お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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番外編~100年に一度の恋へ

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「…ソフィア様が拐われた!?」

菖蒲の叫びに、ディーンとゼインは蒼白な顔でコクリと頷いた。

「だから紫苑が…」

「兄上が、ジャポン皇国にも助けを求めた方がいいと…皇帝陛下のところに飛んで、そのあと玄武州に行き、眞島さんにも協力を依頼すると仰っていた。
…あの時、イェーガー殿下の使いだと簡単に信じた自分のせいで、ソフィア様を危険な目に遇わせてしまったと、兄上はそれは鬼気迫るお怒りようで…」

ギデオンのその時の様子を思い出し、ゼインはブルリと体を震わせた。

「…本当に、イェーガー殿下の仕業ではないと?」

菖蒲の問いに、ディーンは首を横に振った。

「イェーガー殿下が我々…兄上に仕掛ける理由が何もない上に、タイミングよくハソックヒル国の艦隊が動いた。イェーガー殿下は自国から民を拐うハソックヒル国をことのほか憎んでいらっしゃるんだよ。はっきりとした証拠がないから追及できずにいるけどね。兄上はイェーガー殿下をおおらか、と評していたけれど、我々ふたりの印象はちがう。あの方は、かなりの激情を抱えていらっしゃる。兄上は留学していた頃、誰にも何にも興味関心がなかったからイェーガー殿下のことも見ていなかっただけだ。たぶん今回お会いしたら、印象を変えたのではないかと思う…」

僕は父上に報告に行く、とゼインが部屋を出て行った。

そしてソルマーレ国国王の手元には、アミノフィア国第2王子からの再度の婚姻要求が届いていた。












ジャポン皇国から戻ってきたギデオンは、手渡された手紙に目を通すと無表情で顔を上げた。

「…ハソックヒル国でソフィアを預かっているなどと、脅しのつもりで書いたのかわかりませんが…自分たちの関係性を自ら暴露するなんて、相当の愚者ですね、あの第2王子は」

「兄上、」

声を掛けたゼインは、ギデオンの視線の鋭さに一瞬心臓が貫かれたかと錯覚し、呼吸ができなくなった。

「…ソフィアを無事に返してほしくば、オリヴィアを連れてハソックヒル国に来いと。交換してやる、だそうですよ。ずいぶんとお優しいことだ」

ギデオンの様子に双子王子は口を開くことすらできない。恐怖で、開いたら肺が凍りそうなのだ。

「アネットによれば、ハソックヒルの艦隊は引き返したらしい」

「そうですね。ソフィアとわたくしを引き離すためだけの出航でしょうから」

国王の言葉に淡々と答えたギデオンは、

「ジャポン皇国の拝田皇帝陛下が、全面的に協力すると確約をくださいました。織部さんと羅刹さんが艦隊を率いてハソックヒル国に向かってくださる。我が国も出航します」

「…兄上、我々ふたりが率います!」

ディーンの言葉にコクリと頷いたギデオンは、

「オリヴィアは羅刹さんと陽彦さんが連れてきてくださるそうです。たぶんあちらから来る方が遅いでしょうから、その間にソフィアの無事を確かめます」

「オリヴィアをむざむざ渡すつもりか?」

ギデオンの凍てつくような視線を受けて、さすがの国王もカラダがピクッ、と反応する。

「…わたくしは、自国民や家族を奴隷に落とす趣味はないんです。どのようなことをしても、たとえ相討ちになっても、ソフィアとオリヴィアは必ず守ります」
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