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婚約者編
未来の話②
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アズライト不在の執務室に揃った面々は、ギルバート、前女王のエカテリーナと前魔術師団団長のリッツ、海軍顧問を務めるサヴィオンに諜報部長官のナディール、そして現魔術師団団長のジークハルト。いずれも名字は「エイベル」である。
「さて、と。朝早く集まっていただいてありがとうございます。単刀直入に言いますが、ここにいるギルバート君は俺のように未来で死んで巻き戻ってきたそうです。今朝、彼の魔力が変わっていることに気付いたカーティス君が俺の所に連れてきたんですが。ギルバート君が、カーディナル魔法国が将来的にトゥリエナ帝国に侵攻される、と。そう言うので皆様に集まっていただきました」
ジークハルトが口を閉じると、「トゥリエナ…?」と言葉が誰からともなく洩れる。
「ギルバート君はジェンキンス侯爵令嬢を殺したのか」
唐突に言われて、それを発したナディールを見ると赤い無機質な瞳がギルバートをじっと見据えていた。
「…なぜ、ですか」
「…僕が聞いてるんだけど」
視線の強さは変わらず、しかしながら威圧を感じてギルバートは身震いした。同じ色持ちとは言え、自分はここに揃う色持ちたちとは比べものにならないくらいに弱い。魔力制御をジークハルトに見てもらったが、その後魔力を高めるための努力はあまりしてこなかったし、高等部に入学してからはあの魅了の女のことで頭がいっぱいで磨きもしなかった。「魔力が変わってる」のは、10歳の魔力に比べて、ということだろう。歴戦のここに揃う面子は格が違うのだ。
誤魔化すことは無駄なのだろう。ましてや諜報部長官のナディールの言葉だ。何か違えれば自分がどうなるかわからない。せっかく何かがあって、過ちを犯す前に戻ってこれたのに、シャロンに会う前に死にたくない。
「…殺し、ました」
ポツリと吐き出すと、「…なんだと?」と祖母の怒りに満ちた声が響く。目を上げると、強くこちらを睨み付けるエカテリーナの瞳と目が合った。
「なぜ殺した。そもそもそのジェンキンス侯爵令嬢とやらは誰だ」
「10年前に伯爵位を賜ったノーマン・ガーランドの娘です、叔母上」
「…ガーランド伯爵?」
呟いたギルバートに、「あ、しまった」と口を塞いだジークハルトは、「あーあ」とため息をついた。
「やっちゃったよ、俺としたことが。まあ、もう言っちゃったから言うけどね、ギルバート君。キミが殺したジェンキンス侯爵令嬢のシャロンさんは、今は伯爵令嬢だ」
「な、まえは、名前はなんと…っ、」
「ギルバート!殺した理由を言え!」
しがみつくようにジークハルトに詰め寄ったギルバートは、エカテリーナに雷撃を喰らわされ痛みに蹲った。
「エカたん、ちょっと落ち着いて」
「リッツ!こいつは、人殺しなんだぞ!!」
「でも、何かがあったからこうやって巻き戻ってきたんでしょ。ジークが言ったじゃない。ジークだって間接的とは言えルヴィアさんを殺したようなもんだ、でもきちんと改心して今はそれなりに立派にやってるでしょ。やり直す機会をギルバートはもらったんだろ、だから、話を聞いてあげようよ、ね。ナディール様も話が唐突すぎます。まだ子どもなんだし、ましてや今朝巻き戻ったばかりで困惑しているのは本人でしょう。少し手加減してやってください。…ギルバート、座れ」
祖父のリッツに目線で示され、ギルバートは渋々椅子に座った。ジークハルトは「それなり…」となぜか落ち込んでいる。ナディールは「殺した、ということがわかればいい」と言って、それ以上は言葉を発さなかった。
「おまえはその令嬢とどんな関係だったんだ」
サヴィオンに見据えられ、ギルバートはまた身震いが起きる。顧問と言いながらいまだに現役で海に出ていくサヴィオンの眼光は鋭い。
「…あ、の、」
