114 / 161
番外編~結婚生活編
8
しおりを挟む
城に着くと、英樹さんと早苗さんが出迎えてくれた。双子王子を紹介する。
「来年、お世話になります」
「留学先にうちを選んでいただけるなんて光栄です。ぜひ実りある留学生活にしてください。各州に専門学校がありますが、おふたりは何を学びたいのですか?」
双子王子は顔を見合わせると、
「ソルマーレ国とは直接関係ありませんが…、僕たちは、兄上にかけられていたトゥランクメント族の呪【シュ】について研究したいと考えております」
英樹さんは「ほお…」と目を細めると、
「それはなぜですか?」
と聞いたのだが、早苗さんに「あなた、着いたばかりでお疲れなのよ。今夜、食事の時間にでもゆっくりお話したらいいじゃないの」と咎められ、しゅんとしていた。
早苗さんが案内してくれたのは、3階の客間だった。
「みんな知事宮に移ってしまったから、帰ってきたときに使える客間として少し手を入れたんです。1人一部屋で準備してありますので、足りないものがあったら遠慮なく仰ってくださいね」
そう言ってニコッとすると、双子王子に向かって、
「あなた方の義理のお姉さん、ソフィアさんのお陰で、ジャポン皇国は救われたのです。恩返しになるかわかりませんが、おふたりの留学期間中の経費はすべてこちらで持ちますので、たくさん学んでくださいね」
と言った。
「え、そんな、」
「それでも足りないくらいなのよ、ソフィアさん!蘇芳、羅刹、織部、朝霧、4人ともこうして幸せに生活できてるのは貴女のお陰なんだから。本当にありがとう。感謝しかないのよ」
瞳を潤ませる早苗さんを見て、私も胸が熱くなる。あの鬼畜…上総のことも、まだ割りきれたわけではないだろう。お腹を痛めて産んだ子どもなのだから。でも、そういう…清濁併せ呑む強さを持って、早苗さんは皇后として立っているのだ。
「ソルマーレ国の義父が、なんていうかわかりませんが、…ありがたいお言葉です」
双子王子も、「ありがとうございます」と頭を下げた。
18時に夕飯だと言われたので、それまでは部屋でのんびりすることにする。懐かしいな、なんて思いながら荷物を解き始めたら、…大量の、便箋が出てきた。一番上には封筒が載っている。かなり分厚い。イヤな予感しかない。
恐々開くと、やっぱり悪魔からの手紙だった。いつ入れられたんだろうか。
『 わたくしの大切な大切なフィーへ
無事にジャポン皇国に着きましたか。どこか痛いところはないですか。きちんと眠れましたか。わたくしはフィーが隣にいないので、思うように眠れないと思います。フィーのおっぱいを触りながら眠りたい。眠れるかどうかはまた別の話ですが、わたくしのおっぱいは、いえ、間違えました、わたくしのフィーのおっぱいはすべてすべてわたくしのものです。絶対に誰にも触らせたりいわんや見せたりしないでください。お願いします。そんなことになったらと思うだけで頭がおかしくなりそうです』
パタリ、と閉じて封筒にしまうことにした。頭がおかしくなりそうです、ではなく、もうすでに頭がおかしくなっているのではないかと思う。この調子で続くであろう手紙を…しかも改行していないのにこんなに分厚いこの手紙を読まなくてはならないなんて、なんの拷問なのか。悪魔は私に罰ゲームをさせたいのだろうか。
どれだけおっぱいが好きなのかな、あの悪魔は。
呪いの手紙をカバンに押し込めていると、ドアがノックされた。
「はい」
ドアを開けると、織部さんが立っていた。織部さんはニカッと笑うと、
「陛下に承認してもらえたから、ソフィアさんさえよければ『言われた通りに出しちゃうもん』からさっそく出してみようぜ」
この兄弟はほんとに仕事が早い。
歩きながら織部さんは、
「陛下に話したら『わたくしも早苗に着せたい』って恍惚とした顔で呟いてたよ。さっきソフィアさん、カタログって言ってたけど、こっちで仕入れるのにそういう見本みたいな冊子があるといいな」
「そうですね…一番は、モデルさんが着てくれるといいんですけど。ただの下着を見るより、どんなふうなのかイメージがつきやすいでしょうから。でも、あんまり卑猥なのはダメですよ、それは下着だけでいいと思います」
