【R18】今度は逃げません?あの決意はどこへ~あまくとろかされてしまうまで~

蜜柑マル

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皇太子サイド

叔母上との話①

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「叔母上!!」

母上の言葉に心底焦っていた俺は、叔母上の魔力の場所に直接飛んでしまった。

「ジーク…?」

訝しげに俺を見る叔母上に話をしようと口を開きかけたとき、叔母上が手を握る人物に気がついた。

「…申し訳ありません、お客様がいらっしゃるのに」

とんだ失態に思わず下を向くと、「ジーク、こっちに来い」とリッツさんに腕を掴まれる。

リッツさんは、叔母上の前に立っている女性に向かって「団長」と呼び掛けた。団長は、リッツさんでは…ここも、以前と変わってるのか?

いくつかやり取りをしたリッツさんは、あたふたと俺の腕を掴んだまま飛んだ。





「あー…怖かった…」

魔術団の団長室に飛んだリッツさんは、真っ青な顔で呟く。そして、ハッとした様子で「片付けないとマズイ…埋められる…!」と言って、アキラさんを呼んだ。

「どうしました?」

「アキラ、とりあえず片すの手伝ってくれ!」

「日頃から言ってるじゃないですか、片付けてくださいって!無視してたくせに、今頃なんですか!
…あれ?ジーク君?戻ってきたの?」

「そうだ、ジーク、おまえ」

リッツさんはジロリと俺を見て「その魔力はなんだ!?」と言った。

「…何かおかしいですか」

「おかしいも何も、おまえ自分でわからないのか?」

そう言われても違和感はない。

黙っていると、叔母上も現れた。

「エカたん、じゃなかった、陛下!」

と言って片膝をついてリッツさんは叔母上を見上げる。

「とりあえず、ケイトリンは帰った。王都に移動してくるそうだから、もう少ししたら辺境伯を領地に戻す。
実質4日しかない、がんばれよ、リッツ」

それを聞いて涙目になるリッツさんを横目に、叔母上が俺を見て言った。

「ジーク、たった2週間かそこらで、その魔力はなんだ?どうやってそんなふうになった?まだおまえ、特性を利用した魔法を使ったことなどなかっただろう」

叔母上の鋭い視線が突き刺さる。…自分の中の魔力の変化なんてまったく感じなかった。記憶だけじゃなく、魔力もそのままここに戻ってきたのか。

「叔母上」

「なんだ」

「なぜ魔力が変わっているのか、…思い当たることはあります。でも、」

「いいか、ジーク」

叔母上は真剣な顔で俺を見た。

「おまえがさっき飛んできたとき、下手したら捕縛されていたかもしれないんだぞ」

意外な言葉に驚いて叔母上を見ると、先ほどの鋭い視線のままで続ける。

「おまえの魔力は、今、まったく違うものになっている。しかも強大だ。それがいきなり、カーディナルのトップの元に現れるんだぞ。
脅威と捉えられても文句は言えん」

「…申し訳ありません」

「謝罪はいい。理由を言え」

「…叔母上」

今までみたことのない、為政者の顔の叔母上がそこにいた。ごまかすのは得策ではない、と思い俺は正直に話すことにした。

「信じてもらえない話だと思います」

「…その前置き、先ほど聞いたばかりだ…」

叔母上の声は小さくて俺には聞こえなかった。

「俺は、18歳の時に死んで、気付いたら5歳に戻っていたんです。たぶん、俺の中の魔力はその18歳の時のものだと…叔母上?」

天を仰ぐ叔母上を見て、リッツさんが「ジーク、おまえ嘘つくにも限度ってもんがあるだろ!」と怒鳴る。

「違う、リッツ。違うんだ」

「エカ、いや、陛下?」

「ジーク」

「…はい」

「ここではなく、私の執務室で話を聞く。
リッツ、アキラ、おまえたちも来い」

そう言うと叔母上は、俺の腕を掴んで飛んだ。







執務室にリッツさんとアキラさんも着くと、「座れ」と椅子を勧められる。

「おまえたちも座れ」

「ですが、」

戸惑うアキラさんに「いいから座れ」と言う。

おどおどした様子で席についたアキラさんは、「陛下」と叔母上を呼ぶ。

「なんだ」

「…団長は、ともかく。僕はここにいるべきではないのでは」

「アキラ、おまえは前世の記憶を持っているな」

「…はい」

「ジークも、そういうことらしい。ただし、おまえと違うのは同じ人間に戻ってやり直してるということだ」

叔母上の端的すぎる説明にリッツさんとアキラさんはポカンとする。

「だからアキラにも、」

「いやいやいやいや、ちょっと待って、…ください、陛下!」

「なんだ、リッツ」

「いや、そんな、荒唐無稽な話を信じるんですか!?18歳で死んで、戻ってきたなんて!」

「じゃあ、この魔力の変容をどう説明するんだ、おまえは。実際に変化してるのはわかるだろう。たった2週間かそこらで、こんなふうに研ぎ澄まされた魔力にどうやったらできる?
ジークはまだ5歳、しかも、ようやく自分の魔力を制御できるようになったところだったんだぞ」

「それは…」

リッツさんがグッと詰まると、「それとな」と叔母上が続ける。

「先ほど…ケイトリンから同じような話を聞いたばかりなんだ」

「…団長から?」

「ケイトリンって…リッツ団長の前の団長ですよね、めっちゃ怖い…」

「5日後から、彼女が団長に戻る」

ええっ!!と声を上げたアキラさんは、憐れむような目をリッツさんに向けた。

「…なんだ、アキラ。何か言いたそうだな?」

いい笑顔でアキラさんの肩を掴むリッツさんに、「痛い!やめて!痛いから!」と叫ぶアキラさん。

叔母上は、パンッと手を叩くと、「後で存分にやれ。続けるぞ」と言った。

「ジーク」

「…はい」

叔母上の体から、パリパリと言う音とともに火花のようなものが漏れ出す。ものすごい威圧感を漂わせる叔母上を見て何事かと目を剥くと、

「おまえ…女の子の髪の毛を引っ張りあげたり、突き飛ばしたり、足で踏みつけたりしたというのは…事実か?」
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