「とりあえず、みんなで質問攻めはやめようよ。ギルバート君に落ち着いて話をさせよう。俺もまだ、カーディナル魔法国を救ってくれと言われた真意がわからない。さ、ギルバート君、話してごらん」
ジークハルト様に促され、ギルバートは話しだした。
母、アズライト女王陛下が色持ちの人間に劣等感を抱いていることはそれとなく察せられていたようで、それが原因でジークハルト様は団長を外されたのだと話すと、
「…アズライトは、女王を降りるべきだな」
と祖母が低い声で呟いた。
「サヴィオン様」
「なんだ」
「サヴィオン様の長女のミア様は、モロゾフ公爵家に嫁がれましたよね」
「…ああ」
途端に不機嫌になるサヴィオンに怯みそうになりながらも、ギルバートは言葉を続けた。
「孫のランベールは、俺と同い年かと思いますが、彼は両性具有者ですよね、彼は母親に、」
「おい、ちょっと待て!いまなんつったんだおまえ!」
立ち上がったサヴィオンはギルバートの襟首を掴み椅子から掴み上げた。
「父上っ!!」
サヴィオンの手をギリギリと掴み上げたジークハルトをハッとしたように見たサヴィオンは、大人しく手を離した。ギルバートがゴホゴホと噎せる。
「父上、ギルバート君はまだ10歳のカラダなんですよ!魔力だって昨日からは変わってたって言ってもこんなショボさなんですよ!そんな相手になにしてんですか!」
庇われているはずなのにちょいちょいディスられて、ギルバートの心は折れそうだった。
「…だってよ。そいついま、両性具有って言わなかったか?俺はそんなの知らねぇ。…そもそも孫に会ったのは生まれた時分だけで、抱かせてももらえなかった。サフィアはミアの家に行くのに俺のことは頑なに連れていこうとしない。理由も言わない。…それが原因ってことなのかよ」
力なく椅子に腰を降ろしたサヴィオンは、「…で?」とギルバートに視線を向けた。
「…ランベールは母親に、小さいときから『ギルバートを追い落としおまえが国王になるべきだ』と言い続けられてきたそうです。まるで呪いのようなそれは、ランベールを歪めてしまって、彼は自分が国王に立ち、俺を王配にすると。自分が俺の子どもを生んでやるからと。幼い頃から言われ続けて、俺を好きだと勘違いしたようです。一度告白もされました。でも俺は、婚約者がいた。シャロン・ジェンキンス侯爵令嬢、彼女は俺の、運命の香りです。ランベールはエイベル家の血を継いでいる、だから、わかってくれるって、そう思ったんです。でもあいつは理解しなかった。シャロンを邪魔者とみなし、俺を奪うため、…俺に、魅了をかけさせたんです」
「…魅了?」
訝しげに顔を上げたジークハルトは、
「魅了を防ぐ指輪をしてなかったのか?」
「…母上が、…たぶん、ランベールの父親に唆されて、なんでしょうが、…魅了の指輪を禁止するという法律を作るんです」
「…なんじゃそりゃ」
呆けたような声を出したサヴィオンは、
「…まあさっきのあの拗らせ夫婦を見てたら、つけこまれるわな、アズライトは。あんなにカーティスが好きなのに、寂しい思いをさせられてんだろ?」
「…それは、そうかも、しれませんけど、父上が母上を見限ったのは、ジークハルト様を罷免したからですから…」
「それだって、カーティスがきちんと支えてやればいい話だろ。おかしなことをしてる、って諌めるのが夫の立場だろうが」
サヴィオンにそう言われて、ギルバートは何も言えなかった。アズライトが勝手に劣等感を抱いただけで俺たちは何も悪くないはずなのに、父が責められているのは釈然としなかった。
「魅了にかかったのはいつなの」
ナディールの言葉にハッとしたギルバートは、「学園の、高等部の入学式です」
「相手は…トゥリエナ帝国だとわかっているなら、水色の髪の毛にピンクの瞳の女だったんだろう?」
コクリ、と頷くと、
「マリアンヌちゃんの話とも辻褄が合うね」
とジークハルトを見て頷いた。
「…シャロンの、母上ですか」
ギルバートに視線を移したナディールは「そうだよ」と言うと、
