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番外編~結婚生活編
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お風呂から上がってきた悪魔はカタログを熱心に見ている。
「素晴らしい…。こんなものが存在するとは…、フィー、フィーはどれだったら着てくれますか?これとかどうですか、透けていませんし」
「ギデオンさん、透けてないどころか、丸見えなんだけど、あちこちが…」
フィーは難しいですねぇ、と困ったように呟かれても…難易度が高すぎる、と言った私の話を理解しなかったのだろうか。
「織部さんは、これがそそられる、って言ってたよ」
「さすが織部さんです」
さすが、という言葉の使い方を間違っていると思う。
「ディーン様とゼイン様も見たいって言ってたから、呼んでこようか?」
せっかく悪魔がいるんだし、直接意見をきかせてもらったらいいのでは、と思っていたら、グイッと腕を掴まれ胸に抱き込まれた。
「お風呂上がりのフィーを見せたくありません。わたくしがいないときも、ダメですよ、フィー。危機感を持ってください。いいですか」
久々に怖い悪魔が出てきて、ブンブン頷く。たまにドS悪魔が降臨するのだ。そんな心配する必要ないと思うんだけど、素直に従うことにする。
「ふたりには明日見せます。…わたくしも、やっぱり一緒に玄武州に行きます、フィー。橘さんにも改めてお礼を言いたいですし」
「でも陛下に怒られると思う…」
「友好国と親交を深めるのも立派な公務です」
屁理屈だとは思うけど、確かに橘さんのお陰で呪いが解けたのだから、改めてお礼をするのは大事かもしれないな。
「こんなこともあろうかと、手土産も準備してきましたから」
…最初から計画していたと勘ぐられても仕方ないくらいに手際が良すぎるのでは。双子王子がなんていうかわからないけど、明日相談してみよう。
その夜悪魔は、私に何度も口づけて、絡み付きながら眠った。前夜眠れなかったと言うだけあって、寝落ちがとても早かった。
次の日、英樹さんたちに改めてお礼を言って、みんなで食事をする。
「やっぱり来たか、ギデオンさん」
織部さんはニヤニヤしながら私と悪魔を交互に見ている。悪魔は嬉しそうに「はい」なんて言ってるけど…揶揄われてるの気づかないのかな。
「藤乃さん、体調どう?お腹、大きくなったね」
「ソフィア様、お会いできて嬉しいです。お陰さまで、つわりもあまりひどくなく…今は、早く赤ちゃんに会いたい気持ちが半分、初めての出産なので怖さ半分です」
織部さんは藤乃さんの手をそっと握ると、
「藤乃、大丈夫だ。俺がついてる。心配事があれば隠さずなんでも言ってくれ」
と微笑んだ。相変わらずの溺愛っぷりだ。
「明日から、まずは玄武州に行くのよね、ソフィアさん」
「はい。ロイドさんからご招待いただいたので、最初に玄武州に行こうかと。呪いの件でのお礼もあるので、撫子さんのご実家にもお邪魔するつもりです」
早苗さんはひとつ頷くと、
「佐々木の店もだいぶ繁盛しているみたいで、蘇芳も喜んでたわ。ぜひ、行ってあげて」
「そういえば、指輪の売れ行きは、いかがでしょうか…」
「各州で結構開きがある感じだな。うちと蘇芳兄さんのとこは、指輪をつけてるカップルが増えてきてる。特に玄武州は特別区があるだろ?あそこでかなり爆発的に人気みたいだな。店長さんが本場の人だから、うちの州からも研修に行かせたんだ。すごく勉強になった、って喜んでたよ」
良かった、ロイドさんもお仕事頑張ってるんだ。店長さんだもんなあ…。
「ところでギデオンさん」
英樹さんが悪魔に視線を移す。
「なんでしょう」
「昨夜、弟さんからお聞きしたのですが、アミノフィア国というところで海軍について学んで来られるそうですね、弟さんたちは」
「はい。ソルマーレ国には海軍がありませんし、わたくしはフィーのそばを離れたくないのでふたりに行ってもらうことにしたのです。どちらかひとりでいいと言ったのですが、ディーンは陸軍、ゼインは海軍についてしっかり学んできてくれるそうなので。アミノフィア国は我々の母の出身地なので、より結び付きを強固にしていくつもりです」
英樹さんは黙って聞いていたが、
「我々ジャポン皇国も、アミノフィア国と国交を開きたいと考えているのです」
「国交ですか…今まで300年の歴史がある中で、この2年で2国と開いたわけですが、更に門戸を開くということですか」
悪魔の言葉に頷いた英樹さんは、
「ソルマーレ国で海軍を発足させるとお聞きして、我が国も…防衛を高める必要性があると感じまして。できれば、縁を結んでいただけないかと…」
「もちろんです!喜んでお手伝いいたします!」
食いぎみに答える悪魔に呆気にとられていると、
「では話し合いもありますし、わたくしもしばらくこちらに滞在させていただきます。公務ですからね、仕方がありませんからね、さっそく父に手紙を書いて参りますので、一度失礼いたします」
と颯爽と出ていった。
「さすが、ギデオンさん。行動の基準はすべてソフィアさん第一だな」
