160 / 161
番外編~100年に一度の恋へ
19
しおりを挟む
アミノフィア国で今後について条約を締結したギデオンは、レイン、ディーン、ゼイン、龍彦とともに菖蒲にソルマーレ国へと転移させてもらった。いち早く寝室へと駆けつけようとするが、レインに、
「父上。そんな畜生どもの生臭い血をまとったまま母上に会うおつもりですか?誰が許しても俺が許しませんよ」
と、浴室に引っ張りこまれた。
レインにされるがままに、髪の毛を流され洗われるギデオンの瞳から、ポタリと涙が零れ落ちた。
「レイン」
「はい」
「わたくしは、…これから、どうすればいいでしょう」
無表情のままボタボタ涙を溢すギデオンの髪の毛をたどたどしく小さな手で洗いながら、レインはそっと呟いた。
「…前世の俺のように、母上を追って死にますか?俺には彼女以外、なにもなかった。だから、死んでも構わなかった。でも父上、貴方には母上と育んだ、…俺たち兄弟がいるんですよ。その俺たちを投げ捨てて、母上が生きたこの国を投げ捨てて、自分の哀しみのまま、母上を追いますか?」
レインの言葉を聞いて、ギデオンは涙を溢し続ける。そのギデオンを、レインはキレイに洗い流してやり、そして、ギデオンの頬を両手でピシャリと張った。
「母上に会いに行きますよ、父上」
溢れ出る涙をそのままに、ギデオンは幼い我が子のカラダにすがりつき、声を上げて泣いた。
「フィー!!フィー、フィー、なんで、わたくしを、捨てないと…!約束、したではありませんか…っ!!フィー、なんで…っ」
レインも涙を流しながら、ギデオンの頭をギュッと抱き締める。その瞳には、強い光が戻っていた。
浴室から出て身なりを整えたギデオンは、レインに手を引かれながらソフィアの待つ寝室に向かった。扉を開くと、吸い込まれるように中に入る。
「フィー、ただいま帰りました。待たせてすみません」
「母上、寒かったですね。父上が温めてくださいますから」
レインはギデオンがソフィアを抱きしめ横になるのを見て、布団を掛けると静かに扉から出て行った。
「…なかなか温まりませんね。わたくしが遅かったせいで、あんな場所に閉じ込められて…芯まで冷えてしまったのですね。わたくしが責任を持って温めますからね。あの畜生どもは、わたくしたちが罰を与えました。もう何も、心配することはありません。
フィー、これから忙しくなるのですから、早く目を覚ましてください…リオンも、レインも、婚約者を…いえ、わたくしたちが好きにさせてもらったのに、無理に決める必要はありませんよね。リオンが穂高君に振られてしまったのでどうしようかと…。フィーは、どうすればいいと思いますか?目が覚めたら、フィーの考えを聞かせてください。わたくしの無粋な考えでは、リオンを怒らせてしまうかもしれませんから。
アーロンもザイオンも、まだ1歳になってません。これから立派に育て上げなくては…国のために生きるとはどういうことなのか、教えていくのでしょう?…フィー、一緒に頑張りましょう。ね、フィー…」
ソフィアの冷たいカラダを優しく擦りながら、ギデオンはソフィアにいつまでも話し掛けた。
「父上。そんな畜生どもの生臭い血をまとったまま母上に会うおつもりですか?誰が許しても俺が許しませんよ」
と、浴室に引っ張りこまれた。
レインにされるがままに、髪の毛を流され洗われるギデオンの瞳から、ポタリと涙が零れ落ちた。
「レイン」
「はい」
「わたくしは、…これから、どうすればいいでしょう」
無表情のままボタボタ涙を溢すギデオンの髪の毛をたどたどしく小さな手で洗いながら、レインはそっと呟いた。
「…前世の俺のように、母上を追って死にますか?俺には彼女以外、なにもなかった。だから、死んでも構わなかった。でも父上、貴方には母上と育んだ、…俺たち兄弟がいるんですよ。その俺たちを投げ捨てて、母上が生きたこの国を投げ捨てて、自分の哀しみのまま、母上を追いますか?」
レインの言葉を聞いて、ギデオンは涙を溢し続ける。そのギデオンを、レインはキレイに洗い流してやり、そして、ギデオンの頬を両手でピシャリと張った。
「母上に会いに行きますよ、父上」
溢れ出る涙をそのままに、ギデオンは幼い我が子のカラダにすがりつき、声を上げて泣いた。
「フィー!!フィー、フィー、なんで、わたくしを、捨てないと…!約束、したではありませんか…っ!!フィー、なんで…っ」
レインも涙を流しながら、ギデオンの頭をギュッと抱き締める。その瞳には、強い光が戻っていた。
浴室から出て身なりを整えたギデオンは、レインに手を引かれながらソフィアの待つ寝室に向かった。扉を開くと、吸い込まれるように中に入る。
「フィー、ただいま帰りました。待たせてすみません」
「母上、寒かったですね。父上が温めてくださいますから」
レインはギデオンがソフィアを抱きしめ横になるのを見て、布団を掛けると静かに扉から出て行った。
「…なかなか温まりませんね。わたくしが遅かったせいで、あんな場所に閉じ込められて…芯まで冷えてしまったのですね。わたくしが責任を持って温めますからね。あの畜生どもは、わたくしたちが罰を与えました。もう何も、心配することはありません。
フィー、これから忙しくなるのですから、早く目を覚ましてください…リオンも、レインも、婚約者を…いえ、わたくしたちが好きにさせてもらったのに、無理に決める必要はありませんよね。リオンが穂高君に振られてしまったのでどうしようかと…。フィーは、どうすればいいと思いますか?目が覚めたら、フィーの考えを聞かせてください。わたくしの無粋な考えでは、リオンを怒らせてしまうかもしれませんから。
アーロンもザイオンも、まだ1歳になってません。これから立派に育て上げなくては…国のために生きるとはどういうことなのか、教えていくのでしょう?…フィー、一緒に頑張りましょう。ね、フィー…」
ソフィアの冷たいカラダを優しく擦りながら、ギデオンはソフィアにいつまでも話し掛けた。
36
お気に入りに追加
5,689
あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

【完結】貴方をお慕いしておりました。婚約を解消してください。
暮田呉子
恋愛
公爵家の次男であるエルドは、伯爵家の次女リアーナと婚約していた。
リアーナは何かとエルドを苛立たせ、ある日「二度と顔を見せるな」と言ってしまった。
その翌日、二人の婚約は解消されることになった。
急な展開に困惑したエルドはリアーナに会おうとするが……。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる