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番外編~100年に一度の恋へ
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「…さて、アリス。リオンが言った通りよ。貴女がオリヴィアの代わりにセルーラン国に嫁ぎますか?イアンさんではなく、セルーラン国王太子のローランド殿下に。イアンさんは貴女に譲歩して、ソルマーレ国に来ると言ってくれている。それを捨てて、オリヴィアが可哀想だから身代わりになりますか?」
「…私が間違っておりました。申し訳ありません」
王妃陛下に深々と頭を下げたアリスちゃんは、
「私より、レインとリオンの方がよほど冷静にオリヴィアを見ていますね」
と、ため息をついた。それを受けて悪魔が答える。
「それはあのふたりがオリヴィアの兄弟ではないからです。年は離れていなくても、あのふたりの叔母ですからね、オリヴィアは。父である私が言うのもなんですが、レインとリオンは毎日本当に努力しています。ふたりだから支えあい、励まし合えるのでしょうが、レインは将来国王として、リオンはレインを支える立場として何をするべきかを考えている。
アリス、貴女がわたくしを支えようと勉強しているように、」
「お兄様のためではありません。ソフィア様のためです。間違えられては困ります。そして、ソフィア様のために、ソルマーレ国をより良くしていきたいのです」
アリスちゃんの冷たい視線に悪魔はまったく動じることなく、「フィーはわたくしの妻ですから」と言ったあと、
「母上、アリスをフィーのご実家…ヘイワード公爵家を継がせてはどうでしょう。あのおふたりはフィー以外に子どももおらず、今までの自分たちを悔いて爵位並びに領地を返上したいと奏上がありましたよね」
そうなのだ。ソフィアの父と母は、ソフィアが王太子の婚約者になり、チンピラの中ではあのボンクラを公爵家の婿にする、と決まっていたけど、表向きは王太子妃、ゆくゆくは王妃になり家は継がないのに、なぜか後継ぎを作らなかったのである。
「爵位を返上するのは簡単だけど、今さら平民で生きていけるわけでもないから、隠居、って形にして、領地内に別宅を構えて生活してもらったらどうかしら。
イアンさんには申し訳ないけど、外国から来ていきなり公爵だと波紋を呼ぶから、アリスを女当主として立ててもいいかしら」
「僕はアリス様を妻にできるならば爵位や立場などどうでも。兄の時代になれば、そもそも爵位はない、ただの影でしかなくなるわけですから。…アリス様、僕を貴女の夫となること、赦してくださいますか」
イアンさんの言葉に、アリスちゃんは少し困ったような顔になると、
「赦す、とかではなくて…よろしく、お願いいたします。一度、セルーラン国のイアン様のご実家にも御挨拶に、」
「必要ありません、あちらから来させます。アリス様をセルーラン国に連れていくことはできません。…ローランド殿下に目をつけられたりしたらたまったものではない。貴女とオリヴィア様は、…母である王妃陛下の前でこんな言葉は不敬ですが、あえていいます。貴女とオリヴィア様ではダイアモンドと道端の石ころ並みに違う。輝きは、隠そうとしても無理なのです。僕はそんな危険を犯したくない。貴女は僕のものです」
真っ直ぐに見つめられ、アリスちゃんは顔を赤く染めると俯いた。
「そぉよねぇ、むざむざ宝物を見せてやる必要はないわよねぇ。さてさて、ソフィアちゃん、赤ちゃんたちに会わせてもらっていいかしらぁ?」
龍彦さん、まだいたんだ…気配消すのうまいな。
「ギデオンちゃん、名前はなんにしたの?」
「アーロンとザイオンです」
「ひゃー、かっわゆい!さすがソフィアちゃんの産んだ赤ちゃんだわねぇ」
「わたくしの種も」
「ギデオンちゃん、レインちゃんに殺されるわよぅ。お口はつぐんでおかないと⭐」
そんなこんなで赤ちゃんを堪能した龍彦さんは、渋る穂高君を抱えて帰っていった。リオンはなんとかお持ち帰りの罰を逃れることができたらしい。まだ涙目でアリスちゃんに抱きついていた。
怒濤の一日すぎて、夜中の授乳がツラいほど疲れた。
セルーラン国からの婚約の打診を聞いたオリヴィアちゃんは、「絶対に嫌だ」と拒否したと悪魔が淡々と語って聞かせた。
「父上が『嫁になんぞいかなくていい』なんてバカな発言をしていたせいで、オリヴィアが叫んでいましたよ。『お父様は私に嫁に行かなくていいといったくせに、嫁がせるどころか他国に追い出すというのですか!?』って。絶対に行きません、と宣言していました。オリヴィアは、本当に、自分の立場をわかっていないようです」
「…私が間違っておりました。申し訳ありません」
王妃陛下に深々と頭を下げたアリスちゃんは、
「私より、レインとリオンの方がよほど冷静にオリヴィアを見ていますね」
と、ため息をついた。それを受けて悪魔が答える。
「それはあのふたりがオリヴィアの兄弟ではないからです。年は離れていなくても、あのふたりの叔母ですからね、オリヴィアは。父である私が言うのもなんですが、レインとリオンは毎日本当に努力しています。ふたりだから支えあい、励まし合えるのでしょうが、レインは将来国王として、リオンはレインを支える立場として何をするべきかを考えている。
アリス、貴女がわたくしを支えようと勉強しているように、」
「お兄様のためではありません。ソフィア様のためです。間違えられては困ります。そして、ソフィア様のために、ソルマーレ国をより良くしていきたいのです」
アリスちゃんの冷たい視線に悪魔はまったく動じることなく、「フィーはわたくしの妻ですから」と言ったあと、
「母上、アリスをフィーのご実家…ヘイワード公爵家を継がせてはどうでしょう。あのおふたりはフィー以外に子どももおらず、今までの自分たちを悔いて爵位並びに領地を返上したいと奏上がありましたよね」
そうなのだ。ソフィアの父と母は、ソフィアが王太子の婚約者になり、チンピラの中ではあのボンクラを公爵家の婿にする、と決まっていたけど、表向きは王太子妃、ゆくゆくは王妃になり家は継がないのに、なぜか後継ぎを作らなかったのである。
「爵位を返上するのは簡単だけど、今さら平民で生きていけるわけでもないから、隠居、って形にして、領地内に別宅を構えて生活してもらったらどうかしら。
イアンさんには申し訳ないけど、外国から来ていきなり公爵だと波紋を呼ぶから、アリスを女当主として立ててもいいかしら」
「僕はアリス様を妻にできるならば爵位や立場などどうでも。兄の時代になれば、そもそも爵位はない、ただの影でしかなくなるわけですから。…アリス様、僕を貴女の夫となること、赦してくださいますか」
イアンさんの言葉に、アリスちゃんは少し困ったような顔になると、
「赦す、とかではなくて…よろしく、お願いいたします。一度、セルーラン国のイアン様のご実家にも御挨拶に、」
「必要ありません、あちらから来させます。アリス様をセルーラン国に連れていくことはできません。…ローランド殿下に目をつけられたりしたらたまったものではない。貴女とオリヴィア様は、…母である王妃陛下の前でこんな言葉は不敬ですが、あえていいます。貴女とオリヴィア様ではダイアモンドと道端の石ころ並みに違う。輝きは、隠そうとしても無理なのです。僕はそんな危険を犯したくない。貴女は僕のものです」
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