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番外編~レインとリオン
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「フィー、この子たちはもうわたくしが父だとわかるのでしょうか?とても熱心にわたくしを見ています…ああ、可愛い…フィーと同じくらいに可愛いです…あ、もちろん一番可愛いのはフィーですよ、これは揺るぎない事実です」
そう言うと、悪魔はニコニコしながら私に口づけた。
「…いや、まだじゃないかな。生まれたばっかりだし。まだよく見えないと思うけど」
子作りをする、と決めてから悪魔がせっせと励んでくれたため、ほどなく私は妊娠し、ソルマーレ暦1582年10月3日に無事子どもを出産した。なんと男の子と女の子の双子の赤ちゃん。悪魔はもちろんだが、ディーン王子、ゼイン王子もなぜか大喜びだった。
「ソフィア様が初めて産んだ子どもが…我々の甥、姪が、我々と同じ双子だなんて…!これはもう運命としか言い様がありません!」
…なんだかだんだん悪魔と同化してウザくなってきているのは気のせいなのだろうか。気のせいだと思いたい。
双子王子は学園を卒業後、予定通りアミノフィア国の海軍養成学校に留学したのだが、私の出産予定日が近づいたある日、ふたり揃って帰国した。
「大事なソフィア様の出産ですから、是非にも立ち会わなくてはなりません」
…双子王子は私の夫ではないし、このお腹の子どもたちの父親ではないはずなのだが。理由がよくわからないが、帰ってきてしまったものは仕方がない。チンピラにも許可を得ているそうなので特に私が言うこともないだろう。楽しみにしてもらえているのかと思うとなんとなく嬉しくもあったのだが、悪魔はひとり不貞腐れていた。
「わたくしとフィーの子どもなのに、父上、母上、ディーン、ゼイン、アリス、オリヴィア、みんながみんな関わりすぎです!わたくしのフィーなのに!離宮に閉じ籠りたい」
「あのさ、ギデオンさん、初めての出産なんだし、ありがたいでしょ?みんな楽しみにしてくれてるんだから、」
「だって!父上なんて、勝手に『名前の候補』なんて王宮に貼り出して、自分が名付け親になろうとしてるし、母上、アリス、オリヴィアは産着を勝手に揃えてしまうし、ディーンとゼインはベビーベッドを買ってきてしまうし、わたくしがすべてやりたかったのに、」
名前を勝手に決めようとしているのは初耳だ。私はいまいちこの世界での名付けに自信がないから悪魔に決めてもらおうと思っていたのでどちらでも構わないのだが。
「でも、ギデオンさん、たくさん勉強してくれたじゃない。妊娠、出産について。すごく心強いよ、私も前世含めて初めての出産だから」
褒めたつもりだったのだが、悪魔はまた不貞腐れた顔になった。
「…『言われた通りに出しちゃうもん』で、織部さんがたくさん本を送ってくださったのに…アリスにほとんど取られてしまいました…」
そうなのだ。何気なく、ぼんやりとした内容で話した生理の話がアリスちゃんの心に残ったらしく、今年7歳になるアリスちゃんは織部さんが送ってくれた妊娠、出産についての本をそれはそれは熱心に読み込んでいた。早すぎるのではないかと思ったのだが、王妃様が
「興味を持ったことを学ぶのに、早いも何もないわ。これで『性交したい』なんて言い出したら問題だけど、純粋な学問として学んでいるのだし、自分がいつかは通る道を目の前で実際に見れるのはとても素晴らしいことよ。ありがとう、ソフィアちゃん」
と言ってくれたので、私もそのまま見守ることにした。悪魔はたいそう不満そうだったが。
「ソフィア様のお腹の中の赤ちゃんは、いま、このくらいなのですね。たくさん声をかけてあげるといいそうです。お兄様、名前は決めたのですか。名前で呼び掛けてあげたほうがよりいいと思いますが」
「わたくしは、赤ちゃんの顔を見てから決めます。アリスにご心配いただかなくても結構です」
相変わらず大人気のない悪魔である。
アリスちゃんは悪魔を気にすることなく、自分の話をしたり、天気の話をしたり、絵本を読んでくれたり、たくさんたくさん声をかけ続けてくれた。そのせいなのか、アリスちゃんの声がすると、「いるよ」と教えるようにお腹を蹴るようになった。
「ソフィア様、嬉しいです。私を叔母だと認めてくれたみたいです。早く出ておいで、叔母さんがたくさん遊んであげますからね」
アリスちゃんは満面の笑みでお腹に手を当て話しかけ、その度にお腹がポコン、となった。
「アリスちゃん、まだ7歳なんだから叔母さんじゃなくてアリス様って呼ばせようよ」
「そうですか?名前で呼んでもらえたらもっと嬉しいです」
ニコニコふたりで笑っていると、いきなり悪魔が割り込んできた。
「わたくしは、わたくしは、なんて呼ばせればいいですか、フィー、」
「お父様でしょ」
「そんな…!もっと考えてください!」
…父じゃなくなろうとしているのだろうか?まさか「悪魔」と呼ばせるわけにいかないだろうし。
騒ぐ悪魔を意に介することなく、お腹はどんどん大きくなり、こうして無事に産むことができた。悪魔も大号泣だったが、チンピラも大号泣だった。
