お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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番外編~100年に一度の恋へ

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「…奴隷?」

「貴女はなんの利益も産まないただのゴミ…いや、周りの恩恵を享受して食らい尽くす寄生虫です。ゴミ以下だ。そんな貴女の利用価値なんてないでしょうが、その見た目があれば愛玩奴隷として高く売れるでしょう」

まさかの話に混乱する。奴隷?オリヴィアちゃんを?そんなまさか、

あわてて王妃陛下を見るが、凪いだ目でオリヴィアちゃんを見るだけだ。止める気配がまったくない。

「ギデオンさ、」

「フィー。もう決まったことです。アリスは正式にジルコニア家と婚約した。いくらセルーラン国王家でも、ジルコニア家から婚約者を取り上げることはできない…それだけの力を持つ家です。
そうなれば、打診されて出せるのはオリヴィアだけです。リオンもアリス同様婚約者がいますし、先ほどオリヴィア自身が言いました、王女はオリヴィアですから。
しかし父上が言ったように、こんな寄生虫を出したらソルマーレ国の恥です。穏便にお断りするには、オリヴィアが死んだことにするしかないのですよ」

オリヴィアちゃんから視線を外さずに話す悪魔の顔はよく見えない。オリヴィアちゃんは顔面蒼白の状態だ。

「い、や、です、」

「何がです?」

「奴隷なんてイヤです!」

「でも可愛がってもらえますよ。買い取った主人の要求に応えていさえすれば、オリヴィアが望む贅沢はさせてもらえるのでは?奴隷を買うくらいの資金がある人間なのですから」

…そんなことはないと思うが、悪魔のオーラが怖くて口を出せない。こんなこと、本当にいいのだろうか?こんなことを、本当にチンピラも王妃陛下も、…ふたりとも、了承したの?そのふたりに目を向けるが、まったく動く気配がない。奴隷に、なんて言葉が出ているのに、オリヴィアちゃんを助けようとしないふたりに驚きを隠せない。なんで?本当にいいの?

「大丈夫ですよ、躯はありませんが大々的に国葬を執り行いますから。公に死んだら、あとは自由にしてください。ソルマーレ国とは無関係の人間になるのですから。
奴隷はイヤだといいましたね、では何番にしますか」

オリヴィアちゃんは助けを求めるように周りを見るが、誰も声を上げないのを見て、自分の味方はおらず、このあまりにも破天荒な内容をみんなが受け入れているのだと思ったのだろう。私は悪魔が怖くて口を出せないだけで、こんな計画も知らなかったのだが。

「…何番も、イヤです」

「では奴隷で決まりです。…お願いします」

「え?…キャアッ!!!」

突然入ってきた覆面を被った人間に持ち上げられたオリヴィアちゃんは、もうひとりに縄で縛られ、更にもうひとりの持つ布袋に入れられた。くぐもった悲鳴が聞こえるが、そのまま3人は素早く出て行ってしまった。

「…ギデオンさんっ!」

「陛下、あとはお願いします。織部さん、明日また改めて」

「わかった」

私もオリヴィアちゃんのように悪魔に荷物のように抱えあげられ、部屋から連れ出される。レインもリオンもまったく動じていない。扉が閉まる。

「ギデオンさん、なんてことするの!?いくらなんでも、」

「じゃあフィーが面倒を見ますか?自分の娘の婚約者にちょっかいをかけて平気な義妹の面倒を生涯見ると?冗談じゃない。わたくしのフィーの時間を寄生虫には使わせませんよ」

「ギデオンさん…っ!降ろして、やだ!」

「やだ…?フィー、わたくしを拒絶するのですか?…そうですか。そろそろわたくしも我慢の限界でしたので…食事は部屋に運んでもらいましょうね、今夜は寝かせませんよ。オリヴィアのことなんて頭に浮かばないくらい、虐めてあげますからね…わからずやのフィーを」

冷たい声で宣言されて、背中がゾクリとする。久しぶりにヤバいやつだ。でも自分の妹を奴隷にするなんて、そんな非情なことするなんて、いくら常識がなくてもそんなことする人だなんて思いたくない。私の伴侶が、そんな人でなしだなんて…。

悪魔の肩に担がれていた私は、悪魔の顔を見ることはできなかった。この時の悪魔が、どんな顔をしていたのかを。
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