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ギデオン
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「フィー。まだ起きてもいないこと…わたくしが、他の女性を好きになりフィーを捨てるかも、なんて根拠もないことを悶々と思い悩んで、そんなことで時間を無駄にするのはやめませんか。確かに、未来のことを絶対、と断言はできないでしょう。でも、そんな確証のないことに苛まれるより、今のわたくしとフィーの気持ちを大事に育むほうが有意義だとは思いませんか」
今の、ふたりの気持ち…。
「お互いを毎日大切にし、思いやりを持って生きていけば…時にぶつかりケンカしても、それに向き合って乗り越えることはできるでしょう。未来を恐れるのではなく、未来を望みましょう。わたくしは今まで、未来なんて望めませんでした。絶望しかなかった。でもフィーを見つけて、わたくしの未来は色が付いた。輝く、キレイな未来です。そこにはフィーがいるのです、フィーがいることで成り立つ未来なのです」
悪魔は、私の手を優しくどかすと目を合わせ微笑んだ。
「ね、だから、フィー。わたくしにこれからのフィーの毎日をください。フィーも、わたくしの毎日を共有してください。ふたりで、歩いて行きましょう。わたくしと共に、生きてください」
「…私で、いいの」
「フィーがいいのです」
「…私のこと、イヤだって思う日が来るかもしれないじゃん…っ」
「わからない未来を、なんの根拠もない言葉で慰めたらフィーは納得するのですか?そんなことはない、そんな未来は来ないから恐れないで、と言えば安心できるのですか?」
冷たい言い方に聞こえるが、悪魔の言い分はストン、と納得ができた。その場を宥めてみたところで未来永劫を約束などできない。
「フィー。大好きです」
悪魔はふ、と微笑んだあと、ハッとしたように私の胸を隠した。次いで、自分も服を整え苦笑いを浮かべた。
「モロに出しながら言うことではありませんでしたね。カッコ悪い…」
「ううん、ギデオンさん、…ありがとう。私、ギデオンさんと生きていく。前世のこととか、今回のこととか、自分では傷ついてないつもりだったけど、強がってただけなのかもしれない。だから、もう傷つきたくなくて、それなら初めから希望を持つのはやめようって、…最初からではないけど、確かに、頑なに拒絶してたんだね、私。いつの間にか、ギデオンさんを特別に思うようになっちゃってたんだね」
悪魔は嬉しそうに笑うと、
「これでフィーは、わたくしのモノになりますね。やっと…やっとです」
そう言って、私にそっと口づけた。
離宮に着くと私を先にお風呂に入れ、次に入った悪魔は、馬車でのドSっぷりがウソのようにおっかなびっくりの様子だった。
「先ほどは、もう、フィーに嫌われてると思っていましたし、それでも絶対にするつもりでしたから…。フィー、好きです。今夜、わたくしとひとつになってください。貴女を、愛しています」
悪魔の澄んだ瞳が私を見つめる。その瞳に映る私は、幸せそうに微笑んでいた。
「私も、ギデオンさんが好きだよ。ギデオンさん、…孕ませて」
真っ赤になった悪魔は、「…最高です」とポソリと呟いた。
その日から、毎晩悪魔と肌を重ねた。悪魔のモノが大きくて、悪魔曰く「初夜」はしっかり痛みがあって大変だったが、その痛みを上回る幸せな気持ちに包まれた。2日目からは悪魔はかなりねちっこい感じになり、「やっぱりムッツリなんだな」となんとなくホッコリさせられた。
たくさんたくさん口づけを交わし、たくさんたくさんお互いの肌を舐め、ホクロの位置まで知られてしまうくらいに私のカラダは悪魔に暴かれた。セックスって、こんなに幸せな気持ちになるんだな、というくらいの経験だった。お互いのすべてを知っているわけではないけれど、どんな痴態を見せても呆れられたり、呆れたり、覚めたりしないという根拠のない自信だけはあったから、安心して感じる気持ち良さに身を任せることができたからかもしれない。同僚の彼女が言っていたことが、わかった気がした。
悪魔と肌を重ねてから2週間後、ボールドウィン伯爵が帰国した。
「ソフィア様、ご無沙汰しております。すべてお任せしてしまって、申し訳ありませんでした」
ペコリ、と頭を下げた伯爵は、ジャポン皇国の各州にソルマーレ国のような宝石店を構えられることになったこと、『皇室御用達』のお墨付きをいただいたこと、玄武州のお店の店長になること、正式にジャポン皇国に移住すること、などを話してくれた。もちろん佐々木さんとのことも根掘り葉掘り聞いた…萌える。
先に始まったスティーブさんと宰相様は、エロチックな進展はあまりないみたいで先日スティーブさんが真っ赤な顔で「エリオット様と口づけました」と報告してきたくらいなので、あのワンコの様子から見ても、まだまだまぐわうのは先の話だろう。一緒にいるところを見るだけで萌えるからいいの。好き。
幸せそうな顔で話をした伯爵は、領地で正式に除籍の手続きをし、1ヶ月をめどにジャポン皇国に移り住むと言った。
