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番外編~レインとリオン
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「それが原因だとして、なんで出てきたんだろう?レインは、赤ちゃんの時から前世の記憶があったんでしょ?突然思い出したとかならわかるけど、なんでいきなり、」
「…俺が、彼女にしたことを、忘れるな、ってことなのかと。昨日母上の話を聞いたけど、俺は何にも間違ってない、俺は悪くなんかない、って思ってます、今も、そう思ってます、だけど、俺がそう思っているだけで、本当はそうじゃなくて、彼女はもう死んでしまって、俺はもう彼女の気持ちを確かめることができない、俺が彼女を嫌っているって思っていたのかどうか、確かめることなんてできない、だって、だって、」
レインの瞳からボタボタと涙が零れ落ちる。思わず胸に抱き込み、頭をそっと撫でる。我が子に泣かれるのがこんなにツラいなんて。一緒になって、涙が出てきてしまう。
「母上、俺はどうすればいいんですか。こんな紋様、出てたって痛くも痒くもない、気持ち悪いって言われるなら、母上には申し訳ないですが一生独身だって構いません。だけど、だけど、これは、これは俺に対する罰なのだとしたら、俺は彼女にどうやって償えばいいんですか、もう死んじゃって、いなくなっちゃったんです、なんにも、なんにも伝えてないのに、イヤなことばっかり言って、…酷いこともしました、きっと俺のことを心の底から憎んでる、生きててくれれば、どうにでもできたのに、彼女は、いなくなっちゃったんです、…俺を見捨てたんだ。俺を、俺を捨てて、いなくなった、俺から逃げたんだ!許せない、許せない、許せない!逃げるなんて、死んで逃げるなんて…っ!!」
レインは私の腕から抜け出すと、グッ、と首に手を当てた。3歳児とは思えないすごい力だ。涙に濡れた瞳は、焦点が合っていない。
その時、凄い音がして、悪魔が中に入ってきた。
「なにを…レイン!今すぐ母上から手を離しなさい!」
「ギデオンさ、…ダメ、」
「フィー?」
レインに掴み掛かろうとする悪魔になんとか呼び掛ける。私の首を締めつけるレインの手をそっと撫でる。何度も、何度も撫でるうち、レインの瞳に光が戻った。
「…母上っ」
手を離されて空気が急に入ったせいか、激しくむせり咳が止まらない。涙がボロボロ出てきて視界が霞んでくる。
「は、母上、…母上っ」
泣きながら抱きついてくるレインの背中に手を回すと、そのまま悪魔に抱き上げられた。
「いったい何なんです…何なんですか!ふたりとも、来なさい!」
来なさい、と言いながら悪魔は私たちふたりを抱いたまま凄い速さで歩いていく。レインは私にしがみついたまま、「母上、母上、」と泣きながら繰り返す。
「大丈夫だよ、」
「大丈夫じゃありません!フィー、わたくしを置いて死ぬつもりだったのですか!?いくら我が子だからと、そんなこと絶対に許しませんよ、いったい何でこんなことになっているのかキッチリ説明するまでふたりとも離宮からは出しません!スティーブ先輩、馬車を準備してください!」
自分の近衛騎士になったスティーブさんを、未だにスティーブ先輩と呼ぶ悪魔にほっこりしながら、だんだん意識が遠退いていく。
「母上っ」
「…フィー!」
大丈夫、と言いたいのに、私の口は言葉を紡げなかった。
「…俺が、彼女にしたことを、忘れるな、ってことなのかと。昨日母上の話を聞いたけど、俺は何にも間違ってない、俺は悪くなんかない、って思ってます、今も、そう思ってます、だけど、俺がそう思っているだけで、本当はそうじゃなくて、彼女はもう死んでしまって、俺はもう彼女の気持ちを確かめることができない、俺が彼女を嫌っているって思っていたのかどうか、確かめることなんてできない、だって、だって、」
レインの瞳からボタボタと涙が零れ落ちる。思わず胸に抱き込み、頭をそっと撫でる。我が子に泣かれるのがこんなにツラいなんて。一緒になって、涙が出てきてしまう。
「母上、俺はどうすればいいんですか。こんな紋様、出てたって痛くも痒くもない、気持ち悪いって言われるなら、母上には申し訳ないですが一生独身だって構いません。だけど、だけど、これは、これは俺に対する罰なのだとしたら、俺は彼女にどうやって償えばいいんですか、もう死んじゃって、いなくなっちゃったんです、なんにも、なんにも伝えてないのに、イヤなことばっかり言って、…酷いこともしました、きっと俺のことを心の底から憎んでる、生きててくれれば、どうにでもできたのに、彼女は、いなくなっちゃったんです、…俺を見捨てたんだ。俺を、俺を捨てて、いなくなった、俺から逃げたんだ!許せない、許せない、許せない!逃げるなんて、死んで逃げるなんて…っ!!」
レインは私の腕から抜け出すと、グッ、と首に手を当てた。3歳児とは思えないすごい力だ。涙に濡れた瞳は、焦点が合っていない。
その時、凄い音がして、悪魔が中に入ってきた。
「なにを…レイン!今すぐ母上から手を離しなさい!」
「ギデオンさ、…ダメ、」
「フィー?」
レインに掴み掛かろうとする悪魔になんとか呼び掛ける。私の首を締めつけるレインの手をそっと撫でる。何度も、何度も撫でるうち、レインの瞳に光が戻った。
「…母上っ」
手を離されて空気が急に入ったせいか、激しくむせり咳が止まらない。涙がボロボロ出てきて視界が霞んでくる。
「は、母上、…母上っ」
泣きながら抱きついてくるレインの背中に手を回すと、そのまま悪魔に抱き上げられた。
「いったい何なんです…何なんですか!ふたりとも、来なさい!」
来なさい、と言いながら悪魔は私たちふたりを抱いたまま凄い速さで歩いていく。レインは私にしがみついたまま、「母上、母上、」と泣きながら繰り返す。
「大丈夫だよ、」
「大丈夫じゃありません!フィー、わたくしを置いて死ぬつもりだったのですか!?いくら我が子だからと、そんなこと絶対に許しませんよ、いったい何でこんなことになっているのかキッチリ説明するまでふたりとも離宮からは出しません!スティーブ先輩、馬車を準備してください!」
自分の近衛騎士になったスティーブさんを、未だにスティーブ先輩と呼ぶ悪魔にほっこりしながら、だんだん意識が遠退いていく。
「母上っ」
「…フィー!」
大丈夫、と言いたいのに、私の口は言葉を紡げなかった。
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