お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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番外編~100年に一度の恋へ

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アミノフィア国で今後について条約を締結したギデオンは、レイン、ディーン、ゼイン、龍彦とともに菖蒲にソルマーレ国へと転移させてもらった。いち早く寝室へと駆けつけようとするが、レインに、

「父上。そんな畜生どもの生臭い血をまとったまま母上に会うおつもりですか?誰が許しても俺が許しませんよ」

と、浴室に引っ張りこまれた。

レインにされるがままに、髪の毛を流され洗われるギデオンの瞳から、ポタリと涙が零れ落ちた。

「レイン」

「はい」

「わたくしは、…これから、どうすればいいでしょう」

無表情のままボタボタ涙を溢すギデオンの髪の毛をたどたどしく小さな手で洗いながら、レインはそっと呟いた。

「…前世の俺のように、母上を追って死にますか?俺には彼女以外、なにもなかった。だから、死んでも構わなかった。でも父上、貴方には母上と育んだ、…俺たち兄弟がいるんですよ。その俺たちを投げ捨てて、母上が生きたこの国を投げ捨てて、自分の哀しみのまま、母上を追いますか?」

レインの言葉を聞いて、ギデオンは涙を溢し続ける。そのギデオンを、レインはキレイに洗い流してやり、そして、ギデオンの頬を両手でピシャリと張った。

「母上に会いに行きますよ、父上」

溢れ出る涙をそのままに、ギデオンは幼い我が子のカラダにすがりつき、声を上げて泣いた。

「フィー!!フィー、フィー、なんで、わたくしを、捨てないと…!約束、したではありませんか…っ!!フィー、なんで…っ」

レインも涙を流しながら、ギデオンの頭をギュッと抱き締める。その瞳には、強い光が戻っていた。












浴室から出て身なりを整えたギデオンは、レインに手を引かれながらソフィアの待つ寝室に向かった。扉を開くと、吸い込まれるように中に入る。

「フィー、ただいま帰りました。待たせてすみません」

「母上、寒かったですね。父上が温めてくださいますから」

レインはギデオンがソフィアを抱きしめ横になるのを見て、布団を掛けると静かに扉から出て行った。

「…なかなか温まりませんね。わたくしが遅かったせいで、あんな場所に閉じ込められて…芯まで冷えてしまったのですね。わたくしが責任を持って温めますからね。あの畜生どもは、わたくしたちが罰を与えました。もう何も、心配することはありません。

フィー、これから忙しくなるのですから、早く目を覚ましてください…リオンも、レインも、婚約者を…いえ、わたくしたちが好きにさせてもらったのに、無理に決める必要はありませんよね。リオンが穂高君に振られてしまったのでどうしようかと…。フィーは、どうすればいいと思いますか?目が覚めたら、フィーの考えを聞かせてください。わたくしの無粋な考えでは、リオンを怒らせてしまうかもしれませんから。

アーロンもザイオンも、まだ1歳になってません。これから立派に育て上げなくては…国のために生きるとはどういうことなのか、教えていくのでしょう?…フィー、一緒に頑張りましょう。ね、フィー…」

ソフィアの冷たいカラダを優しく擦りながら、ギデオンはソフィアにいつまでも話し掛けた。
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