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第五章
それぞれの再出発⑩
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「ルヴィ、たくさん手紙ありがとう。すごく嬉しかった」
ハルト様はソファに座ると、私を膝の上に横抱きにし、優しく髪を撫でた。
「柔らかい、ルヴィの髪の毛。いい匂い」
顔を近づけ、スンスンとする。
「あ、ありがとうございます」
「ふふ」
ハルト様は「ルヴィ、緊張してるの?」と言って
私を覗き込んだ。
「…ハルト様が」
「ん?」
「ハルト様が、素敵になられていて、私はなんにも代わり映えがなくて、」
「ルヴィも変わったよ。自分では毎日見てるからわからないだけだよ。とってもキレイになったよ。可愛いいよ。大好き」
ハルト様は顔が赤くなる私を嬉しそうに見た。
「そう言えば、ルヴィ」
「はい」
「俺は父上に言われたんだけど、明日元モンタリアーノ国の三領主と顔合わせがあるよね」
「はい、私も先ほどアンジェ様から聞いて…私も出るように言われたのですが、」
「うん、出て。俺は一応今は王族だけど、そのうち王政はやめることになるんだし、継承権とか関係ないから。父上がどういう立場になるのかまだわからないけど、とにかく変なしがらみみたいのは感じなくていいから。俺の婚約者だって紹介させて。ね、ルヴィ」
「ハルト様、そんなふうに考えてくださってたんですね」
「…だって、前が、さ。皇太子だったから、そういうのイヤかなって。それとも、王族のほうがいい?それなら俺、国王になるけど」
「ハルト様…」
話がずれてる。
「王政はやめるのでしょう」
「そうだけど…」
「せっかく、勉強してきたのですから。新しいことを始めるのは大変だと思いますが、みんなで協力して頑張りましょう」
「うん、ありがとう、ルヴィ」
「ハルト様、ピアス、つけてくださったんですね」
「うん、すごく嬉しかった。ルヴィの瞳の色だね。ありがとう」
ハルト様は、そう言って私の耳たぶをハムッとした。
「!?」
「俺もルヴィにピアスを贈ろうかと思ったんだけど、こうやってルヴィの耳にキスできないからやめたんだ。その代わり、」
ハルト様はゴソゴソすると、「ルヴィ、これ。つけて」と言って、小さな箱を二つ取り出した。
開けると、ひとつひとつに指輪が入っている。
「これは、ルビーっていう石なんだって。俺の瞳と同じ赤で、ルヴィと同じ名前。こっちは、ルヴィの瞳の色と同じ。パライバトルマリンっていう石」
ハルト様は、赤いほうを取ると、私の左手薬指にそっとはめた。あの、魔法の輪の上に。
そして、緑のほうを「俺にもつけて」と渡し、手を差し出した。
「結婚する時にはまた別な指輪を一緒に選ぼう。…勝手に選んで怒ってる?」
「ハルト様、嬉しいです。ぴったりですね、大きさが」
「うん。アンジェ様に協力してもらったから。ルヴィにバレちゃうとカッコ悪いでしょ」
そう言ったあと、ハルト様は真剣な顔で私を見た。
「明日の顔合わせに、コリンズ公爵令嬢も来るらしい」
「サフィア様が、」
「うん。あのね、ルヴィ、だいたい立ち位置でわかるとは思うんだけど、俺、コリンズ公爵令嬢の顔覚えてないんだよ」
「え?」
「だから、もしわかったらルヴィ、俺に教えて」
「あの、ハルト様、」
「ん?」
「覚えてないのですか?」
「うん」
「でも、何回かお会いしたことがあるのですよね?」
「うん」
「まったく覚えてないのですか!?」
「うん。だって、ルヴィにしか興味なかったし」
不貞腐れたように言われても困る。認識機能とか大丈夫なんだろうか。
「なぜ、サフィア様を知りたいのですか?」
「子どもまで紹介されるかわからないし、紹介されるにしても、される前に何かされたら困るからだよ」
「何かされる?」
「ルヴィに、何かされたらイヤだから」
「え?」
「だって、ルヴィのこと突き落としたんだよ!俺の目の前で!できるなら、この手で始末してやりたかったよ。だけど、ルヴィのほうが大事だからやめたんだ。ルヴィは死んじゃったし、俺も死ぬつもりだったから。あんなのに一秒たりとも構いたくなかった」
私に触れているハルト様のカラダの熱さが劇的に変化する。カラダの中の魔力がグルグル渦巻いている。
「ハルト様」
私はハルト様の頬を挟んだ。目が合わない。
「ハルト様!」
両手で、ハルト様の頬をピシャリとする。ハッとしたように、ハルト様の目が戻った。
「ごめんなさい、痛かったですね」
「ううん、大丈夫。俺も、ごめん、ルヴィ。熱かったでしょ、ごめんね」
「大丈夫です。ハルト様、サフィア様は何もしないと思いますが…」
「なんで?そんなの、なんでわかるの?」
「ハルト様は、ジークフリート様ではなくなりましたし、今回はサフィア様にもお会いしてないのでしょう」
「してないけど。でも、イヤなの。ルヴィに何かあったら、イヤなの」
泣きそうな顔になると、ハルト様はギュッと私を抱き締めた。
「もう、絶対に失いたくない。ルヴィと、ずっと一緒にいるって決めたんだ。だから、ね、ルヴィ。お願いだから。教えて、ね。お願い」
私の髪に頬擦りするハルト様。あの時、私は殿下のことが嫌いだったし、先に死んでしまったからまったくわからないけれど、取り残された殿下は「絶望して死んだ」と言った。いま、まったく接点がないサフィア様を警戒するくらいに不安に苛まれているのかもしれない。
「ハルト様、サフィア様は、私の父と同じような銀色の髪の毛に、青い瞳の方でした。明日、対面してわかるようなら、ハルト様にお教えします。だから、もう、怒らないでください」
「…怒ってない」
「良かった」
私はハルト様の髪を撫でた。
「明日、絶対俺の隣から離れないで。手も離しちゃダメ」
「ハルト様、顔合わせの時に手を繋ぐのは良くないと思いますが。皆さんの前なのですよ」
ぐ、っと詰まったハルト様は、「じゃあ、離れないでね。約束だよ」と言った。
「男が相手ならルヴィに触った時点で誓約魔法が働くけど、女性には効果がないから…絶対離れないで」
「わかりました。でもハルト様、」
「ん?」
「私も、今回は魔力が発現していますから、あまり心配しないで、」
「心配するでしょ!俺のルヴィがいなくなるなんて、イヤなの!たくさん手紙のやり取りして、ルヴィのこと抱っこして、キスだって…それ以上のことだってしたのに。こんなにルヴィのこと知っちゃったのに。俺、今回ルヴィに何かあったらその場にいる全員消すからね。それから死ぬ」
ハルト様の目がギラギラと恐ろしく光った。
その場にいる全員て、ものすごく重要な方々ばかりなのに。
「ハルト様、簡単に、死ぬなんて」
「じゃあ、ルヴィも死なないで」
私が死ぬ前提なのが可笑しくてつい笑ってしまったことが、ハルト様の逆鱗に触れてしまったのか、
「ルヴィ、俺の言うこと真面目に聞いてないんだね」
ハルト様は、スゥッと目を細めると、「俺がこんなに真剣に悩んでるのに、ルヴィは俺のことなんてどうでもいいんだね」と言って、「もういい」と私を降ろすと消えてしまった。
部屋に取り残された私は、しばしぼんやりとソファに座っていた。ハルト様の心配が、私にはこれっぽっちもわからなかった。こんなにハルト様が守ってくれて、私自身も変わったのに。しかも、サフィア様が私を突き落としたのは、殿下の正式な婚約者は自分、と思っていたからだ。まったく知らない人のために、まったく知らない人に何か害することなどあるだろうか?
