お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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番外編

3(ギデオン視点)※更に同じ

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ふ、と目を開けると、カーテンの隙間から光が洩れ、外が白みはじめていることを教えてくれる。

腕の中には愛しい愛しいフィーが、静かな寝息をたてている。視線をずらすと、鎖骨から下には無数の赤いシルシ。そのうちのひとつに、そっと触れる。温かく、トクトクとフィーの心音が伝わってくる。

フィーの近衛騎士として離宮に行ったあの日。19年間誰とも触れあえず、さりとて家族を思えば自ら命を絶つこともできず、人間に見える女性は既婚者、もしくは経験者。王族であるからには相手は処女でなくてはならないと言われ、じゃあどうすればいいのかと、ぶつけようのない怒りに苛まれていた時だった。そこにいたのは、ふくよかな、人間の顔をした女性。リチャードと入籍したのに、初夜を迎えられずに自殺を図ったという彼女は、以前はウサギの顔に見えていた。それなのに。

キレイな緑色の瞳、オリーブブラウンのふんわりとした髪の毛。こちらを見る瞳には媚びもなく、ただ淡々としていた。

処女であるはずなのに、人間に見えるように変わった彼女は、ソフィア様であって、ソフィア様ではない。自分だけの特別にしたくて、「フィー」と呼ぶことにした。なんにもないふりをして触れた彼女は、柔らかくて、温かくて、気持ちが良かった。あまりに気持ちよくて、離したくなくて、夜一緒に寝ることにした。今考えればあまりにも突然すぎるが、あの時は離したくない、触れていたい、ただその欲望しかなかった。

何かにつけて、彼女に触れる。手を繋ぐ。その言い様のない喜びを顔に出さないようにするのが大変だった。

「おまえ、ずいぶん楽しそうだったな」

王宮に帰る馬車の中で陛下に…父に問われ、フィーが人間に見えたことを告げると、父の表情がガラリと変わった。

「ソフィアには利益を出さない限り離縁は認めないと伝えたが、おまえの相手として可能性が出た今、リチャードと離縁させることは決定だ。おまえは、ソフィアでいいか」

「フィーが、いいです。彼女が、欲しい」

あんなに太ってる女でいいのか、と言うが、フィーなら何でもよかった。あの可愛らしい笑顔を自分に向けて欲しかった。女性とまともに触れあってこなかった自分の振る舞いは、フィーには単なる苛めとしか取られていなかったのだが…。

離縁誓約書を締結した日の夜、フィーに「離縁が成立したら、性交したい」と伝えると「いいです!」と答えが返ってきて、その日はさらにぐっすり眠ることができた。毎日毎日悶々とし、自慰行為をしたところで根本は解消されず、なかなか眠ることができない日々だったが、フィーを抱っこして眠るようになってからは心が満たされたのか深く眠れるようになっていた中でも、更に心地好い眠りだった。それなのに朝起きたら「覚えてない」という…。ガッカリしたが、約束は約束だ。絶対に守ってもらう、と思うそばから今度はジャポン皇国にフィーを一人で送られてしまうことになった。

「王妃陛下、なぜあんな、」

「ギデオン、陛下から話は聞いたけど、ソフィアちゃんはまだどんな人かわからないのよ。少し離れて冷静になりなさい」

せっかく見つけた彼女を俺から引き裂くなんて、とイライラしていると、母は指輪をひとつ手に載せた。

「これは、私がラインハルト様から結婚前に贈られた指輪よ。貴方のモノだというシルシに、ソフィアちゃんに渡すといいわ」

その夜、フィーに口づけた。柔らかくて、いい匂いがして、とても気持ちよかった。1ヶ月もすれば帰ってくる、そうしたらまたたくさん口づけができると期待していたのに、ジャポン皇国からの依頼を了承してしまった父のせいで…そう、父のせいで!フィーは、まったくソルマーレに帰ってこなかった。そして母のせいで、俺の手紙はフィーに届いてすらいなかった。

