェライト君は僕を布団に入れた。
「後で舐めます」
やめなさい。
「アキラ君、目が覚めて良かった」
「ナディール様」
「ごめんね。結局、逃がしてあげられなくて」
「いえ、大丈夫なんですが、僕、これからどうすればいいでしょうか」
「僕の養子になるかい。それとも、」
「変質者の子どもはイヤです」
「アキラさん、俺、そうなんですけど」
「生まれてくる家族は選べないからね、仕方ないよね」
「じゃあ、ライト君も僕の子どもになるかい、ハルト君の許可が出ればだけど。一気に二人も子どもができるなんて嬉しい」
ナディール様って人間嫌いだったのに。アルマちゃんが変えたんだろうなぁ。
「よろしくお願いします」
「じゃあ僕は、カティ姉さんに報告してくるね。アキラ君、キミはここにいなさい。ライト君がいればまず安心だから」
ナディール様。ここにいるジェライト君は確かに強いです。安心です。だけど僕、全身舐める宣言されてるんですが。
耳元で囁かれる声にビクッとすると、「あれ、」と戸惑ったような声がする。
これ…誰の声だっけ…。
そんなことをぼんやり思っていると、くちびるにふにゅっと何かが押し当てられる。ちゅ、ちゅ、と何度か繰り返され、また、「アキラさん…」と聞こえてくる。
顎のあたりから下にちゅ、ちゅ、とその温かいものがおりていく。同時に、胸に何か温かいものが触れ、やさしく撫で始めた。何度も何度もさすられているうちに、自分の肌にひっかかりができる。「アキラさん、今日もマッサージだよ。気持ちいい?」そういうと、そのひっかかりをペロッと温かい、湿ったものが撫であげた。何度か撫でると、全体を温かいもので覆われ、ジュッと刺激を与えられる。「ひ…っ」と声が洩れたところ、すべての動きがピタッと止まった。
ぼんやりと目を開ける。目の前には、僕を覗き込む…
「アキラさん…っ!」
「…ジェライト君…?」
熱をはらんだ緑色の瞳がみるみる潤み、ポタポタと涙が落ち始める。その涙が僕の顔を濡らす。
「どうしたの。なんで泣くの。泣かないで、ジェライト君」
「…ア、アキラさ、」
「ジェライト君」
頭を撫でてやろうとするが、腕が上がらない。力がうまく入らない。
「ジェライト君、泣かないで。どうしたの」
「アキラさ…っ、アキラ、アキラさん…っ」
ジェライト君がギュッと僕を抱き締める。温かい感触…はいいんだけど、直接肌が触れ合ってる感じがする。トクトクと、ジェライト君の鼓動が伝わる。
何度も名前を呼んでみたが、ジェライト君は一向に泣き止まず、僕の肩に顔を押しつけ「アキラさん…っ」と繰り返す。
ぼんやりあたりを見回すと、白い天井とたくさんの蔵書が並ぶ本棚が見えた。ここは…
「ジェライト君、僕、どうしたのかな。あの時、お茶を飲んで気分が悪くなったのは覚えてるんだけど」
そういうと、ジェライト君がガバッと顔をあげた。真っ赤な顔をしている。目も赤い。顔が涙だらけだ。
「ジェライト君、なんで泣いてるの」
また手を動かそうとすると、今度は持ち上げることができた。震えながらジェライト君の頭を撫でる。
「ごめん、うまく力が入らない。泣かないで、ジェライト君、大丈夫かい」
「アキラさん…」
「ん?」
ジェライト君の顔が離れると、ジェライト君のカラダが必然的に目に入る。ほどよく鍛えられた、すべすべした肌。…肌?