でも確かに、あんなに真剣に言っているのに笑ったのは悪かったかもしれない。
謝罪の手紙を書こうと思ったが、ハルト様の新しい部屋にはそれらしきものが見つけられなかったので後から送ろうと、嘆息し、立ち上がって飛ぼうとした。途端、後ろからぎゅうっと抱き締められた。
「…ルヴィ、どこに行く気?」
「ハルト様…?」
ハルト様はそのまま私を横抱きにすると、寝室のドアを蹴り開け、私をベッドに放り投げた。
「…っ」
「逃がさないよ、ルヴィ」
「ハ、ハルトさ、んん…っ!?」
ハルト様は私に覆い被さるとくちびるを重ねてきた。舌をぬるりと差し込んでくる。そうしてしばらくくちびるを貪られ、息も絶え絶えになっている私を冷たい瞳で見下ろすと、「どうせ俺のことなんてどうでもいいんだから。俺がやりたいようにしていいよね」と言って、私の腕に何かをつけた。
「これは、魔力を封じる腕輪だよ。ルヴィはこれでもう魔法では俺に抵抗できない」
私の両手を、頭の上でひとまとめに押さえつけると、もう片方の手を私のワンピースの中に突っ込んだ。そのまま、私の太ももをさわさわと撫でる。
「ルヴィがいなくなっちゃう前に、ルヴィを全部俺のものにする。そうじゃなきゃ、死ぬに死ねない」
「ハルト様…っ」
「なぁに、ルヴィ。何かあるの?明日までずっと一緒だよ。そのまま顔合わせに行こう。立てないだろうから、俺が抱いててあげるからね。それともやっぱり部屋に繋いでおこうかな?それなら、ルヴィを失う心配もないよね。ずーっとここにいて。お風呂も俺がいれてあげるし、ご飯も食べさせてあげる。トイレも、一緒についていって拭いてあげるからね。寒くないようにするから、洋服は着なくていいよね。誰にも会わせない。
最初は痛いかもしれないけど、すぐによくなる。何回も何回もしてるうちに気持ちよくなるよ。だから、最初だけ我慢して、ルヴィ、」
そう言ったハルト様は、ボロボロと涙を流した。
「ルヴィに、痛い思いをさせたくない…」
ハルト様は私の腕を離すと、私の肩に顔をつけ声をあげて泣きはじめた。
私は何も言えず、ハルト様を抱き締めて頭を撫で続けた。
しばらくそうして、ハルト様が落ち着いてきたところに「ハルト様」と呼んでみた。
ハルト様は顔を押しつけたまま返事をしない。
聞いてくれているかどうかわからないが、話すことにした。
「ハルト様、私がさっき笑ったのは、私が死ぬ前提で話をするからです。ハルト様は私を殺したいのですか」
するとハルト様はガバッと顔をあげ、取れてしまうのではないかというくらいの勢いで首を横に振った。目の回りが真っ赤になっている。
「でも、真剣に話しているのに、笑った私も悪かったです。ごめんなさい。…許してくれますか?」
ハルト様はギュッと痛そうな顔になり、「ごめん…」とまた涙をこぼした。
「許さない、ということですか?」
「ち、ちがう。ごめん、ルヴィ、俺が…」
私はハルト様の頭を撫でた。
「こんなに素敵になったのに、泣き虫なのは変わらないですね、ハルト様」
ハルト様は真っ赤な顔になり、「ルヴィ」と小さな声で言った。
「はい」
「こんなことして、ごめん。もうしないから。ごめん」
「私も悪かったので、おあいこです。ハルト様の真剣な思いをバカにしたみたいですみませんでした。明日、サフィア様には気を付けます。ハルト様、守ってくださいね」
ハルト様はコクリと頷くと、「俺、ぜんぜん成長してない…」と呟いた。
「ハルト様、何か飲みましょう。私、準備しますから」
「いい!俺がやる!お土産に、紅茶も買ってきたんだ。ルヴィが好きかなと思って。ごめんね、ルヴィ。スカート、大丈夫かな…乱暴にしてごめん。痛かったね」
ハルト様は私を抱き起こすと、そのまま自分の脚の上に座らせぎゅうぎゅうと抱き締めた。
「痛くないです。びっくりしましたが」
「…ほんと?」
「ほんとです」