「学園に入るまではそれなりに交流を持っていたから気付かなかった…マリアンヌちゃんもいろいろ事情があって、娘さんとはあまり話をしてなくて、娘さんもキミのことを訴えなかったみたいだね。城に呼び出されてキミが抱き抱える娘さんの亡骸を見て、なにが起きているのか理解できなかったと。その傍らにある死体を見て夫が『妾』と言ったらしい。そこで初めて、娘がキミに虐げられていることを知ったそうだ。シャロンという彼女はなぜ死んだんだ」
また斬り込まれて、ギルバートは誤魔化すことができなかった。
「…俺は、魅了に堕ちたけど、その魅了をかけた女を抱けなかったんです。逸物が、反応しなかった。勃起しなくて、ヤりたいのにヤれなくて、シャロンとは結婚したくなかったのにそのままさせられた苛立ちもあって、式のあと、シャロンを殴ったら、…勃起したんです。すごく、興奮して、リーシャと、…その魅了の女の名前を呼びながらシャロンをめちゃめちゃに犯しました。顔を殴って、鞭で叩いて、裸で鎖に繋いで、口で奉仕させて食事の代わりに子種を飲ませた。風呂もなにもなく、…俺が外してる間、ランベールがシャロンに暴力を振るっていることも知っていましたがなんとも思わなかった。憎らしくて憎らしくて、…ある日、衰弱してシャロンが死んで、…俺の魅了は解けました。ランベールを殺して、魅了の女も殺して、シャロンをシャロンの母上に取られそうになって、取られたくなくて、…俺の記憶はそこまでです」
シン…ッ、と静寂が広がる中、ポツリと口を開いたのはリッツだった。
「…ギルバート、おまえ、…今回はその彼女に接触するな」
「なんでですかっ!」
「なんでもくそもあるかっ!魅了にかかってたから?だからなんでも許されるとでも?そんな人でなしの真似をしながら彼女に会えるのか!」
氷の冷気を漂わせられ、しかしギルバートは納得できなかった。
「…俺は、彼女に償いたいんです」
「彼女の両親はそれを望んでいない」
ナディールが淡々と告げる事実に、ギルバートは頭を抱えたくなった。母親だけでなく、父親まで…。
「キミに会わせたくない、関わらせたくないから、婚約者にならないように伯爵になったんだよ、シャロン嬢の父親、ノーマン君は」
「さて、と。朝早く集まっていただいてありがとうございます。単刀直入に言いますが、ここにいるギルバート君は俺のように未来で死んで巻き戻ってきたそうです。今朝、彼の魔力が変わっていることに気付いたカーティス君が俺の所に連れてきたんですが。ギルバート君が、カーディナル魔法国が将来的にトゥリエナ帝国に侵攻される、と。そう言うので皆様に集まっていただきました」
ジークハルトが口を閉じると、「トゥリエナ…?」と言葉が誰からともなく洩れる。
「ギルバート君はジェンキンス侯爵令嬢を殺したのか」
唐突に言われて、それを発したナディールを見ると赤い無機質な瞳がギルバートをじっと見据えていた。
「…なぜ、ですか」
「…僕が聞いてるんだけど」
視線の強さは変わらず、しかしながら威圧を感じてギルバートは身震いした。同じ色持ちとは言え、自分はここに揃う色持ちたちとは比べものにならないくらいに弱い。魔力制御をジークハルトに見てもらったが、その後魔力を高めるための努力はあまりしてこなかったし、高等部に入学してからはあの魅了の女のことで頭がいっぱいで磨きもしなかった。「魔力が変わってる」のは、10歳の魔力に比べて、ということだろう。歴戦のここに揃う面子は格が違うのだ。
誤魔化すことは無駄なのだろう。ましてや諜報部長官のナディールの言葉だ。何か違えれば自分がどうなるかわからない。せっかく何かがあって、過ちを犯す前に戻ってこれたのに、シャロンに会う前に死にたくない。
「…殺し、ました」
ポツリと吐き出すと、「…なんだと?」と祖母の怒りに満ちた声が響く。目を上げると、強くこちらを睨み付けるエカテリーナの瞳と目が合った。
「なぜ殺した。そもそもそのジェンキンス侯爵令嬢とやらは誰だ」