頭を持ち上げようとするが難しいので視線を自分のカラダに向けると、自分も肌が露出している。
「あれ?なんで、僕、…吐いたりした?ごめんね、汚しちゃったかな。…ジェライト君?」
「アキラさん。どこか、痛いところはないですか」
真っ赤な目のまま、じっと真剣な顔で僕を見下ろすジェライト君。あぁ、心配かけちゃったなぁ。
「痛いとこはないんだけど、体がうまく動かない」
「当たり前ですよ。2週間も動いてないんですから」
「…2週間?」
「アキラさん、何か飲みましょう。俺、準備してくるので、ちょっと待っててください」
ジェライト君はそういうとスッと消えた。
なんとか首を動かすと、床が目に入る。そこには、本棚の一角の本がぐちゃぐちゃに投げ捨てられていた。あんなにキレイに並んでたのに、どうしたんだろう。
「アキラさん」
ジェライト君は戻ってくると、「起こしますね」と僕の背中に手を差し入れた。そのまま、横抱きにしてソファに座る。目に入った自分のカラダはかろうじてパンツは履いている。良かった、全裸ではいたたまれない。
「ジェライト君、迷惑かけたね。申し訳ない。僕、2週間も寝てたの?仕事大丈夫かな。クビかな」
「アキラさん、まだ持てないと思うので、俺が飲ませますね」
失礼します、と言うと、ジェライト君はコップに口をつけ中身を含み、そのまま僕に口づけた。
「!?」
少しずつ液体が僕の口に流れこんでくる。うまく飲み込めなくてむせると、慌てて口を離し「大丈夫ですか、アキラさん」と背中をさする。
「大丈夫なんだけど、口移ししなくていいよ。僕、子どもじゃないんだから」
「子どもにはしないでしょ」
「まぁ、しないけど」
僕の顔をじっと見るジェライト君の顔。
「ねぇ、ジェライト君、何があったのかな。僕、キミが最後にすごく怖い顔してたのは覚えてるんだけど」
「アキラさん、俺が、逃がしませんよって言ったの覚えてますか」
「逃がしませんよ…?あぁ、戸籍が云々言ってたけど、あれ、どういう意味なの?」
それもだが、この状態が気になる。何か着たい。できればジェライト君も着てくれ。
「ジェライト君、服、着たいんだけど」
そういうと、ジェライト君の眉がピクッとし、「寒いですか」
「いや、寒くはないけど、なんか、」
「アキラさん」
ジェライト君は、僕を抱いたまま立ち上がると、姿見の前に立ち、「支えますから。立てますか」と言って僕をおろした。
「…あれ?」
ジェライト君に支えられながら震える足で必死に立つ。姿見に映っているのは、ジェライト君と、
「これ、誰」
「アキラさんです」
「え…?」
姿見のジェライト君の隣に立つ人間をマジマジと見る。身長は変わってないみたいだけど、
「瞳の色が変わりましたね」
「え?」
良く見ると、本当だ、榛色だったのに、青い色に変わってる。そして何より、
「ねぇ、ジェライト君。なんで僕、こんな若くなってるの。どうみてもキミくらいにしか見えないんだけど」
ジェライト君は何も言わずにまた僕を抱き上げると、ベッドに移動し、僕をそっと寝せると、上に覆い被さるように自分を腕で支えて見下ろした。
「アキラさん。あの時飲んだお茶。あれ、アキラさんを若返らせるためのお茶だったんです」
…は?
「あの時、3杯飲んでもらったので、今は20歳になったはずです」
意味がわからない。
「ねぇ、ジェライト君。若返らせるお茶ってなに?そんなものあったの?いくらファンタジーでも、そんな女性が喜びそうな、」
「俺が調合したんです。研究してきたって言ったでしょう」
「調合」
確かに研究って言ってたけど、中身は聞かなかったからなぁ。
「ジェライト君、あのさ、なんで僕にそのお茶を…んっ」
ジェライト君にペロッとくちびるを舐められる。
「ジェライト君、いま、話してるんだよ。ふざけないで聞いて」
「アキラさん、味は変わってない。香りも」
「あのさ、」
「アキラさん、俺と付き合ってください」
「え?」
「好きです」
「いや、ちょっと待って。なんで若くなってるの」
「アキラさんと付き合うためです」
「つながってないよ、ジェライト君。付き合ってはきたでしょ、若くなくても」
「アキラさん、俺はあなたが好きなんです。付き合うっていうのは、恋人としてですよ」
「恋人?」
「本当は結婚したいけど、カーディナルには同性婚を認める法律がないので。うちの養子になってもらえますか。父上の子どもがイヤなら、ナディール大叔父上に頼みますから」
「あの、ジェライト君?」
「好きです、アキラさん。目が覚めてくれて嬉しい。なかなか目が覚めなくて、ダメだったのかと思って、本とかぐちゃぐちゃにして暴れてみたりしたんですけど…良かった」
「ジェライト君、僕、」
「…怒ってますか」
「なにが?」
「こんな、勝手に、年齢を変えられたりして。ねじまげられて」
「いや、そこは問題じゃなくて、」
「…え」
「これだけ変わってしまったら、別人だよね。今までの証明書使えない。仕事クビ?あ、だからジェライト君、働かなくてって…でも僕は働きたいんだけど。ナディール様の子どもになったら、新しく身分を作ってもらえるのかな。あ、ジェライト君」
「…はい」
「僕の特性見える?」
「見えます。変わってません」
「そう。じゃあ、やっぱり今まで通りリッツさんの下がいいな」
またピクッとしたジェライト君は、いきなり口づけてきた。
ちゅ、ちゅ、と何度もくちびるを押しつけ、たまにペロッと舐める。
「アキラさんは、やっぱりリッツさんが好きなんですか」
「リッツさんは妻帯者ですが」
「でも、」
「僕は陛下と戦う気はないし、そもそもリッツさんをかけてなんで戦わなきゃいけないの」
「じゃあ、なんで」
「僕の特性は機密だからだよ」
「え?」
「僕の特性、色は見えても中身は知らない人いっぱいいる。知ってる人のほうが少ないの。いろんなことに利用されたら困るからって、だから、リッツさんの下についたんだよ。当時、リッツさんが団長についで力があったから」
「…そうなんですか」
「そうだよ。ジェライト君、僕は基本的に人と付き合わないの。ウソつくのイヤだから」
「ウソ?」
「特性についてのウソ。だから、特に恋人は作らない」
まぁそれ以前に枯れてるから、必要性を感じないんだけど。
「じゃあ、俺は大丈夫ですよね」
なにが?
