お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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ギデオン

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私が食堂に入って行くと、チンピラが「ギデオン、なに泣かせてんだ!」と怒鳴った。

「…わたくしの言葉をフィーは信じてくれません。陛下、もう、さっさとどうにかしてください」

「さっさとどうにかできるんだったらやってるわ。俺を誰だと思ってやがる。まだ足りねえんだよ、仕方ねえだろうが」

ハーッ、とこれ見よがしに大きなため息をついた悪魔は、私をまた横抱きにして椅子に腰かけた。王妃様も、何も言わない。そのまま食事が始まった。

「フィー、口を開けて。食べないと今夜持ちませんよ。寝かせるつもりはありませんから、きちんと食べてください」

「ギデオン、そういうことをわざわざ言うな。この場にいる全員がいたたまれねえだろうが」

チンピラの言葉をキレイに無視した悪魔は、

「食べないなら口移しで食べさせますよ、いいですか」

と耳元で囁いた。

もう、どうしたらいいのかわからない。悪魔は、自由になれるはずだったのに。

「…帰りましょう、フィー。もう限界です」

また涙がこぼれだした私を見て、悪魔はサッと立ち上がった。

「おい、ギデオン」

「陛下。申し訳ありませんが、わたくしはもう我慢しません。今までいろんなことを我慢してきました。たくさんのことを諦めて、でも、それでも良かった。わたくしの人生など、どうでもいい、どうせ何も変わらないのだから、…いつ死のうが、どうでも良かったのです。でも、フィーがわたくしの目の前に現れました。奇跡だと思いました。わたくしは、もう何も諦めたり手放したりしたくない。自分の道は自分で切り開いてみせます。わたくしの隣にフィーがいてくれて、フィーが生んでくれたわたくしのこどもたちがいて、そんな未来を必ず手に入れます。…フィー、行きますよ」

悪魔は私を抱き上げたまま一礼すると出口に向かって歩きだした。

「ギデオン、待ちなさい!」

「王妃陛下、わたくしは、」

「止めたりしないわよ。よく言ったわ。覚悟ができたのね、闘う覚悟ができたのね。今まで、すべてを諦めたような目をした貴方を見るのがツラかった。でも、今はもう違う。生き生きしている貴方が、とても嬉しいわ。…ソフィアちゃん」

王妃陛下は、私を見てそれはそれは優しく微笑んだ。

「ギデオンを、信じてあげて。ギデオンは貴方を心から大事に思っているのよ。…ありがとう、ソフィアちゃん。貴女が来てくれて…感謝しかないの。いつか、必ず貴女にお返しできるようにするからね」

「王妃陛下、」

瞳を潤ませた王妃様は、「ギデオン、しっかりやりとげなさい」と悪魔の背中をバシッと叩いた。

馬車に乗り込むと、悪魔は私のドレスの胸元をはだけさせ、そこを強く吸い上げた。

「ギ、…ギデオンさんっ」

「フィー、先ほども言いました。わたくしはもう我慢しません。フィーのカラダ、よく見せてください」

「ギデオンさん、だから…っ」

「フィー。フィーは、わたくしのために、と言っていますがそうではありませんよね。わたくしのことがイヤだから、わたくしのためを思ってるような言い方をしてわたくしを拒絶しているのでしょう。そんなにわたくしが嫌いですか。キライではなくなったと言ったのに、あれは偽りだったのですか」

え、

「私が、ギデオンさんを、拒絶、」

「そうでしょう。拒絶してるではありませんか。わたくしのため、なんてもっともらしいことを言って、わたくしに抱かれるのがイヤだから諦めさせようとしているのでしょう。でも、残念ですね、フィー。絶対にやめませんよ。わたくしの子を孕むまで、フィーと何度でも性交します。絶対にフィーは手放しません。フィーはわたくしのものです、絶対に誰にも渡しません。フィーがわたくしをイヤでも逃げ出せないように鎖で繋いで離宮に閉じ込めます。…どれだけ嫌われても。わたくしにはフィーだけです、フィーだけが好きなのです」

悪魔はさらにはだけさせると、ブラジャーをずり下げ露になった胸を口に含んだ。そのまま何度も舌で舐めあげられ、突起をキュッと噛まれる。

「あ、…っ」

「気持ちいいですか、フィー。可愛らしい声が出てますよ。もっと、気持ちよくなりましょう。フィーのイヤらしい声をたくさん聞かせてください」

「ギデオンさん、ここ、…あっ、ん、馬車の、ああっ、や、馬車の中…っ」

硬く尖った先端を指で摘ままれ、スリスリ擦られるとカラダがビクッと反応してしまう。

「どうせ見えませんよ、誰にも。ああ、声は聞こえてしまっているでしょうが」

意地悪く笑う悪魔は、初対面の時のようなドSっぷりをいかんなく発揮している。その間も、私の胸の突起を苛める指は止まらない。初めてのくせに…!ズルい!

「ギデオンさん、やめ、やだ、私…っ」

「フィー、諦めてください。ほら、触って」

悪魔は自分の下履きを寛げ、取り出した昂りに私の手を当てさせた。ものすごい熱さに、私の下半身がキュウッと疼く。

「これが、フィーの中に入ります。ね、フィー、硬いでしょう?フィーをやっと抱けると思って、興奮しているんですよ。フィー、愛しています。わたくしをフィーはキライでも、逃がしてあげません」

は、と熱い吐息を洩らす悪魔はほんのりと赤い顔で、瞳はギラギラと欲望に濡れている。こんな目で見つめられて、もう、…

「ギデオンさんのバカっ」

せっかく、手を離そうとしたのに…、離せなくなっちゃうじゃん!

「私、もう、捨てられるのはイヤなの…っ。だから、受け入れたくなかったのに…、ギデオンさんが、他の女性を選んだ時、私は、どうしたらいいの…っ!バカっ!ギデオンさんのバカっ!」

両手で顔を覆った私に、手の上からキスを降らせた悪魔は、

「フィー、今のはわたくしへの愛の告白ですね」

と嬉しそうな声で言った。

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