「10年前に伯爵位を賜ったノーマン・ガーランドの娘です、叔母上」
「…ガーランド伯爵?」
呟いたギルバートに、「あ、しまった」と口を塞いだジークハルトは、「あーあ」とため息をついた。
「やっちゃったよ、俺としたことが。まあ、もう言っちゃったから言うけどね、ギルバート君。キミが殺したジェンキンス侯爵令嬢のシャロンさんは、今は伯爵令嬢だ」
「な、まえは、名前はなんと…っ、」
「ギルバート!殺した理由を言え!」
しがみつくようにジークハルトに詰め寄ったギルバートは、エカテリーナに雷撃を喰らわされ痛みに蹲った。
「エカたん、ちょっと落ち着いて」
「リッツ!こいつは、人殺しなんだぞ!!」
「でも、何かがあったからこうやって巻き戻ってきたんでしょ。ジークが言ったじゃない。ジークだって間接的とは言えルヴィアさんを殺したようなもんだ、でもきちんと改心して今はそれなりに立派にやってるでしょ。やり直す機会をギルバートはもらったんだろ、だから、話を聞いてあげようよ、ね。ナディール様も話が唐突すぎます。まだ子どもなんだし、ましてや今朝巻き戻ったばかりで困惑しているのは本人でしょう。少し手加減してやってください。…ギルバート、座れ」
祖父のリッツに目線で示され、ギルバートは渋々椅子に座った。ジークハルトは「それなり…」となぜか落ち込んでいる。ナディールは「殺した、ということがわかればいい」と言って、それ以上は言葉を発さなかった。
「おまえはその令嬢とどんな関係だったんだ」
サヴィオンに見据えられ、ギルバートはまた身震いが起きる。顧問と言いながらいまだに現役で海に出ていくサヴィオンの眼光は鋭い。
「…あ、の、」
「とりあえず、みんなで質問攻めはやめようよ。ギルバート君に落ち着いて話をさせよう。俺もまだ、カーディナル魔法国を救ってくれと言われた真意がわからない。さ、ギルバート君、話してごらん」
ジークハルト様に促され、ギルバートは話しだした。
母、アズライト女王陛下が色持ちの人間に劣等感を抱いていることはそれとなく察せられていたようで、それが原因でジークハルト様は団長を外されたのだと話すと、
「…アズライトは、女王を降りるべきだな」
と祖母が低い声で呟いた。
「サヴィオン様」
「なんだ」
「サヴィオン様の長女のミア様は、モロゾフ公爵家に嫁がれましたよね」
「…ああ」
途端に不機嫌になるサヴィオンに怯みそうになりながらも、ギルバートは言葉を続けた。
「孫のランベールは、俺と同い年かと思いますが、彼は両性具有者ですよね、彼は母親に、」
「おい、ちょっと待て!いまなんつったんだおまえ!」
立ち上がったサヴィオンはギルバートの襟首を掴み椅子から掴み上げた。
「父上っ!!」
サヴィオンの手をギリギリと掴み上げたジークハルトをハッとしたように見たサヴィオンは、大人しく手を離した。ギルバートがゴホゴホと噎せる。
「父上、ギルバート君はまだ10歳のカラダなんですよ!魔力だって昨日からは変わってたって言ってもこんなショボさなんですよ!そんな相手になにしてんですか!」
庇われているはずなのにちょいちょいディスられて、ギルバートの心は折れそうだった。
「…だってよ。そいついま、両性具有って言わなかったか?俺はそんなの知らねぇ。…そもそも孫に会ったのは生まれた時分だけで、抱かせてももらえなかった。サフィアはミアの家に行くのに俺のことは頑なに連れていこうとしない。理由も言わない。…それが原因ってことなのかよ」
力なく椅子に腰を降ろしたサヴィオンは、「…で?」とギルバートに視線を向けた。
「…ランベールは母親に、小さいときから『ギルバートを追い落としおまえが国王になるべきだ』と言い続けられてきたそうです。まるで呪いのようなそれは、ランベールを歪めてしまって、彼は自分が国王に立ち、俺を王配にすると。自分が俺の子どもを生んでやるからと。幼い頃から言われ続けて、俺を好きだと勘違いしたようです。一度告白もされました。でも俺は、婚約者がいた。シャロン・ジェンキンス侯爵令嬢、彼女は俺の、運命の香りです。ランベールはエイベル家の血を継いでいる、だから、わかってくれるって、そう思ったんです。でもあいつは理解しなかった。シャロンを邪魔者とみなし、俺を奪うため、…俺に、魅了をかけさせたんです」