「でも、手首、赤くなっちゃった…」
「あ、ハルト様、これ。外してください」
私は腕輪を見せた。
「うん…」
ハルト様はまた真っ赤な顔になり、腕輪を外してベッドの上に置いた。
「こんなものがあるんですね」
「うん。俺は、5歳でここに戻ってきたとき、ルヴィの話をしたら叔母上につけられたんだ」
「え?」
「ルヴィを見に行かせないように、って」
「ああ…、」
「叔母上は、魔力の感知が鋭すぎるから、夜はつけて眠らせてるってリッツさんが言ってた」
「お会いしたのですか?」
「うん、ルヴィのとこに行く前に叔母上に挨拶に行って、その後リッツさんのところに行ったから。叔母上が、すごく幸せそうだった。あんなにビリビリしてたのに、すごく柔らかい雰囲気に変わってた」
「リッツさんが、陛下を大事にされてますから」
そう言うと、ハルト様は「…ごめん」と呟いた。
「…ハルト様?」
「俺も、ちゃんと、ルヴィを大事にする」
「してますよ」
「…ほんと?」
「ほんとです」
ハルト様はぐ、っと詰まったようになり、「ルヴィ、ありがとう」と言った。
次の日、顔合わせのためにお城に行こうとすると、お父様が「僕も!僕も行く!」と抱きついてきた。
「ロレックス、おまえは何をやってるんだ!せっかくキレイに仕上げたのに…アホ!」
お父様を引き剥がしたお母様は、「ヴィー、早く行け、今のうちだ」とウインクした。
「お父様、お母様、行って参ります」
「ヴィー!」
お父様は、昨日ハルト様が帰ってきたと聞いて情緒不安定なのだとお母様がため息をつきながら私の準備をしてくれた。確かにお父様は昨夜私から離れなかった。あの格好良かったお父様はどこに行ってしまったのだろう。
お城に着くと、黒いタキシードを着たハルト様が出迎えてくれた。
「おはよう、ルヴィ」
「おはようございます、ハルト様。とても素敵です」
と言うと、真っ赤な顔になり、「俺が先に言いたかった…ありがと」と言った。
「ルヴィもキレイだ。ピンク、似合うね。ネックレスもつけてきてくれたんだ…」
「ハルト様から初めていただいたものですから」
と言うと、嬉しそうに笑い、「会場まではいいよね」と私の手を握った。
「手袋がジャマだな…」
「おまえ、朝からなんなんだ」
「サヴィオン様、おはようございます。ご挨拶が遅れて」
「いいんだよ、気にするなって。ルヴィア嬢、こいつ、朝からピリピリしてるから…悪いけど、頼むな。おい、ジーク。俺も後ろに付いてるんだから大丈夫だよ!まったく心配性なんだからな」
「…わかってます」
ハルト様はボソッと言うと、私の手を繋いで歩き出した。きちんと歩幅を合わせてくれる気づかいが嬉しい。ニコッと見上げると、「ルヴィ、俺が必ず守るから」とまた言うので頬をつねってやった。
「!?」
「ハルト様、私が婚約者だと発表されるのがイヤみたいな顔ですよ」
「そ、そんなことない!」
「じゃあ、笑ってください」
ハルト様は、「…うん」と呟くと、私を見て微笑んだ。
「昨日帰ってまいりました、王兄のサヴィオン・エイベルと息子のジークハルト・エイベルです」
アンジェ様が紹介すると、相手側から、「…そっくりだ」「似てるな、」という声が上がった。本人だから似てるもなにも、と思ったが、それは秘密なのだからと心の中にとどめた。
そっと窺うと、ちょうど向かい合う真ん中の位置にサフィア・コリンズ様と思われる少女が見えた。頬を染めて、こちらを凝視している。その目を見て、私の胸がギュッと痛んだ。まさか、また…ハルト様を好きになってしまったのだろうか。婚約者は私だけど、ハルト様を取り上げられるような不安に襲われたとき。サフィア様が叫んだ。
「お父様!私、あの方と結婚します!」
「サフィ!?」
サフィア様は止めようとするコリンズ公爵の手を振り切り、こちらに真っ直ぐ駆けてきた。
やっぱり、ハルト様を好きになってしまったの?