「ソルマーレ国は印刷技術はどうなんだ?」
「本も出版されてますし、カラーでも…ただ、写真はないです」
「写真…そのままを写す、ってことだろ?ジャポン皇国もないな、それは」
どうしたものかと考えながら『言われた通りに出しちゃうもん』の前に立ち、…
「そうだ、この機械からデジカメとプリンターを出せば、それを元に印刷できます!」
織部さんの頭の上にはハテナマークが飛びかっている。聞いたことのない言葉だから仕方ない。
「とりあえずまずは…『女性用の下着のカタログ』」
ドアを開けると、異なる会社のカタログが5冊入っていた。
織部さんは手に取りパラパラ捲ると、
「これ、一個ずつ名前があるんだな」
と感心したように言った。
「そうなんです。この前織部さんが出してくれたのはベビードールって言うんですけど…」
織部さんは紐…完全に紐でしかない下着を見て、
「これは何て言うか…裸よりも、やらしい感じがするな」
と言った。
「そうですか…?」
「うん。全裸よりも、なんか…そそられるものがある」
私からすればただの裸にしか見えないけど、男性の目から見ると違うのだろうか。双子王子にも見てもらおう。
実際に付いている名前で実物の下着も何種類か出し、モデルさんが実際に着ている雑誌も何冊か出してみた。
「あのふたりに見せてみて、あしたにでもギデオンさんに送るといいよ」
…ちょっと、刺激が強すぎるように思うが、双子王子の希望だから仕方がない。王妃様に怒られたらどうしよう…。
「来年、お世話になります」
「留学先にうちを選んでいただけるなんて光栄です。ぜひ実りある留学生活にしてください。各州に専門学校がありますが、おふたりは何を学びたいのですか?」
双子王子は顔を見合わせると、
「ソルマーレ国とは直接関係ありませんが…、僕たちは、兄上にかけられていたトゥランクメント族の呪【シュ】について研究したいと考えております」
英樹さんは「ほお…」と目を細めると、
「それはなぜですか?」
と聞いたのだが、早苗さんに「あなた、着いたばかりでお疲れなのよ。今夜、食事の時間にでもゆっくりお話したらいいじゃないの」と咎められ、しゅんとしていた。
早苗さんが案内してくれたのは、3階の客間だった。
「みんな知事宮に移ってしまったから、帰ってきたときに使える客間として少し手を入れたんです。1人一部屋で準備してありますので、足りないものがあったら遠慮なく仰ってくださいね」
そう言ってニコッとすると、双子王子に向かって、
「あなた方の義理のお姉さん、ソフィアさんのお陰で、ジャポン皇国は救われたのです。恩返しになるかわかりませんが、おふたりの留学期間中の経費はすべてこちらで持ちますので、たくさん学んでくださいね」
と言った。
「え、そんな、」
「それでも足りないくらいなのよ、ソフィアさん!蘇芳、羅刹、織部、朝霧、4人ともこうして幸せに生活できてるのは貴女のお陰なんだから。本当にありがとう。感謝しかないのよ」
瞳を潤ませる早苗さんを見て、私も胸が熱くなる。あの鬼畜…上総のことも、まだ割りきれたわけではないだろう。お腹を痛めて産んだ子どもなのだから。でも、そういう…清濁併せ呑む強さを持って、早苗さんは皇后として立っているのだ。
「ソルマーレ国の義父が、なんていうかわかりませんが、…ありがたいお言葉です」
双子王子も、「ありがとうございます」と頭を下げた。
18時に夕飯だと言われたので、それまでは部屋でのんびりすることにする。懐かしいな、なんて思いながら荷物を解き始めたら、…大量の、便箋が出てきた。一番上には封筒が載っている。かなり分厚い。イヤな予感しかない。
恐々開くと、やっぱり悪魔からの手紙だった。いつ入れられたんだろうか。
『 わたくしの大切な大切なフィーへ