「佐々木さんが、部屋に一緒に住もうと誘ってくださったので、…私は何もできないんですが、これから覚えていこうと思っています。陛下も快く移住についてお許しくださいましたし、領地の繁栄のために…私はもうボールドウィンではなくなりますが、少しでも役に立てればと考えています」
そう言ってニッコリした伯爵は、
「では、わたくしはこれで」
と帰って行った。
今の、ふたりの気持ち…。
「お互いを毎日大切にし、思いやりを持って生きていけば…時にぶつかりケンカしても、それに向き合って乗り越えることはできるでしょう。未来を恐れるのではなく、未来を望みましょう。わたくしは今まで、未来なんて望めませんでした。絶望しかなかった。でもフィーを見つけて、わたくしの未来は色が付いた。輝く、キレイな未来です。そこにはフィーがいるのです、フィーがいることで成り立つ未来なのです」
悪魔は、私の手を優しくどかすと目を合わせ微笑んだ。
「ね、だから、フィー。わたくしにこれからのフィーの毎日をください。フィーも、わたくしの毎日を共有してください。ふたりで、歩いて行きましょう。わたくしと共に、生きてください」
「…私で、いいの」
「フィーがいいのです」
「…私のこと、イヤだって思う日が来るかもしれないじゃん…っ」
「わからない未来を、なんの根拠もない言葉で慰めたらフィーは納得するのですか?そんなことはない、そんな未来は来ないから恐れないで、と言えば安心できるのですか?」
冷たい言い方に聞こえるが、悪魔の言い分はストン、と納得ができた。その場を宥めてみたところで未来永劫を約束などできない。
「フィー。大好きです」
悪魔はふ、と微笑んだあと、ハッとしたように私の胸を隠した。次いで、自分も服を整え苦笑いを浮かべた。
「モロに出しながら言うことではありませんでしたね。カッコ悪い…」
「ううん、ギデオンさん、…ありがとう。私、ギデオンさんと生きていく。前世のこととか、今回のこととか、自分では傷ついてないつもりだったけど、強がってただけなのかもしれない。だから、もう傷つきたくなくて、それなら初めから希望を持つのはやめようって、…最初からではないけど、確かに、頑なに拒絶してたんだね、私。いつの間にか、ギデオンさんを特別に思うようになっちゃってたんだね」
悪魔は嬉しそうに笑うと、
「これでフィーは、わたくしのモノになりますね。やっと…やっとです」
そう言って、私にそっと口づけた。
離宮に着くと私を先にお風呂に入れ、次に入った悪魔は、馬車でのドSっぷりがウソのようにおっかなびっくりの様子だった。
「先ほどは、もう、フィーに嫌われてると思っていましたし、それでも絶対にするつもりでしたから…。フィー、好きです。今夜、わたくしとひとつになってください。貴女を、愛しています」
悪魔の澄んだ瞳が私を見つめる。その瞳に映る私は、幸せそうに微笑んでいた。
「私も、ギデオンさんが好きだよ。ギデオンさん、…孕ませて」
真っ赤になった悪魔は、「…最高です」とポソリと呟いた。
その日から、毎晩悪魔と肌を重ねた。悪魔のモノが大きくて、悪魔曰く「初夜」はしっかり痛みがあって大変だったが、その痛みを上回る幸せな気持ちに包まれた。2日目からは悪魔はかなりねちっこい感じになり、「やっぱりムッツリなんだな」となんとなくホッコリさせられた。
たくさんたくさん口づけを交わし、たくさんたくさんお互いの肌を舐め、ホクロの位置まで知られてしまうくらいに私のカラダは悪魔に暴かれた。セックスって、こんなに幸せな気持ちになるんだな、というくらいの経験だった。お互いのすべてを知っているわけではないけれど、どんな痴態を見せても呆れられたり、呆れたり、覚めたりしないという根拠のない自信だけはあったから、安心して感じる気持ち良さに身を任せることができたからかもしれない。同僚の彼女が言っていたことが、わかった気がした。
悪魔と肌を重ねてから2週間後、ボールドウィン伯爵が帰国した。
「ソフィア様、ご無沙汰しております。すべてお任せしてしまって、申し訳ありませんでした」
ペコリ、と頭を下げた伯爵は、ジャポン皇国の各州にソルマーレ国のような宝石店を構えられることになったこと、『皇室御用達』のお墨付きをいただいたこと、玄武州のお店の店長になること、正式にジャポン皇国に移住すること、などを話してくれた。もちろん佐々木さんとのことも根掘り葉掘り聞いた…萌える。
先に始まったスティーブさんと宰相様は、エロチックな進展はあまりないみたいで先日スティーブさんが真っ赤な顔で「エリオット様と口づけました」と報告してきたくらいなので、あのワンコの様子から見ても、まだまだまぐわうのは先の話だろう。一緒にいるところを見るだけで萌えるからいいの。好き。
幸せそうな顔で話をした伯爵は、領地で正式に除籍の手続きをし、1ヶ月をめどにジャポン皇国に移り住むと言った。
「佐々木さんが、部屋に一緒に住もうと誘ってくださったので、…私は何もできないんですが、これから覚えていこうと思っています。陛下も快く移住についてお許しくださいましたし、領地の繁栄のために…私はもうボールドウィンではなくなりますが、少しでも役に立てればと考えています」
そう言ってニッコリした伯爵は、
「では、わたくしはこれで」
と帰って行った。
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