私は無意識にハルト様の手を握ってしまった。
「…ルヴィ、大丈夫だよ」
こちらを見てニコリと微笑むハルト様…の脇をすり抜け、サフィア様はサヴィオン様に抱きついた。
「…へ?」
サヴィオン様から気の抜けたような声が洩れる。
一瞬の静寂の後…会場は大騒ぎになり、私とハルト様の婚約発表はできずに終了した。
ハルト様はソファに座ると、私を膝の上に横抱きにし、優しく髪を撫でた。
「柔らかい、ルヴィの髪の毛。いい匂い」
顔を近づけ、スンスンとする。
「あ、ありがとうございます」
「ふふ」
ハルト様は「ルヴィ、緊張してるの?」と言って
私を覗き込んだ。
「…ハルト様が」
「ん?」
「ハルト様が、素敵になられていて、私はなんにも代わり映えがなくて、」
「ルヴィも変わったよ。自分では毎日見てるからわからないだけだよ。とってもキレイになったよ。可愛いいよ。大好き」
ハルト様は顔が赤くなる私を嬉しそうに見た。
「そう言えば、ルヴィ」
「はい」
「俺は父上に言われたんだけど、明日元モンタリアーノ国の三領主と顔合わせがあるよね」
「はい、私も先ほどアンジェ様から聞いて…私も出るように言われたのですが、」
「うん、出て。俺は一応今は王族だけど、そのうち王政はやめることになるんだし、継承権とか関係ないから。父上がどういう立場になるのかまだわからないけど、とにかく変なしがらみみたいのは感じなくていいから。俺の婚約者だって紹介させて。ね、ルヴィ」
「ハルト様、そんなふうに考えてくださってたんですね」
「…だって、前が、さ。皇太子だったから、そういうのイヤかなって。それとも、王族のほうがいい?それなら俺、国王になるけど」
「ハルト様…」
話がずれてる。
「王政はやめるのでしょう」
「そうだけど…」
「せっかく、勉強してきたのですから。新しいことを始めるのは大変だと思いますが、みんなで協力して頑張りましょう」
「うん、ありがとう、ルヴィ」
「ハルト様、ピアス、つけてくださったんですね」
「うん、すごく嬉しかった。ルヴィの瞳の色だね。ありがとう」
ハルト様は、そう言って私の耳たぶをハムッとした。
「!?」
「俺もルヴィにピアスを贈ろうかと思ったんだけど、こうやってルヴィの耳にキスできないからやめたんだ。その代わり、」
ハルト様はゴソゴソすると、「ルヴィ、これ。つけて」と言って、小さな箱を二つ取り出した。
開けると、ひとつひとつに指輪が入っている。
「これは、ルビーっていう石なんだって。俺の瞳と同じ赤で、ルヴィと同じ名前。こっちは、ルヴィの瞳の色と同じ。パライバトルマリンっていう石」
ハルト様は、赤いほうを取ると、私の左手薬指にそっとはめた。あの、魔法の輪の上に。
そして、緑のほうを「俺にもつけて」と渡し、手を差し出した。
「結婚する時にはまた別な指輪を一緒に選ぼう。…勝手に選んで怒ってる?」
「ハルト様、嬉しいです。ぴったりですね、大きさが」
「うん。アンジェ様に協力してもらったから。ルヴィにバレちゃうとカッコ悪いでしょ」
そう言ったあと、ハルト様は真剣な顔で私を見た。
「明日の顔合わせに、コリンズ公爵令嬢も来るらしい」
「サフィア様が、」
「うん。あのね、ルヴィ、だいたい立ち位置でわかるとは思うんだけど、俺、コリンズ公爵令嬢の顔覚えてないんだよ」
「え?」
「だから、もしわかったらルヴィ、俺に教えて」
「あの、ハルト様、」
「ん?」
「覚えてないのですか?」
「うん」
「でも、何回かお会いしたことがあるのですよね?」
「うん」
「まったく覚えてないのですか!?」
「うん。だって、ルヴィにしか興味なかったし」
不貞腐れたように言われても困る。認識機能とか大丈夫なんだろうか。
「なぜ、サフィア様を知りたいのですか?」