「…ギデオンの子どもができるとは…ソフィア、ほんとにありがとよ。おまえがここに来てくれたお陰だ…」
そして双子の赤ちゃんは、男の子がレイン、女の子がリオンと名付けられた。
そう言うと、悪魔はニコニコしながら私に口づけた。
「…いや、まだじゃないかな。生まれたばっかりだし。まだよく見えないと思うけど」
子作りをする、と決めてから悪魔がせっせと励んでくれたため、ほどなく私は妊娠し、ソルマーレ暦1582年10月3日に無事子どもを出産した。なんと男の子と女の子の双子の赤ちゃん。悪魔はもちろんだが、ディーン王子、ゼイン王子もなぜか大喜びだった。
「ソフィア様が初めて産んだ子どもが…我々の甥、姪が、我々と同じ双子だなんて…!これはもう運命としか言い様がありません!」
…なんだかだんだん悪魔と同化してウザくなってきているのは気のせいなのだろうか。気のせいだと思いたい。
双子王子は学園を卒業後、予定通りアミノフィア国の海軍養成学校に留学したのだが、私の出産予定日が近づいたある日、ふたり揃って帰国した。
「大事なソフィア様の出産ですから、是非にも立ち会わなくてはなりません」
…双子王子は私の夫ではないし、このお腹の子どもたちの父親ではないはずなのだが。理由がよくわからないが、帰ってきてしまったものは仕方がない。チンピラにも許可を得ているそうなので特に私が言うこともないだろう。楽しみにしてもらえているのかと思うとなんとなく嬉しくもあったのだが、悪魔はひとり不貞腐れていた。
「わたくしとフィーの子どもなのに、父上、母上、ディーン、ゼイン、アリス、オリヴィア、みんながみんな関わりすぎです!わたくしのフィーなのに!離宮に閉じ籠りたい」
「あのさ、ギデオンさん、初めての出産なんだし、ありがたいでしょ?みんな楽しみにしてくれてるんだから、」
「だって!父上なんて、勝手に『名前の候補』なんて王宮に貼り出して、自分が名付け親になろうとしてるし、母上、アリス、オリヴィアは産着を勝手に揃えてしまうし、ディーンとゼインはベビーベッドを買ってきてしまうし、わたくしがすべてやりたかったのに、」
名前を勝手に決めようとしているのは初耳だ。私はいまいちこの世界での名付けに自信がないから悪魔に決めてもらおうと思っていたのでどちらでも構わないのだが。
「でも、ギデオンさん、たくさん勉強してくれたじゃない。妊娠、出産について。すごく心強いよ、私も前世含めて初めての出産だから」
褒めたつもりだったのだが、悪魔はまた不貞腐れた顔になった。
「…『言われた通りに出しちゃうもん』で、織部さんがたくさん本を送ってくださったのに…アリスにほとんど取られてしまいました…」
そうなのだ。何気なく、ぼんやりとした内容で話した生理の話がアリスちゃんの心に残ったらしく、今年7歳になるアリスちゃんは織部さんが送ってくれた妊娠、出産についての本をそれはそれは熱心に読み込んでいた。早すぎるのではないかと思ったのだが、王妃様が
「興味を持ったことを学ぶのに、早いも何もないわ。これで『性交したい』なんて言い出したら問題だけど、純粋な学問として学んでいるのだし、自分がいつかは通る道を目の前で実際に見れるのはとても素晴らしいことよ。ありがとう、ソフィアちゃん」
と言ってくれたので、私もそのまま見守ることにした。悪魔はたいそう不満そうだったが。
「ソフィア様のお腹の中の赤ちゃんは、いま、このくらいなのですね。たくさん声をかけてあげるといいそうです。お兄様、名前は決めたのですか。名前で呼び掛けてあげたほうがよりいいと思いますが」
「わたくしは、赤ちゃんの顔を見てから決めます。アリスにご心配いただかなくても結構です」
相変わらず大人気のない悪魔である。
アリスちゃんは悪魔を気にすることなく、自分の話をしたり、天気の話をしたり、絵本を読んでくれたり、たくさんたくさん声をかけ続けてくれた。そのせいなのか、アリスちゃんの声がすると、「いるよ」と教えるようにお腹を蹴るようになった。
「ソフィア様、嬉しいです。私を叔母だと認めてくれたみたいです。早く出ておいで、叔母さんがたくさん遊んであげますからね」
アリスちゃんは満面の笑みでお腹に手を当て話しかけ、その度にお腹がポコン、となった。
「アリスちゃん、まだ7歳なんだから叔母さんじゃなくてアリス様って呼ばせようよ」
「そうですか?名前で呼んでもらえたらもっと嬉しいです」
ニコニコふたりで笑っていると、いきなり悪魔が割り込んできた。
「わたくしは、わたくしは、なんて呼ばせればいいですか、フィー、」
「お父様でしょ」
「そんな…!もっと考えてください!」
…父じゃなくなろうとしているのだろうか?まさか「悪魔」と呼ばせるわけにいかないだろうし。
騒ぐ悪魔を意に介することなく、お腹はどんどん大きくなり、こうして無事に産むことができた。悪魔も大号泣だったが、チンピラも大号泣だった。
「…ギデオンの子どもができるとは…ソフィア、ほんとにありがとよ。おまえがここに来てくれたお陰だ…」
そして双子の赤ちゃんは、男の子がレイン、女の子がリオンと名付けられた。
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