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指輪という愛の証を
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案内してもらった部屋でボーッとする。悪魔と顔を合わせたくないので藤乃さんに頼んで食事は運んでもらおうとしたのだが、初めて来た場所でボールドウィン伯爵も困るだろうし…、と気持ちを入れ替えることにした。
なんで悪魔はああやって、人の話を鵜呑みにするんだろう。私と直接話して、違うって言ったのに。「騙した」なんて。
なんだか悲しくなる。
すると、ドアをノックする音が聞こえてきた。かなり控えめで、気づくのが遅れてしまった。
「はい」
ドアを開けると、悪魔が立っていた。あー、またやっちゃった。相手を確かめないでドア開けちゃうなんて…。痛い目に遭ったのに、全然成長がない。…成長が、ないんだな、そんなすぐには。悪魔も、ついこの間まで誰かを好きになることもできず、まともに女性と付き合ったこともなかった。言うなれば、付き合い始めた中学生…いや、初めて異性を好きになった小学生みたいな感じなのかも。「私以外と話しちゃイヤ!」という独占欲強めの…あ、それは女の子か。
そんなふうに思って黙っていたら、悪魔が泣きそうな顔になった。
「フィー、あの…さっきは、すみません。わたくしが、頭に血が昇って…フィーに、キチンと言われていたのに、騙したなんて酷いことを言いました。あの…入っても、いいですか」
「どうぞ」
悪魔は中に入るとドアのカギを閉め、
「フィー、あの、…抱き締めて、いいですか。触れてもいいですか」
と私をじっと見つめる。
「ギデオンさん、」
「フィーが、わたくしを好きじゃないのはわかっています。だから、…それに、わたくしが秘密を話したせいでわたくしに同情して、性交してもいい、って言ってくれたこともわかっています。だから、…本来は、触れてはいけないのかもしれない、好きじゃないのに強要するような真似をして、卑怯なんじゃないかと思って、あまり、触れないようにしてきたから、…すみません。余裕がなくて、…ボールドウィン伯爵に、怒られました」
「ボールドウィン伯爵に…?」
悪魔は項垂れると、
「ソフィア様は、あんなにまっすぐな人なのに隣にいてそんなこともわからないのか、と。人を見る目をキチンと育てないと皇太子の二の舞ですよ、って」
「皇太子の二の舞?」
ハッ、と顔を上げた悪魔は、「な、んでも、ありません、」と言った後、私の手をそっと取った。
「…すみません。痛かったですよね。わたくしは、こんなにカラダが大きくて、しかも男なのだから力任せにフィーに触れたりしたら壊れてしまうのに。あの害虫と変わりません。本当に、反省しています、フィー。本当に、すみませんでした」
手を撫で撫でされながら見上げると、悪魔は瞳が潤んでいた。
その手を握りなおし、ベッドまで連れて行き、悪魔を押し倒す。
「フィー、あ、の?」
困惑気味な悪魔に口づける。何度も、何度も、顔中に口づけを落としながら髪の毛を撫でる。軟らかい、キレイな金色の髪の毛。
「フィー、フィー、」
悪魔は私の背中に腕を回し、そっと抱き締めてきた。そして、落ちてきた私の唇を自分の唇に落とし、そのままクルリと私を下にした。
舌を差し込まれ、口の中を執拗に舐める。私の舌を絡めとり、何度も吸い上げる悪魔は、口を離すとまたじっと私を見つめた。
「フィー、…許してくれるんですか」
「うん。許すっていうか…。ギデオンさん、私は、ギデオンさんに確かに同情してるのかもしれないけど、それでもギデオンさんとエッチしてもいい、って決めたんだよ。その気持ちに変わりはない。ギデオンさんを好きじゃない、それは恋愛対象として好きにはなってないよ。だって、始まりが始まりなんだから。でもね、政略結婚でも、このジャポン皇国の知事夫婦はすごく仲がいいでしょ。出会った次の日に結婚させられても、お互いに歩み寄って少しずつ相手を知って、いいとこを見つけて、好きになっていく。反対に、好きだ好きだ、って結婚しても、結婚して生活していくうちに相手のイヤな面ばっかり見つけて罵りあってる夫婦だってたくさんいるでしょ。
ギデオンさんは、皇太子の前だからわざと言ったのかもしれないけど、私と結婚して私に子どもを生ませるんじゃなかったの?」
悪魔はびっくりしたように目を見開くと、
「フィー、本当にわたくしと結婚してくれるんですか」
「…前に言ったように、今は私しか人間に見えないわけでしょ、恋愛対象になる女性は。でも、そうじゃなくなったら、他の女性を好きになるかもしれないじゃん。その時に、あー、あんなこと言うんじゃなかった、って後悔するかもしれないでしょ、ギデオンさん。だから、その時は私に気を使わずに、次に行って欲しいし、それまでは、お互いにもっと知り合っていこうよ。エッチもしよう。せっかく、できそうな相手が見つかったんだから。私、今は処女だけど一応知識はあるし、心配しなくていいから」
「…わたくしが今言ったところで、フィーはわたくしがフィーだけを好きだということは信じてくれませんよね。だって、秘密を話してしまったから。知っていてほしかったけど、だから、フィーを選ぶしかなかったと思われるのは…仕方ないことですよね」
なんで悪魔はああやって、人の話を鵜呑みにするんだろう。私と直接話して、違うって言ったのに。「騙した」なんて。
なんだか悲しくなる。
すると、ドアをノックする音が聞こえてきた。かなり控えめで、気づくのが遅れてしまった。
「はい」
ドアを開けると、悪魔が立っていた。あー、またやっちゃった。相手を確かめないでドア開けちゃうなんて…。痛い目に遭ったのに、全然成長がない。…成長が、ないんだな、そんなすぐには。悪魔も、ついこの間まで誰かを好きになることもできず、まともに女性と付き合ったこともなかった。言うなれば、付き合い始めた中学生…いや、初めて異性を好きになった小学生みたいな感じなのかも。「私以外と話しちゃイヤ!」という独占欲強めの…あ、それは女の子か。
そんなふうに思って黙っていたら、悪魔が泣きそうな顔になった。
「フィー、あの…さっきは、すみません。わたくしが、頭に血が昇って…フィーに、キチンと言われていたのに、騙したなんて酷いことを言いました。あの…入っても、いいですか」
「どうぞ」
悪魔は中に入るとドアのカギを閉め、
「フィー、あの、…抱き締めて、いいですか。触れてもいいですか」
と私をじっと見つめる。
「ギデオンさん、」
「フィーが、わたくしを好きじゃないのはわかっています。だから、…それに、わたくしが秘密を話したせいでわたくしに同情して、性交してもいい、って言ってくれたこともわかっています。だから、…本来は、触れてはいけないのかもしれない、好きじゃないのに強要するような真似をして、卑怯なんじゃないかと思って、あまり、触れないようにしてきたから、…すみません。余裕がなくて、…ボールドウィン伯爵に、怒られました」
「ボールドウィン伯爵に…?」
悪魔は項垂れると、
「ソフィア様は、あんなにまっすぐな人なのに隣にいてそんなこともわからないのか、と。人を見る目をキチンと育てないと皇太子の二の舞ですよ、って」
「皇太子の二の舞?」
ハッ、と顔を上げた悪魔は、「な、んでも、ありません、」と言った後、私の手をそっと取った。
「…すみません。痛かったですよね。わたくしは、こんなにカラダが大きくて、しかも男なのだから力任せにフィーに触れたりしたら壊れてしまうのに。あの害虫と変わりません。本当に、反省しています、フィー。本当に、すみませんでした」
手を撫で撫でされながら見上げると、悪魔は瞳が潤んでいた。
その手を握りなおし、ベッドまで連れて行き、悪魔を押し倒す。
「フィー、あ、の?」
困惑気味な悪魔に口づける。何度も、何度も、顔中に口づけを落としながら髪の毛を撫でる。軟らかい、キレイな金色の髪の毛。
「フィー、フィー、」
悪魔は私の背中に腕を回し、そっと抱き締めてきた。そして、落ちてきた私の唇を自分の唇に落とし、そのままクルリと私を下にした。
舌を差し込まれ、口の中を執拗に舐める。私の舌を絡めとり、何度も吸い上げる悪魔は、口を離すとまたじっと私を見つめた。
「フィー、…許してくれるんですか」
「うん。許すっていうか…。ギデオンさん、私は、ギデオンさんに確かに同情してるのかもしれないけど、それでもギデオンさんとエッチしてもいい、って決めたんだよ。その気持ちに変わりはない。ギデオンさんを好きじゃない、それは恋愛対象として好きにはなってないよ。だって、始まりが始まりなんだから。でもね、政略結婚でも、このジャポン皇国の知事夫婦はすごく仲がいいでしょ。出会った次の日に結婚させられても、お互いに歩み寄って少しずつ相手を知って、いいとこを見つけて、好きになっていく。反対に、好きだ好きだ、って結婚しても、結婚して生活していくうちに相手のイヤな面ばっかり見つけて罵りあってる夫婦だってたくさんいるでしょ。
ギデオンさんは、皇太子の前だからわざと言ったのかもしれないけど、私と結婚して私に子どもを生ませるんじゃなかったの?」
悪魔はびっくりしたように目を見開くと、
「フィー、本当にわたくしと結婚してくれるんですか」
「…前に言ったように、今は私しか人間に見えないわけでしょ、恋愛対象になる女性は。でも、そうじゃなくなったら、他の女性を好きになるかもしれないじゃん。その時に、あー、あんなこと言うんじゃなかった、って後悔するかもしれないでしょ、ギデオンさん。だから、その時は私に気を使わずに、次に行って欲しいし、それまでは、お互いにもっと知り合っていこうよ。エッチもしよう。せっかく、できそうな相手が見つかったんだから。私、今は処女だけど一応知識はあるし、心配しなくていいから」
「…わたくしが今言ったところで、フィーはわたくしがフィーだけを好きだということは信じてくれませんよね。だって、秘密を話してしまったから。知っていてほしかったけど、だから、フィーを選ぶしかなかったと思われるのは…仕方ないことですよね」
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