「子どもまで紹介されるかわからないし、紹介されるにしても、される前に何かされたら困るからだよ」
「何かされる?」
「ルヴィに、何かされたらイヤだから」
「え?」
「だって、ルヴィのこと突き落としたんだよ!俺の目の前で!できるなら、この手で始末してやりたかったよ。だけど、ルヴィのほうが大事だからやめたんだ。ルヴィは死んじゃったし、俺も死ぬつもりだったから。あんなのに一秒たりとも構いたくなかった」
私に触れているハルト様のカラダの熱さが劇的に変化する。カラダの中の魔力がグルグル渦巻いている。
「ハルト様」
私はハルト様の頬を挟んだ。目が合わない。
「ハルト様!」
両手で、ハルト様の頬をピシャリとする。ハッとしたように、ハルト様の目が戻った。
「ごめんなさい、痛かったですね」
「ううん、大丈夫。俺も、ごめん、ルヴィ。熱かったでしょ、ごめんね」
「大丈夫です。ハルト様、サフィア様は何もしないと思いますが…」
「なんで?そんなの、なんでわかるの?」
「ハルト様は、ジークフリート様ではなくなりましたし、今回はサフィア様にもお会いしてないのでしょう」
「してないけど。でも、イヤなの。ルヴィに何かあったら、イヤなの」
泣きそうな顔になると、ハルト様はギュッと私を抱き締めた。
「もう、絶対に失いたくない。ルヴィと、ずっと一緒にいるって決めたんだ。だから、ね、ルヴィ。お願いだから。教えて、ね。お願い」
私の髪に頬擦りするハルト様。あの時、私は殿下のことが嫌いだったし、先に死んでしまったからまったくわからないけれど、取り残された殿下は「絶望して死んだ」と言った。いま、まったく接点がないサフィア様を警戒するくらいに不安に苛まれているのかもしれない。
「ハルト様、サフィア様は、私の父と同じような銀色の髪の毛に、青い瞳の方でした。明日、対面してわかるようなら、ハルト様にお教えします。だから、もう、怒らないでください」
「…怒ってない」
「良かった」
私はハルト様の髪を撫でた。
「明日、絶対俺の隣から離れないで。手も離しちゃダメ」
「ハルト様、顔合わせの時に手を繋ぐのは良くないと思いますが。皆さんの前なのですよ」
ぐ、っと詰まったハルト様は、「じゃあ、離れないでね。約束だよ」と言った。
「男が相手ならルヴィに触った時点で誓約魔法が働くけど、女性には効果がないから…絶対離れないで」
「わかりました。でもハルト様、」
「ん?」
「私も、今回は魔力が発現していますから、あまり心配しないで、」
「心配するでしょ!俺のルヴィがいなくなるなんて、イヤなの!たくさん手紙のやり取りして、ルヴィのこと抱っこして、キスだって…それ以上のことだってしたのに。こんなにルヴィのこと知っちゃったのに。俺、今回ルヴィに何かあったらその場にいる全員消すからね。それから死ぬ」
ハルト様の目がギラギラと恐ろしく光った。
その場にいる全員て、ものすごく重要な方々ばかりなのに。
「ハルト様、簡単に、死ぬなんて」
「じゃあ、ルヴィも死なないで」
私が死ぬ前提なのが可笑しくてつい笑ってしまったことが、ハルト様の逆鱗に触れてしまったのか、
「ルヴィ、俺の言うこと真面目に聞いてないんだね」
ハルト様は、スゥッと目を細めると、「俺がこんなに真剣に悩んでるのに、ルヴィは俺のことなんてどうでもいいんだね」と言って、「もういい」と私を降ろすと消えてしまった。
部屋に取り残された私は、しばしぼんやりとソファに座っていた。ハルト様の心配が、私にはこれっぽっちもわからなかった。こんなにハルト様が守ってくれて、私自身も変わったのに。しかも、サフィア様が私を突き落としたのは、殿下の正式な婚約者は自分、と思っていたからだ。まったく知らない人のために、まったく知らない人に何か害することなどあるだろうか?