害虫事件のおかげで大事なフィーが傷つけられたが、そのおかげで一緒に風呂に入れることになったし、あの害虫もいなくなったし、フィーは痛くて可哀想だったけど今となっては良しとしよう。久しぶりに見たフィーは、とても痩せてキレイになっていたが、柔らかさは変わらなかった。誰かと性交していたらどうしようかと焦ったが、「誰ともエッチしていない」と答えが返ってきて安心した。俺のフィーなのに、誰かにかっ浚われるなんて冗談じゃない。絶対に絶対に誰にも渡さない、今はまだ書類上はリチャードの妻だが、期限がくれば離縁して俺の、俺だけのフィーに出来るのだ。

それなのに、今度はリチャードが手のひらを返すようにフィーを自分のものだと主張し始めた。自分の女が太ってしまい、フィーが痩せてキレイになったからなどとふざけた理由で。見た目で判断するなんて、俺を見て媚を売ってくる女たちと同じだ。内面をまったく見ようともしないくせに。幸いフィーは、「浮気男はだいっきらい」だと断言してくれたから良かったが、書類上はヤツの妻。それにフィーは、俺を好きではないという。性交したくても、していいと言ってくれても、本当にいいのかと思い悩む日々が続いた。

織部さんの結婚式に、一応「ソルマーレ国王子」として呼ばれ(フィーには近衛騎士として行くと誤魔化してある)、そこで思いがけず自分にかけられた呪いを知ることができた。フィーが俺の元に現れてくれてから、自分の未来が好転し始める。これを奇跡と言わずしてなんというのか。フィーは、俺と結ばれるべくしてこの世界にやってきてくれたのだ。それなのに、呪いが解けたら他の女と結婚しろという。本当に俺のことをなんとも思っていないのだと思い知らされてガッカリし、そして仄暗い欲望が頭をもたげた。それなら、呪いは解けないことにすればいい。そのままフィーを孕ませて、絶対に逃げられないようにしてやる。でも、フィーは最終的に俺を好きだと言ってくれた。嬉しくて嬉しくて、壊さないように自重するのが大変だった。やっと手に入れたフィーを、もう絶対に手放さない。

初めて抱いた日を思い出しながら、フィーの柔らかな膨らみにそっと触れる。やわやわと触れていると、先端が尖り出し、急激に膨張する。イヤらしい、俺のフィー。可愛い、可愛い、俺だけのフィー。

ニヤける顔をどうしようもなく、その膨らみを口に含むとフィーの口から「ん…っ」と熱い吐息が洩れ、その声に俺のモノが反応して勃ちあがる。なんでこんなに可愛いのかな。堪らない。

「フィー…気持ちいいですか」

耳元で囁くと、フィーがぼんやり目を開けた。

「ギデオンさん…?」

俺を見ると、ニッコリ笑い抱きついてくる。首に手を回され、引き寄せられて口づけた。フィーは、たくさん知識があるはずなのに実際の行為にはかなり奥手だし恥ずかしがってなかなか自分からはしてくれない。そんなフィーが自分から口づけてくれて、胸がカアッと熱くなる。

嬉しさに悶えていると、フィーの手が、なんと俺の昂りに触れてきた。そのまま手でしごき始める。

「フ、フィー…?」

「ギデオンさん、おっきくなってるね。きもち?」

チュッ、チュッ、と口づけられながらしごかれるこの気持ちよさをなんと表現したらいいのか。語彙力のない自分を心の底から残念に思う。

フィーの口づけに応えて舌を絡ませると、フィーの腰が艶かしく動き始めた。俺の手を取ったフィーは、そのまま自分の秘処に導き「ギデオンさん、して、」と瞳を潤ませた。顔もほんのりと赤くなり、イヤらしいことこの上ない。