「俺はアキラさんの特性知ってます」
「うん、まぁ。そうだね」
「じゃあ、付き合えますよね」
じゃあ、につながるのかな。なんか違う気がするけど。
「ジェライト君、僕は男だよ」
「アキラさんです」
「話を聞いて。僕は男なんだよ」
「でも、アキラさんです」
「ジェライト君…あのね、男は子どもつくれないでしょ」
「いりません」
「ジェライト君、キミは、ものすごくいいとこのお坊ちゃんなのに、血を残さないわけにいかないでしょ」
「なぜですか。オーウェン大叔父上だって残してません。今のところ、ナディール大叔父上だって。俺より身分上ですよ」
「でも、キミ、跡継ぎでしょ」
「アキラさんは、俺に変質者の跡を継げっていうんですか」
「いや、それは可哀想だと思うけど」
「下の双子もいますし、今回また産まれますから」
「え?」
「母上、妊娠したので」
「…そうなんだ。ジーク君、元気だね」
「だから、俺と付き合ってください。アキラさんがいいんです。こんな、勝手に若返らせたりした俺はイヤですか」
「さっきから言ってるけど、僕はそこはどうでもいいよ。ただ与えられたものを淡々とこなしていくだけだから」
「淡々とはダメです」
「なんで」
「俺にドキドキしてください」
そういうと、ジェライト君はまたペロッと僕のくちびるを舐めた。
「ジェライト君、僕は痛いのはイヤだよ」
「…痛い?俺、アキラさんに痛いことしません」
「男同士で付き合うなら痛いじゃない。無理だよ、キミのを挿れるなんて」
「俺のなにを入れるんですか」
「ナニだよ」
「え?」
「これだよ」
ジェライト君の股関をグリグリしてやる。
途端に真っ赤になったジェライト君は、「挿れる?どこに挿れるんですか?」
「…え?」
サッと顔色を変えたジェライト君は、「まさかアキラさん…」と僕を睨み付けた。
「誰か、男と付き合ったことがあるんですか!?俺がアキラさんを見れなかった間に!?」
「ないです」
「じゃあ、なんで知ってるんですか」
「ちなみに、キミは僕と付き合って何をするつもりなの」
「キスして、抱き締めて、お風呂に入ってアキラさんのカラダを洗って、俺のカラダも洗ってください、ね、アキラさん。ごはんを一緒に食べて、アキラさんを抱っこして寝て、そしてアキラさんの全身を舐めます」
ここにも変態がいた。僕が変態を呼び寄せる体質なのか。断じてそうではないと思いたい。
「セックスはしないのかい」
「…セックス?」
この子、どうやって育ってきたのかな。
「あのさ、ジェライト君。10歳のとき、僕を押し倒してキスもしたよね。あれは何をするつもりだったの」
「舐めたいって言いましたよね」
「え?」
「アキラさんを舐めたいって言いましたよね、俺。アキラさんを舐めたいんです。全部」
「…はぁ、」
ちょっとどういう性癖なのかわからない。
「アキラさんの肌、すごく甘くて美味しいんです。3歳のときに舐めて、あれから忘れられなくて。舐めていいですか」
「困ります」
「舐めた後にちゃんと、お風呂でキレイにしますから、俺が。お願いします、アキラさん、舐めたいんです」
いや、そういう問題ではない。
「舐めていいですか」
「ジェライト君、」
「ライト君、入ってもいいかい」
「ひぇっ」
ナディール様の声だ。相変わらずどこから来るかわからない。
「ダメです」
「入るよ」
「ダメです!アキラさんの肌は見せません!」
「じゃあ布団でも掛けてよ」
「あ、そうですね」
そういうとジェライト君は僕を布団に入れた。
「後で舐めます」
やめなさい。
「アキラ君、目が覚めて良かった」
「ナディール様」
「ごめんね。結局、逃がしてあげられなくて」
「いえ、大丈夫なんですが、僕、これからどうすればいいでしょうか」
「僕の養子になるかい。それとも、」
「変質者の子どもはイヤです」
「アキラさん、俺、そうなんですけど」
「生まれてくる家族は選べないからね、仕方ないよね」
「じゃあ、ライト君も僕の子どもになるかい、ハルト君の許可が出ればだけど。一気に二人も子どもができるなんて嬉しい」
ナディール様って人間嫌いだったのに。アルマちゃんが変えたんだろうなぁ。
「よろしくお願いします」
「じゃあ僕は、カティ姉さんに報告してくるね。アキラ君、キミはここにいなさい。ライト君がいればまず安心だから」
ナディール様。ここにいるジェライト君は確かに強いです。安心です。だけど僕、全身舐める宣言されてるんですが。
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