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番外編~100年に一度の恋へ
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「…アミノフィア国の第2王子がオリヴィアを娶りてぇだと?」
チンピラのドスのきいた声が執務室にひびく。
「ええ。あちらの王太子殿下は、わたくしと同い年で今年25歳。レイン、リオンと同い年の三つ子の王子がおります。彼は正妃の息子ですが、第2王子は側妃の息子で今年20歳。王太子殿下はかなりおっとり型で、…第2王子は攻撃的な性格です。王太子の座を奪うため、何かを企んでいるという噂もありますが…アミノフィア国は元々母上の祖国ですし、友好国の政に口を出すのは越権行為になりますから詳細はわかりません」
悪魔の言葉にチンピラは眉をしかめると、
「しかしオリヴィアを娶りたいとなれば話は別だ。それこそ、ケツの穴まで」
「父上、フィーの前でやめてください」
いや、それは別に構わないんだけど…。
「…オリヴィアちゃんと12歳も離れてるんでしょ、その人。なんでそんな申し込みを?」
まさかのロリコンなの?せっかく頑張って…というか、あの双子の影に躾けられて大変だったのに、その努力を変態に踏みにじられるなんて可哀想すぎる。
「ギデオンのおかげでソルマーレ国はいまや繋がりを強化したい国ナンバーワンだ。セルーラン国のローランドとか言うガキも、オリヴィアに袖にされたにも関わらずまだ諦めていねぇらしい。毎月のように訪問の許可をと手紙を寄越しやがる。今更だよな」
「リオンの婚約がなくなりましたが、リオンではなくオリヴィアを、と強くご所望ですから…ローランド王子は我が国との繋がり云々を越えて、オリヴィアを手にしたくなったのでしょう。まぁ、本人はジャポン皇国におりますし、陽彦さんとの手合わせに夢中のようですから…」
オリヴィアちゃんは芙蓉さんに心酔して、またすぐに青龍州に行ってしまった。芙蓉さんに華道や茶道を学びながら、「たおやかな女性になりたい」と言っていたのに、…なぜか陽彦さんに格闘術を学び続けているのである。たおやかさはどこに行ってしまうのか。
「とりあえず、その第2王子を徹底的に調べるのが先だ。ギデオン、頼めるか」
「お任せください」
そんなやり取りをして2週間後、チンピラの執務室は重苦しい雰囲気に包まれていた。
「…まさかハソックヒルの協力者だったとは」
悪魔の調べた内容は、驚くべきものだった。
アミノフィア国の国民がハソックヒルに奴隷にするために拐われている、と聞いたことがある。悪魔はその時、「アミノフィアの内部に、ハソックヒルの協力者…内通者がいるのではないか」と言っていたのだが。
「ハソックヒルの第1王子と組んで、自国の民を拐わせ奴隷に落とすなんて、何を考えてるの!?」
王妃陛下が珍しく声を荒げる。なんでもご実家で働いている使用人の娘が拐われて今も消息不明らしく、以前からこの事件に心を痛めていたのだ。
「そのルートを暴いて、しかもその罪を王太子に押し付け、彼を廃嫡、処刑し、自分が名実共に王太子になるという算段らしいです。正妃の手前王太子にできなかったものの、現在の国王は側妃を寵愛しており、第2王子が画策していることもある程度わかっているようですね。その上で目をつぶっている。お家事情で奴隷にされる国民はたまったものではありません…わたくしはアミノフィア国で王太子殿下に…イェーガー殿下に大層よくしていただきました。あの時はまだ『呪』がかかったままで、生きてるのに死んでいるような感じで、実際いつ死のうが構わないと思っていました。でも彼は、許してくれませんでした。わたくしが死ぬのを。おおらかに笑いながら、でも、けして許さなかった。…今のわたくしがいるのも、こうして幸せに生きていられるのも、彼がわたくしをこの世に繋ぎ止めてくれたおかげです。その恩人がむざむざ殺されるのは黙っていられません」
珍しく語気を荒げる悪魔に、チンピラも極悪な顔で頷く。
「だいたい、自分で後継だと認めていながら実は次男を王太子にしたかったんです~、なんてバカな話があるか。情けねぇクズだ。国民をなんだと思ってやがる、てめえらの勝手にできるおもちゃじゃねえんだぞ」
「僕たちもアミノフィア国で、イェーガー殿下にたいそうお世話になりました。それに引き換えあの第2王子は、挨拶もろくにせず我々を鼻で嗤うような性根の腐った人間です。あんなのを次期国王にするならば、母上の祖国とはいえキッパリ縁を切るべきだ」
ディーン王子の言葉にゼイン王子も眉をしかめ頷いている。そんな男にオリヴィアちゃんを嫁がせるわけにはいかない。
