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番外編~結婚生活編
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「そういえばソフィアさん、結婚式はまだ挙げていらっしゃらないわよね?いつ頃の予定なの?」
早苗さんに聞かれるが、まだはっきりしてないから答えようがない。なんて言えばいいだろう、と悩んでいると、
「兄上が仰っていましたが、来年3月に挙式ですよね?僕たちがジャポン皇国に留学する前にすると…ぜひ参加してもらいたいからと言ってくださってましたが…違いました、か…?」
私からなんの反応もないのを見て、ゼイン王子の言葉がだんだん尻窄みになる。
「いえ、あの…すみません。伽藍さんと藤乃さんの赤ちゃんが生まれて、少し落ち着いてから、来年、暖かくなってから、とは言われていたのですが、…具体的には、聞いてなくて…」
「まさか…兄上、勝手に決めてしまったのでしょうか、ソフィア様に相談もなしに…」
ディーン王子の顔が厳しくなる。今まで見たことのない顔だ。
「いえ、あの…すみません」
「ソフィア様が謝ることではありません。陛下、あの…以前、ソフィア様がジャポン皇国に来ることになった日、ソルマーレ国に女性とともにいらっしゃいましたよね。あの時、父上に『転移魔術』とご説明されていたと思うのですが、それで僕たちふたりをソルマーレ国に送っていただくことは可能ですか?」
英樹さんが早苗さんに目配せすると、早苗さんがスッと立ち上がって出ていった。ディーン王子だけでなく、ゼイン王子、英樹さんからも怒気が膨れ上がっているように見えるのは…なぜなのか…。
「ソフィアさん、とりあえず、今日はお疲れでしょうしお部屋でゆっくり休んでください。何か必要なものがあれば届けます」
「ソフィア様、ありがとうございます。ではまた明日」
英樹さんと双子王子に追い出されるようにして部屋に戻る。いったいどうしたと言うのだろう…。
とりあえずお風呂に入ろうと浴室に向かいお湯を入れる。トポトポ貯まる様子をみながらぼんやりと先ほどの話を反芻する。海軍のことについても結婚式のことについても、なんにも聞かされてないことについて、悔しいとか怒りとかはなく、ただただ寂しかった。たぶん悪魔にとって、私は物足りない女なんだろう。
私が悪魔の妃になった、そもそもは、悪魔の呪いがあったからだ。処女である女性が私しか人間に見えず、悪魔は私を選び好きになった。その後、なんだかんだありつつも私も悪魔が好きになり結婚することになったけど、…悪魔は今まで様々な教育を受け、それをきちんと物にし、さらにアミノフィア国に留学し自分を高めてきた。それが、自分の本来の希望ではなかったにしても、経験を積んできたことに間違いはない。
それに引き換え私は、王妃様に出された課題もまだまだ完璧とは言えないし…悪魔のことも、まったく知らない。カラダはあんなに重ねたのに、これまでの約20年、どんな人生を送ってきたのか知りもしない。妻としても、妃としても、悪魔にふさわしいと言えるところがひとつでもあるだろうか。
私を好きだと伝え続けてくれた悪魔の気持ち。いつの間にか大事な人に変わっていたけれど…身分とか、考えもしないで決めちゃいけなかったのかもしれない。私はそもそも、お飾り王太子妃だったのに。
気づくとザアザアお湯が溢れていて、慌てて止める。
「あー…」
モヤモヤして落ち込む気持ちをどうしようもなく、着替えの準備をしようと浴室から出ると、まさかの悪魔が立っていた。
早苗さんに聞かれるが、まだはっきりしてないから答えようがない。なんて言えばいいだろう、と悩んでいると、
「兄上が仰っていましたが、来年3月に挙式ですよね?僕たちがジャポン皇国に留学する前にすると…ぜひ参加してもらいたいからと言ってくださってましたが…違いました、か…?」
私からなんの反応もないのを見て、ゼイン王子の言葉がだんだん尻窄みになる。
「いえ、あの…すみません。伽藍さんと藤乃さんの赤ちゃんが生まれて、少し落ち着いてから、来年、暖かくなってから、とは言われていたのですが、…具体的には、聞いてなくて…」
「まさか…兄上、勝手に決めてしまったのでしょうか、ソフィア様に相談もなしに…」
ディーン王子の顔が厳しくなる。今まで見たことのない顔だ。
「いえ、あの…すみません」
「ソフィア様が謝ることではありません。陛下、あの…以前、ソフィア様がジャポン皇国に来ることになった日、ソルマーレ国に女性とともにいらっしゃいましたよね。あの時、父上に『転移魔術』とご説明されていたと思うのですが、それで僕たちふたりをソルマーレ国に送っていただくことは可能ですか?」
英樹さんが早苗さんに目配せすると、早苗さんがスッと立ち上がって出ていった。ディーン王子だけでなく、ゼイン王子、英樹さんからも怒気が膨れ上がっているように見えるのは…なぜなのか…。
「ソフィアさん、とりあえず、今日はお疲れでしょうしお部屋でゆっくり休んでください。何か必要なものがあれば届けます」
「ソフィア様、ありがとうございます。ではまた明日」
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とりあえずお風呂に入ろうと浴室に向かいお湯を入れる。トポトポ貯まる様子をみながらぼんやりと先ほどの話を反芻する。海軍のことについても結婚式のことについても、なんにも聞かされてないことについて、悔しいとか怒りとかはなく、ただただ寂しかった。たぶん悪魔にとって、私は物足りない女なんだろう。
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気づくとザアザアお湯が溢れていて、慌てて止める。
「あー…」
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