お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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番外編~結婚生活編

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撫子さんは、チンピラとともにアリスちゃんを連れてきた。

「ソフィアさまー」

「アリスちゃん!」

ギュウッと抱き合う私たちを引き剥がした悪魔は、

「なぜアリスまで来たのです」

と冷たく睨み付ける。大人気ない…!

アリスちゃんも冷たい視線を悪魔に向けると、

「おにいさまにあいにきたのではありません。はなしかけないでください」

…なんで敵対心剥き出しなんだろう。

アリスちゃんは英樹さんの前に行くと、一転した笑顔で

「アリス・エヴァンスともうします。おめにかかれてこうえいです、こうていへいか」

とキレイにお辞儀をした。英樹さんはもうメロメロだ。

「可愛い!なんて可愛いんだ!わたくしは男しか子どもがいなかったので…ラインハルト様、羨ましい限りです」

「いやー、それほどでもあります」

チンピラも嬉しそうだ。アリスちゃんもオリヴィアちゃんも可愛いもんね。我がことのように私も自慢したい。

「今、藍原、近江の家長も呼びに行っております。ギデオン様、我が家は…片桐家は、橘が家長になりました。親世代は別邸に移りましたので。お姉さま、ローズマリーさんがいろいろと面倒をみてくれているのです。お料理も上手で…」

あ、ミューズ!そうだ、撫子さんの実家でお世話になる、って言ってたんだ。

「彼女、元気ですか」

「ええ。明るいし真面目だし…樒兄とともに役所で働いているんですよ。彼女が来てから、この部落も華やぎました。来てくれて感謝しかありません」

そうか、良かった。ぜひにも会いたい。

そうこうしているうちに関係者が集まり、私はアリスちゃんと遊んで待つことにした。

「ソフィアさま、あえてうれしいです。すぐにかえらなくてはなりませんが…」

しゅん、とするアリスちゃんに、

「アリスちゃん、これ、私からのプレゼントなんだよ。開けてみて」

浴衣を見て目を輝かせるアリスちゃんに着付けてあげると、それはそれは可愛らしい。

「かわいいです、これはなんというふくですか」

「浴衣っていうんだよ」

「ソフィアさま、ありがとうございます!たいせつにしますね!」

ニコニコしてくれて良かった。

「オリヴィアちゃんのもあるから、渡してくれるかな?」

「はい!ヴィアもきたかったのですが、おかあさまにダメだといわれてないていました。ソフィアさまからのおくりものをみたら、きっとよろこぶとおもいます。ソフィアさまは、いつかえってきてくれるのですか。おにいさまがいやならおいだします」

「フィーは、わたくしが好きなのです!そしてフィーは、わたくしの妻です!勝手なことを言わないでください!」

「ギデオンさん、話し終わったの?」

悪魔はアリスちゃんから私を引き剥がすと、自分の腕に抱き込んだ。

「おにいさま!ソフィアさまがいやがっています!」

「嫌がっていません!」

「おい、ギデオン。おめえ、なんでいるんだ。船に乗ってるはずじゃねえのか」

「手紙を出しました。それに、ひとつ商談をまとめたのはわたくしですよ。わたくしがフィーの隣にいたおかげです」

どや顔で言ってるが、なんか違うのでは…?

「まあ確かに、大したもんだ。ソルマーレの今後のために必要なことだし、ジャポン皇国の海軍創設を手伝うことでより関係性も強固になる。ディーンとゼインは、目標が変わったから夏休みの間はアミノフィア国に行って陸軍学校に短期留学するとよ。イングリットの実家で世話になるだろう。明日の船で帰国するから、おめえもそれで帰ってこい」

「フィーも帰りますよね」

…え?

「まだロイドさんに会ってないし、白虎州に行って伽藍さんの様子を見たいからまだ帰らないよ」

「なんですって?ひとりでなんてダメですよ!」

するとチンピラが、

「ソフィアには、玄武州知事が護衛を付けてくれるから心配ない」

「お断りします。わたくしがフィーを守ります」

「おめえは帰るんだ!」

ギャーギャー騒ぐふたりをどうしようかと困惑していると、

「ソフィアさん、挨拶が遅れてすみません」

と蘇芳さんがやってきた。

「お邪魔してま」

「蘇芳さん、わたくしのフィーに護衛など、なぜ勝手に決めるのですか、葬りますよ」

「ギデオンさん!?」

すると、「まー、噂通りお妃様にぞっこんなのね!うちの蘇芳ちゃんと同じ!」という声が聞こえてきた。

振り返ると、そこには悪魔と同じくらいの身長の、ガタイのいい美女が立っていた。

蘇芳さんは「ギデオンさん、ちょっと落ち着いてください…!まだ根に持ってるんですか、僕はソフィアさんを抱いたりしてませんから!」と心底焦りきっている。

美女は、そんな蘇芳さんに目もくれず私の前に来ると、スッと手を差し出した。

「ソルマーレ国王太子妃のソフィアちゃんね。あたしは、眞島龍彦っていうの。ソフィアちゃんのことはあたしが守るから安心してね☆」

バチッ、とウインクされたが、

「…眞島、龍彦さん?」

「そうよお。たっつん、って呼んで!今夜から一緒に寝ましょうね!可愛いわあ~」

握手した手もよく見るとゴツイ。

「フィーと一緒に寝るのはわたくしです!」

「大丈夫よ、ギデオンちゃん。あたし、女の子には興味ないから~。もちろん、お相手が決まってる人にも興味ないの。ソフィアちゃんはあたしが責任を持って守るから安心して国にお帰りなさい☆…撫子ちゃん!」

撫子さんは駆け寄ってくると、「申し訳ありません、ギデオン様」と言って、チンピラの方に悪魔を押した。チンピラがすかさかず悪魔を拘束する。撫子さんがアリスちゃんを抱き上げると、足元に淡い光が生まれる。

「な…っ、離してください、父上!」

「バイバーイっ☆」

龍彦さんの投げキッスとともに、4人の姿がフッと消えた。
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