早々に断りの返答をした一ヶ月後、…私はハソックヒル国の第1王子が所有する地下牢に囚われていた。
チンピラのドスのきいた声が執務室にひびく。
「ええ。あちらの王太子殿下は、わたくしと同い年で今年25歳。レイン、リオンと同い年の三つ子の王子がおります。彼は正妃の息子ですが、第2王子は側妃の息子で今年20歳。王太子殿下はかなりおっとり型で、…第2王子は攻撃的な性格です。王太子の座を奪うため、何かを企んでいるという噂もありますが…アミノフィア国は元々母上の祖国ですし、友好国の政に口を出すのは越権行為になりますから詳細はわかりません」
悪魔の言葉にチンピラは眉をしかめると、
「しかしオリヴィアを娶りたいとなれば話は別だ。それこそ、ケツの穴まで」
「父上、フィーの前でやめてください」
いや、それは別に構わないんだけど…。
「…オリヴィアちゃんと12歳も離れてるんでしょ、その人。なんでそんな申し込みを?」
まさかのロリコンなの?せっかく頑張って…というか、あの双子の影に躾けられて大変だったのに、その努力を変態に踏みにじられるなんて可哀想すぎる。
「ギデオンのおかげでソルマーレ国はいまや繋がりを強化したい国ナンバーワンだ。セルーラン国のローランドとか言うガキも、オリヴィアに袖にされたにも関わらずまだ諦めていねぇらしい。毎月のように訪問の許可をと手紙を寄越しやがる。今更だよな」
「リオンの婚約がなくなりましたが、リオンではなくオリヴィアを、と強くご所望ですから…ローランド王子は我が国との繋がり云々を越えて、オリヴィアを手にしたくなったのでしょう。まぁ、本人はジャポン皇国におりますし、陽彦さんとの手合わせに夢中のようですから…」
オリヴィアちゃんは芙蓉さんに心酔して、またすぐに青龍州に行ってしまった。芙蓉さんに華道や茶道を学びながら、「たおやかな女性になりたい」と言っていたのに、…なぜか陽彦さんに格闘術を学び続けているのである。たおやかさはどこに行ってしまうのか。
「とりあえず、その第2王子を徹底的に調べるのが先だ。ギデオン、頼めるか」
「お任せください」
そんなやり取りをして2週間後、チンピラの執務室は重苦しい雰囲気に包まれていた。
「…まさかハソックヒルの協力者だったとは」
悪魔の調べた内容は、驚くべきものだった。
アミノフィア国の国民がハソックヒルに奴隷にするために拐われている、と聞いたことがある。悪魔はその時、「アミノフィアの内部に、ハソックヒルの協力者…内通者がいるのではないか」と言っていたのだが。
「ハソックヒルの第1王子と組んで、自国の民を拐わせ奴隷に落とすなんて、何を考えてるの!?」
王妃陛下が珍しく声を荒げる。なんでもご実家で働いている使用人の娘が拐われて今も消息不明らしく、以前からこの事件に心を痛めていたのだ。
「そのルートを暴いて、しかもその罪を王太子に押し付け、彼を廃嫡、処刑し、自分が名実共に王太子になるという算段らしいです。正妃の手前王太子にできなかったものの、現在の国王は側妃を寵愛しており、第2王子が画策していることもある程度わかっているようですね。その上で目をつぶっている。お家事情で奴隷にされる国民はたまったものではありません…わたくしはアミノフィア国で王太子殿下に…イェーガー殿下に大層よくしていただきました。あの時はまだ『呪』がかかったままで、生きてるのに死んでいるような感じで、実際いつ死のうが構わないと思っていました。でも彼は、許してくれませんでした。わたくしが死ぬのを。おおらかに笑いながら、でも、けして許さなかった。…今のわたくしがいるのも、こうして幸せに生きていられるのも、彼がわたくしをこの世に繋ぎ止めてくれたおかげです。その恩人がむざむざ殺されるのは黙っていられません」
珍しく語気を荒げる悪魔に、チンピラも極悪な顔で頷く。
「だいたい、自分で後継だと認めていながら実は次男を王太子にしたかったんです~、なんてバカな話があるか。情けねぇクズだ。国民をなんだと思ってやがる、てめえらの勝手にできるおもちゃじゃねえんだぞ」
「僕たちもアミノフィア国で、イェーガー殿下にたいそうお世話になりました。それに引き換えあの第2王子は、挨拶もろくにせず我々を鼻で嗤うような性根の腐った人間です。あんなのを次期国王にするならば、母上の祖国とはいえキッパリ縁を切るべきだ」
ディーン王子の言葉にゼイン王子も眉をしかめ頷いている。そんな男にオリヴィアちゃんを嫁がせるわけにはいかない。
早々に断りの返答をした一ヶ月後、…私はハソックヒル国の第1王子が所有する地下牢に囚われていた。
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