織部さんの呟きに、私以外の全員が深く頷いた。いいのかなあ、滞在勝手に決めちゃって…。チンピラの怒り狂う様が目に浮かぶようだ。
「素晴らしい…。こんなものが存在するとは…、フィー、フィーはどれだったら着てくれますか?これとかどうですか、透けていませんし」
「ギデオンさん、透けてないどころか、丸見えなんだけど、あちこちが…」
フィーは難しいですねぇ、と困ったように呟かれても…難易度が高すぎる、と言った私の話を理解しなかったのだろうか。
「織部さんは、これがそそられる、って言ってたよ」
「さすが織部さんです」
さすが、という言葉の使い方を間違っていると思う。
「ディーン様とゼイン様も見たいって言ってたから、呼んでこようか?」
せっかく悪魔がいるんだし、直接意見をきかせてもらったらいいのでは、と思っていたら、グイッと腕を掴まれ胸に抱き込まれた。
「お風呂上がりのフィーを見せたくありません。わたくしがいないときも、ダメですよ、フィー。危機感を持ってください。いいですか」
久々に怖い悪魔が出てきて、ブンブン頷く。たまにドS悪魔が降臨するのだ。そんな心配する必要ないと思うんだけど、素直に従うことにする。
「ふたりには明日見せます。…わたくしも、やっぱり一緒に玄武州に行きます、フィー。橘さんにも改めてお礼を言いたいですし」
「でも陛下に怒られると思う…」
「友好国と親交を深めるのも立派な公務です」
屁理屈だとは思うけど、確かに橘さんのお陰で呪いが解けたのだから、改めてお礼をするのは大事かもしれないな。
「こんなこともあろうかと、手土産も準備してきましたから」
…最初から計画していたと勘ぐられても仕方ないくらいに手際が良すぎるのでは。双子王子がなんていうかわからないけど、明日相談してみよう。
その夜悪魔は、私に何度も口づけて、絡み付きながら眠った。前夜眠れなかったと言うだけあって、寝落ちがとても早かった。
次の日、英樹さんたちに改めてお礼を言って、みんなで食事をする。
「やっぱり来たか、ギデオンさん」
織部さんはニヤニヤしながら私と悪魔を交互に見ている。悪魔は嬉しそうに「はい」なんて言ってるけど…揶揄われてるの気づかないのかな。
「藤乃さん、体調どう?お腹、大きくなったね」
「ソフィア様、お会いできて嬉しいです。お陰さまで、つわりもあまりひどくなく…今は、早く赤ちゃんに会いたい気持ちが半分、初めての出産なので怖さ半分です」
織部さんは藤乃さんの手をそっと握ると、
「藤乃、大丈夫だ。俺がついてる。心配事があれば隠さずなんでも言ってくれ」
と微笑んだ。相変わらずの溺愛っぷりだ。
「明日から、まずは玄武州に行くのよね、ソフィアさん」
「はい。ロイドさんからご招待いただいたので、最初に玄武州に行こうかと。呪いの件でのお礼もあるので、撫子さんのご実家にもお邪魔するつもりです」
早苗さんはひとつ頷くと、
「佐々木の店もだいぶ繁盛しているみたいで、蘇芳も喜んでたわ。ぜひ、行ってあげて」
「そういえば、指輪の売れ行きは、いかがでしょうか…」
「各州で結構開きがある感じだな。うちと蘇芳兄さんのとこは、指輪をつけてるカップルが増えてきてる。特に玄武州は特別区があるだろ?あそこでかなり爆発的に人気みたいだな。店長さんが本場の人だから、うちの州からも研修に行かせたんだ。すごく勉強になった、って喜んでたよ」
良かった、ロイドさんもお仕事頑張ってるんだ。店長さんだもんなあ…。
「ところでギデオンさん」
英樹さんが悪魔に視線を移す。
「なんでしょう」
「昨夜、弟さんからお聞きしたのですが、アミノフィア国というところで海軍について学んで来られるそうですね、弟さんたちは」
「はい。ソルマーレ国には海軍がありませんし、わたくしはフィーのそばを離れたくないのでふたりに行ってもらうことにしたのです。どちらかひとりでいいと言ったのですが、ディーンは陸軍、ゼインは海軍についてしっかり学んできてくれるそうなので。アミノフィア国は我々の母の出身地なので、より結び付きを強固にしていくつもりです」
英樹さんは黙って聞いていたが、
「我々ジャポン皇国も、アミノフィア国と国交を開きたいと考えているのです」
「国交ですか…今まで300年の歴史がある中で、この2年で2国と開いたわけですが、更に門戸を開くということですか」
悪魔の言葉に頷いた英樹さんは、
「ソルマーレ国で海軍を発足させるとお聞きして、我が国も…防衛を高める必要性があると感じまして。できれば、縁を結んでいただけないかと…」
「もちろんです!喜んでお手伝いいたします!」
食いぎみに答える悪魔に呆気にとられていると、
「では話し合いもありますし、わたくしもしばらくこちらに滞在させていただきます。公務ですからね、仕方がありませんからね、さっそく父に手紙を書いて参りますので、一度失礼いたします」
と颯爽と出ていった。
「さすが、ギデオンさん。行動の基準はすべてソフィアさん第一だな」
織部さんの呟きに、私以外の全員が深く頷いた。いいのかなあ、滞在勝手に決めちゃって…。チンピラの怒り狂う様が目に浮かぶようだ。
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