でも確かに、あんなに真剣に言っているのに笑ったのは悪かったかもしれない。
謝罪の手紙を書こうと思ったが、ハルト様の新しい部屋にはそれらしきものが見つけられなかったので後から送ろうと、嘆息し、立ち上がって飛ぼうとした。途端、後ろからぎゅうっと抱き締められた。
「…ルヴィ、どこに行く気?」
「ハルト様…?」
ハルト様はそのまま私を横抱きにすると、寝室のドアを蹴り開け、私をベッドに放り投げた。
「…っ」
「逃がさないよ、ルヴィ」
「ハ、ハルトさ、んん…っ!?」
ハルト様は私に覆い被さるとくちびるを重ねてきた。舌をぬるりと差し込んでくる。そうしてしばらくくちびるを貪られ、息も絶え絶えになっている私を冷たい瞳で見下ろすと、「どうせ俺のことなんてどうでもいいんだから。俺がやりたいようにしていいよね」と言って、私の腕に何かをつけた。
「これは、魔力を封じる腕輪だよ。ルヴィはこれでもう魔法では俺に抵抗できない」
私の両手を、頭の上でひとまとめに押さえつけると、もう片方の手を私のワンピースの中に突っ込んだ。そのまま、私の太ももをさわさわと撫でる。
「ルヴィがいなくなっちゃう前に、ルヴィを全部俺のものにする。そうじゃなきゃ、死ぬに死ねない」
「ハルト様…っ」
「なぁに、ルヴィ。何かあるの?明日までずっと一緒だよ。そのまま顔合わせに行こう。立てないだろうから、俺が抱いててあげるからね。それともやっぱり部屋に繋いでおこうかな?それなら、ルヴィを失う心配もないよね。ずーっとここにいて。お風呂も俺がいれてあげるし、ご飯も食べさせてあげる。トイレも、一緒についていって拭いてあげるからね。寒くないようにするから、洋服は着なくていいよね。誰にも会わせない。
最初は痛いかもしれないけど、すぐによくなる。何回も何回もしてるうちに気持ちよくなるよ。だから、最初だけ我慢して、ルヴィ、」
そう言ったハルト様は、ボロボロと涙を流した。
「ルヴィに、痛い思いをさせたくない…」
ハルト様は私の腕を離すと、私の肩に顔をつけ声をあげて泣きはじめた。
私は何も言えず、ハルト様を抱き締めて頭を撫で続けた。
しばらくそうして、ハルト様が落ち着いてきたところに「ハルト様」と呼んでみた。
ハルト様は顔を押しつけたまま返事をしない。
聞いてくれているかどうかわからないが、話すことにした。
「ハルト様、私がさっき笑ったのは、私が死ぬ前提で話をするからです。ハルト様は私を殺したいのですか」
するとハルト様はガバッと顔をあげ、取れてしまうのではないかというくらいの勢いで首を横に振った。目の回りが真っ赤になっている。
「でも、真剣に話しているのに、笑った私も悪かったです。ごめんなさい。…許してくれますか?」
ハルト様はギュッと痛そうな顔になり、「ごめん…」とまた涙をこぼした。
「許さない、ということですか?」
「ち、ちがう。ごめん、ルヴィ、俺が…」
私はハルト様の頭を撫でた。
「こんなに素敵になったのに、泣き虫なのは変わらないですね、ハルト様」
ハルト様は真っ赤な顔になり、「ルヴィ」と小さな声で言った。
「はい」
「こんなことして、ごめん。もうしないから。ごめん」
「私も悪かったので、おあいこです。ハルト様の真剣な思いをバカにしたみたいですみませんでした。明日、サフィア様には気を付けます。ハルト様、守ってくださいね」
ハルト様はコクリと頷くと、「俺、ぜんぜん成長してない…」と呟いた。
「ハルト様、何か飲みましょう。私、準備しますから」
「いい!俺がやる!お土産に、紅茶も買ってきたんだ。ルヴィが好きかなと思って。ごめんね、ルヴィ。スカート、大丈夫かな…乱暴にしてごめん。痛かったね」
ハルト様は私を抱き起こすと、そのまま自分の脚の上に座らせぎゅうぎゅうと抱き締めた。
「痛くないです。びっくりしましたが」
「…ほんと?」
「ほんとです」
「でも、手首、赤くなっちゃった…」
「あ、ハルト様、これ。外してください」
私は腕輪を見せた。
「うん…」
ハルト様はまた真っ赤な顔になり、腕輪を外してベッドの上に置いた。
「こんなものがあるんですね」