「…魅了?」
訝しげに顔を上げたジークハルトは、
「魅了を防ぐ指輪をしてなかったのか?」
「…母上が、…たぶん、ランベールの父親に唆されて、なんでしょうが、…魅了の指輪を禁止するという法律を作るんです」
「…なんじゃそりゃ」
呆けたような声を出したサヴィオンは、
「…まあさっきのあの拗らせ夫婦を見てたら、つけこまれるわな、アズライトは。あんなにカーティスが好きなのに、寂しい思いをさせられてんだろ?」
「…それは、そうかも、しれませんけど、父上が母上を見限ったのは、ジークハルト様を罷免したからですから…」
「それだって、カーティスがきちんと支えてやればいい話だろ。おかしなことをしてる、って諌めるのが夫の立場だろうが」
サヴィオンにそう言われて、ギルバートは何も言えなかった。アズライトが勝手に劣等感を抱いただけで俺たちは何も悪くないはずなのに、父が責められているのは釈然としなかった。
「魅了にかかったのはいつなの」
ナディールの言葉にハッとしたギルバートは、「学園の、高等部の入学式です」
「相手は…トゥリエナ帝国だとわかっているなら、水色の髪の毛にピンクの瞳の女だったんだろう?」
コクリ、と頷くと、
「マリアンヌちゃんの話とも辻褄が合うね」
とジークハルトを見て頷いた。
「…シャロンの、母上ですか」
ギルバートに視線を移したナディールは「そうだよ」と言うと、
「学園に入るまではそれなりに交流を持っていたから気付かなかった…マリアンヌちゃんもいろいろ事情があって、娘さんとはあまり話をしてなくて、娘さんもキミのことを訴えなかったみたいだね。城に呼び出されてキミが抱き抱える娘さんの亡骸を見て、なにが起きているのか理解できなかったと。その傍らにある死体を見て夫が『妾』と言ったらしい。そこで初めて、娘がキミに虐げられていることを知ったそうだ。シャロンという彼女はなぜ死んだんだ」
また斬り込まれて、ギルバートは誤魔化すことができなかった。
「…俺は、魅了に堕ちたけど、その魅了をかけた女を抱けなかったんです。逸物が、反応しなかった。勃起しなくて、ヤりたいのにヤれなくて、シャロンとは結婚したくなかったのにそのままさせられた苛立ちもあって、式のあと、シャロンを殴ったら、…勃起したんです。すごく、興奮して、リーシャと、…その魅了の女の名前を呼びながらシャロンをめちゃめちゃに犯しました。顔を殴って、鞭で叩いて、裸で鎖に繋いで、口で奉仕させて食事の代わりに子種を飲ませた。風呂もなにもなく、…俺が外してる間、ランベールがシャロンに暴力を振るっていることも知っていましたがなんとも思わなかった。憎らしくて憎らしくて、…ある日、衰弱してシャロンが死んで、…俺の魅了は解けました。ランベールを殺して、魅了の女も殺して、シャロンをシャロンの母上に取られそうになって、取られたくなくて、…俺の記憶はそこまでです」
シン…ッ、と静寂が広がる中、ポツリと口を開いたのはリッツだった。
「…ギルバート、おまえ、…今回はその彼女に接触するな」
「なんでですかっ!」
「なんでもくそもあるかっ!魅了にかかってたから?だからなんでも許されるとでも?そんな人でなしの真似をしながら彼女に会えるのか!」
氷の冷気を漂わせられ、しかしギルバートは納得できなかった。
「…俺は、彼女に償いたいんです」
「彼女の両親はそれを望んでいない」
ナディールが淡々と告げる事実に、ギルバートは頭を抱えたくなった。母親だけでなく、父親まで…。
「キミに会わせたくない、関わらせたくないから、婚約者にならないように伯爵になったんだよ、シャロン嬢の父親、ノーマン君は」
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