ツプリ、と指を埋めると、なんの抵抗もなく中に飲み込まれる。昨夜の行為の残り香のように、フィーの秘処はねっとりと潤んでいた。

「フィー、すごく柔らかい…すぐに入ってしまいましたね、ほら、気持ちいいですか?ここも…硬く尖ってきましたね…っ、あ、フィー、気持ちいい…っ」

フィーの手の動きが速くなり、気持ちよさがカラダの中を駆け巡る。

フィーは、カラダを反転させると、腰を高く持ち上げ、…秘処を自分の手で開いた。今まで、こんなことお願いしてもしてくれたことないのに…!突然のフィーの痴態に一瞬理性が飛びそうになるが、なんとか耐えた。にも関わらず、更に「ギデオンさん、おねがい、ほし、い、」なんて…俺を殺す気なのだろうか。

むしろこちらからお願いして挿入れさせてもらいたいくらいなのだが、その時飛びそうな理性が素晴らしい閃きをもたらした。

「…フィー」

自分の昂りを、フィーの入り口に擦り付ける。俺の先走りとフィーの愛液が絡み合い、あっと言う間に先端から根元までヌルヌルになったモノを何度も擦り付けると、フィーのカラダがビクッ、ビクッ、と跳ねる。気を抜いたら吸い込まれそうだ。

「ギ、ギデオン、さ、や、いじわ、る、やぁ、」

「フィー、フィーのお願いをきくかわりに、わたくしのお願いもきいてくれますか?」

フィーのカラダが真っ赤に染まって、控え目に言ってもイヤらしすぎる。その状態で、フィーはコクコク首を縦に振った。

「フィー、ちゃんと言葉にして。ね…?」

背中を甘噛みすると、「キャア…ッ」と可愛い悲鳴を上げた。あー、可愛い。可愛すぎる。

「フィー、」

「きく、きくから、あ、ああ…っ!ギデオンさん、おねが、おねがいぃ…っ、きくからぁ…っ!」

「じゃあ、あの紫の下着着てください。わたくしの誕生日に、あの下着を着て性交しましょう?プレゼントに、フィーのイヤらしいところを見せてください。…できますか?」

あの時、結局フィーは恥ずかしがって、しまいには泣き出してしまったから諦めるしかなかったけど、絶対着て欲しい。絶対似合うと思う。

下着、という言葉を聞いてフィーは一瞬身を硬くしたが、「…わか、った、する、ギデオンさん」とまたコクリと頷いてくれた。

「…約束ですよ」

そのまま中にグッと押し入ると、フィーは「あーっ!」と叫んで身を震わせた。

向かい合って挿入するよりも、こうして後ろから突き入れられるのがフィーは好きなのだと、何回も肌を重ねるうちにわかるようになった。なぜなら、挿入れた時の声の高さが格段に違うから。でも恥ずかしいのか、中々おねだりはしてくれない。今日は本当に、最高の日だ。

「あ、あ、きもちいいっ、ギデオンさぁん」

「わたくしも…っ。気持ちいいですっ、フィーっ!」

いつもなら、すぐにイッてしまってその後くったりしてしまうのに、今日のフィーは、イキながらも抜こうとせずにキュンキュン締め付けてくる。…まずい。出そうだ。

「フィー、あ、イキそうです、」

抜こうとしたら足をギュッと絡ませてきて、

「イヤ、ぬいちゃやだぁ、中にだして、」

…子どもはまだ、なんて思いはぶっ飛び、そのまま理性も吹き飛んだ。

俺のフィーは、破壊力が凄すぎる。我に返った時には、何回出したかわからない量の白濁が溢れていて、フィーはくったりしていた。慌てて抱き上げ、浴室に連れていく。抱き抱えたままとりあえず流し、キレイにしてタオルで拭く。可愛いフィーは、また眠ってしまったようだ。一度ソファに寝せ、寝具を交換してからフィーを抱き込んで目を閉じる。

「フィー、約束、忘れないでくださいね」

今年の二十歳の誕生日は、記念すべき日になりそうだ。絶望にまみれた誕生日は、もう来ない。
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