「うん。俺は、5歳でここに戻ってきたとき、ルヴィの話をしたら叔母上につけられたんだ」
「え?」
「ルヴィを見に行かせないように、って」
「ああ…、」
「叔母上は、魔力の感知が鋭すぎるから、夜はつけて眠らせてるってリッツさんが言ってた」
「お会いしたのですか?」
「うん、ルヴィのとこに行く前に叔母上に挨拶に行って、その後リッツさんのところに行ったから。叔母上が、すごく幸せそうだった。あんなにビリビリしてたのに、すごく柔らかい雰囲気に変わってた」
「リッツさんが、陛下を大事にされてますから」
そう言うと、ハルト様は「…ごめん」と呟いた。
「…ハルト様?」
「俺も、ちゃんと、ルヴィを大事にする」
「してますよ」
「…ほんと?」
「ほんとです」
ハルト様はぐ、っと詰まったようになり、「ルヴィ、ありがとう」と言った。
次の日、顔合わせのためにお城に行こうとすると、お父様が「僕も!僕も行く!」と抱きついてきた。
「ロレックス、おまえは何をやってるんだ!せっかくキレイに仕上げたのに…アホ!」
お父様を引き剥がしたお母様は、「ヴィー、早く行け、今のうちだ」とウインクした。
「お父様、お母様、行って参ります」
「ヴィー!」
お父様は、昨日ハルト様が帰ってきたと聞いて情緒不安定なのだとお母様がため息をつきながら私の準備をしてくれた。確かにお父様は昨夜私から離れなかった。あの格好良かったお父様はどこに行ってしまったのだろう。
お城に着くと、黒いタキシードを着たハルト様が出迎えてくれた。
「おはよう、ルヴィ」
「おはようございます、ハルト様。とても素敵です」
と言うと、真っ赤な顔になり、「俺が先に言いたかった…ありがと」と言った。
「ルヴィもキレイだ。ピンク、似合うね。ネックレスもつけてきてくれたんだ…」
「ハルト様から初めていただいたものですから」
と言うと、嬉しそうに笑い、「会場まではいいよね」と私の手を握った。
「手袋がジャマだな…」
「おまえ、朝からなんなんだ」
「サヴィオン様、おはようございます。ご挨拶が遅れて」
「いいんだよ、気にするなって。ルヴィア嬢、こいつ、朝からピリピリしてるから…悪いけど、頼むな。おい、ジーク。俺も後ろに付いてるんだから大丈夫だよ!まったく心配性なんだからな」
「…わかってます」
ハルト様はボソッと言うと、私の手を繋いで歩き出した。きちんと歩幅を合わせてくれる気づかいが嬉しい。ニコッと見上げると、「ルヴィ、俺が必ず守るから」とまた言うので頬をつねってやった。
「!?」
「ハルト様、私が婚約者だと発表されるのがイヤみたいな顔ですよ」
「そ、そんなことない!」
「じゃあ、笑ってください」
ハルト様は、「…うん」と呟くと、私を見て微笑んだ。
「昨日帰ってまいりました、王兄のサヴィオン・エイベルと息子のジークハルト・エイベルです」
アンジェ様が紹介すると、相手側から、「…そっくりだ」「似てるな、」という声が上がった。本人だから似てるもなにも、と思ったが、それは秘密なのだからと心の中にとどめた。
そっと窺うと、ちょうど向かい合う真ん中の位置にサフィア・コリンズ様と思われる少女が見えた。頬を染めて、こちらを凝視している。その目を見て、私の胸がギュッと痛んだ。まさか、また…ハルト様を好きになってしまったのだろうか。婚約者は私だけど、ハルト様を取り上げられるような不安に襲われたとき。サフィア様が叫んだ。
「お父様!私、あの方と結婚します!」
「サフィ!?」
サフィア様は止めようとするコリンズ公爵の手を振り切り、こちらに真っ直ぐ駆けてきた。
やっぱり、ハルト様を好きになってしまったの?
私は無意識にハルト様の手を握ってしまった。
「…ルヴィ、大丈夫だよ」
こちらを見てニコリと微笑むハルト様…の脇をすり抜け、サフィア様はサヴィオン様に抱きついた。
「…へ?」
サヴィオン様から気の抜けたような声が洩れる。
一瞬の静寂の後…会場は大騒ぎになり、私とハルト様の婚約発表はできずに終了した。
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