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番外編~100年に一度の恋へ
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新年を迎える、日本で言えば大晦日の夜。王宮で、一年を締め括る挨拶を兼ねた晩餐を取っているところに、能天気な声が響いた。
「みなさん、ハッピーニューイヤー!…いやん、痛いっ!」
「陽彦、まだ年明けてない」
「仕方ないじゃない、時差ぼけよぅ!」
まったく、とブツブツ呟くのは、
「…龍彦さん?」
「ソフィアちゃん、あたしはこっちよう!あたしの方がキレイなのに、そんなのと間違えちゃイヤン!」
そう言われても目の前に立っている二人は、違いがわからないくらいにそっくりだ。
「はじめまして、貴女がソフィアちゃんね!お噂はかねがねぇ~!龍彦が言う通りかわいいわぁ~!」
「陽彦さん、フィーに近づきすぎです。腕を折りますよ、フィーに触れたりしたら」
「相変わらずギデオンちゃんは…初めて会ったのよ、龍彦だってしてるじゃない!」
「龍彦さんはもういいんです。お相手がいますから」
「ひどいっ!差別だわっ!」
シクシク泣き真似をする陽彦さんを茫然と見てるのは…私、だけ?みんな、何事もないように食事を続けている。和やかに。
「今日来られるとは思いませんでした」
悪魔の言葉に、龍彦さんがニンマリと微笑む。
「この3ヶ月で、かなり性根を叩き直したからねぇ~!セルーラン国に関してはかんっぺき、ジャポン皇国も、アミノフィアも完璧に仕上げたわよ。たった3ヶ月でできちゃうんだから、実力はあったのよねぇ、人生舐めきってただけで」
なんの話かわからず悪魔を見ると、
「フィー、今夜からは二人きりで寝ましょうね。許してくれますよね」
とニコニコしている。…何が?
その時、扉が静かに開いて、
「…オリヴィアちゃん?」
質素なワンピースに身を包み、しかし気品を感じさせる所作で部屋に入ってきたのは、あの日、連れていかれたオリヴィアちゃんだ。顔つきがまったく違っている。キリリとした眉に、澄んだピンクの瞳。
「皆様、我儘なわたくしのために大変ご迷惑をお掛け致しました。…お兄様、初めの一週間は呪い殺してやりたいほど憎みましたが、己の愚かさをきちんと自覚できました。こんなわたくしのために、ありがとうございました。ソルマーレ国のために、これからは力を尽くします。わたくしを、セルーラン国に送ってください」
オリヴィアちゃんを眩しそうな目で見つめた悪魔は、「気づいてくれて何よりです」と言うと、
「セルーラン国には人質で行くのではありませんよ、オリヴィア。あくまであちらから望まれていくのです。この3ヶ月の頑張りは龍彦さん、陽彦さんから報告を受けています。よく頑張りましたね。新しく、生まれ変わりましたね。さすがエヴァンス家の娘です」
悪魔の言葉に、オリヴィアちゃんの顔がくしゃりと歪み、…そのオリヴィアちゃんを、王妃陛下が抱き締めた。
「おかえりなさい、オリヴィア」
「…おかあさま…っ!おかあさま…っ!もうしわけ、ありませんでした…っ」
わんわん声を上げて泣くオリヴィアちゃんを、同じ様に涙を流しながら王妃陛下とチンピラが抱き締める。なにがなにやらわからないまま、私は悪魔に抱き上げられた。
「ギデオンさん、いったい、…んぅっ」
「フィー、今夜は、んっ、いいですよね、…はぁ…やっとフィーを抱ける…もっと、口づけさせてください」
ちゅ、ちゅ、と何度も唇を重ねてくる悪魔は、スルリと私の服を脱がせにかかる。
「ギデオンさん、ちょ、…んっ、ちょっと!ちゃんと話して、オリヴィアちゃんに何があったの!?」
「みなさん、ハッピーニューイヤー!…いやん、痛いっ!」
「陽彦、まだ年明けてない」
「仕方ないじゃない、時差ぼけよぅ!」
まったく、とブツブツ呟くのは、
「…龍彦さん?」
「ソフィアちゃん、あたしはこっちよう!あたしの方がキレイなのに、そんなのと間違えちゃイヤン!」
そう言われても目の前に立っている二人は、違いがわからないくらいにそっくりだ。
「はじめまして、貴女がソフィアちゃんね!お噂はかねがねぇ~!龍彦が言う通りかわいいわぁ~!」
「陽彦さん、フィーに近づきすぎです。腕を折りますよ、フィーに触れたりしたら」
「相変わらずギデオンちゃんは…初めて会ったのよ、龍彦だってしてるじゃない!」
「龍彦さんはもういいんです。お相手がいますから」
「ひどいっ!差別だわっ!」
シクシク泣き真似をする陽彦さんを茫然と見てるのは…私、だけ?みんな、何事もないように食事を続けている。和やかに。
「今日来られるとは思いませんでした」
悪魔の言葉に、龍彦さんがニンマリと微笑む。
「この3ヶ月で、かなり性根を叩き直したからねぇ~!セルーラン国に関してはかんっぺき、ジャポン皇国も、アミノフィアも完璧に仕上げたわよ。たった3ヶ月でできちゃうんだから、実力はあったのよねぇ、人生舐めきってただけで」
なんの話かわからず悪魔を見ると、
「フィー、今夜からは二人きりで寝ましょうね。許してくれますよね」
とニコニコしている。…何が?
その時、扉が静かに開いて、
「…オリヴィアちゃん?」
質素なワンピースに身を包み、しかし気品を感じさせる所作で部屋に入ってきたのは、あの日、連れていかれたオリヴィアちゃんだ。顔つきがまったく違っている。キリリとした眉に、澄んだピンクの瞳。
「皆様、我儘なわたくしのために大変ご迷惑をお掛け致しました。…お兄様、初めの一週間は呪い殺してやりたいほど憎みましたが、己の愚かさをきちんと自覚できました。こんなわたくしのために、ありがとうございました。ソルマーレ国のために、これからは力を尽くします。わたくしを、セルーラン国に送ってください」
オリヴィアちゃんを眩しそうな目で見つめた悪魔は、「気づいてくれて何よりです」と言うと、
「セルーラン国には人質で行くのではありませんよ、オリヴィア。あくまであちらから望まれていくのです。この3ヶ月の頑張りは龍彦さん、陽彦さんから報告を受けています。よく頑張りましたね。新しく、生まれ変わりましたね。さすがエヴァンス家の娘です」
悪魔の言葉に、オリヴィアちゃんの顔がくしゃりと歪み、…そのオリヴィアちゃんを、王妃陛下が抱き締めた。
「おかえりなさい、オリヴィア」
「…おかあさま…っ!おかあさま…っ!もうしわけ、ありませんでした…っ」
わんわん声を上げて泣くオリヴィアちゃんを、同じ様に涙を流しながら王妃陛下とチンピラが抱き締める。なにがなにやらわからないまま、私は悪魔に抱き上げられた。
「ギデオンさん、いったい、…んぅっ」
「フィー、今夜は、んっ、いいですよね、…はぁ…やっとフィーを抱ける…もっと、口づけさせてください」
ちゅ、ちゅ、と何度も唇を重ねてくる悪魔は、スルリと私の服を脱がせにかかる。
「ギデオンさん、ちょ、…んっ、ちょっと!ちゃんと話して、オリヴィアちゃんに何があったの!?」
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