無事にジャポン皇国に着きましたか。どこか痛いところはないですか。きちんと眠れましたか。わたくしはフィーが隣にいないので、思うように眠れないと思います。フィーのおっぱいを触りながら眠りたい。眠れるかどうかはまた別の話ですが、わたくしのおっぱいは、いえ、間違えました、わたくしのフィーのおっぱいはすべてすべてわたくしのものです。絶対に誰にも触らせたりいわんや見せたりしないでください。お願いします。そんなことになったらと思うだけで頭がおかしくなりそうです』
パタリ、と閉じて封筒にしまうことにした。頭がおかしくなりそうです、ではなく、もうすでに頭がおかしくなっているのではないかと思う。この調子で続くであろう手紙を…しかも改行していないのにこんなに分厚いこの手紙を読まなくてはならないなんて、なんの拷問なのか。悪魔は私に罰ゲームをさせたいのだろうか。
どれだけおっぱいが好きなのかな、あの悪魔は。
呪いの手紙をカバンに押し込めていると、ドアがノックされた。
「はい」
ドアを開けると、織部さんが立っていた。織部さんはニカッと笑うと、
「陛下に承認してもらえたから、ソフィアさんさえよければ『言われた通りに出しちゃうもん』からさっそく出してみようぜ」
この兄弟はほんとに仕事が早い。
歩きながら織部さんは、
「陛下に話したら『わたくしも早苗に着せたい』って恍惚とした顔で呟いてたよ。さっきソフィアさん、カタログって言ってたけど、こっちで仕入れるのにそういう見本みたいな冊子があるといいな」
「そうですね…一番は、モデルさんが着てくれるといいんですけど。ただの下着を見るより、どんなふうなのかイメージがつきやすいでしょうから。でも、あんまり卑猥なのはダメですよ、それは下着だけでいいと思います」
「ソルマーレ国は印刷技術はどうなんだ?」
「本も出版されてますし、カラーでも…ただ、写真はないです」
「写真…そのままを写す、ってことだろ?ジャポン皇国もないな、それは」
どうしたものかと考えながら『言われた通りに出しちゃうもん』の前に立ち、…
「そうだ、この機械からデジカメとプリンターを出せば、それを元に印刷できます!」
織部さんの頭の上にはハテナマークが飛びかっている。聞いたことのない言葉だから仕方ない。
「とりあえずまずは…『女性用の下着のカタログ』」
ドアを開けると、異なる会社のカタログが5冊入っていた。
織部さんは手に取りパラパラ捲ると、
「これ、一個ずつ名前があるんだな」
と感心したように言った。
「そうなんです。この前織部さんが出してくれたのはベビードールって言うんですけど…」
織部さんは紐…完全に紐でしかない下着を見て、
「これは何て言うか…裸よりも、やらしい感じがするな」
と言った。
「そうですか…?」
「うん。全裸よりも、なんか…そそられるものがある」
私からすればただの裸にしか見えないけど、男性の目から見ると違うのだろうか。双子王子にも見てもらおう。
実際に付いている名前で実物の下着も何種類か出し、モデルさんが実際に着ている雑誌も何冊か出してみた。
「あのふたりに見せてみて、あしたにでもギデオンさんに送るといいよ」
…ちょっと、刺激が強すぎるように思うが、双子王子の希望だから仕方がない。王妃様に怒られたらどうしよう…。
25
お気に入りに追加
5,689
あなたにおすすめの小説

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~
Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。
「俺はお前を愛することはない!」
初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。
(この家も長くはもたないわね)
貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。
ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。
6話と7話の間が抜けてしまいました…
7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる