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指輪という愛の証を
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「皆さんの治める州の名前は、私の前世の日本でも聞いたことがありまして。東西南北を治める…司る?神様、神獣の名前なんですよね。それぞれからイメージされる色味の石をダイヤモンドと一緒に埋め込んでもらったんです。
玄武州は黒でオニキス、青龍州は青でサファイア、朱雀州は赤でルビー、白虎州は白でホワイトオニキスにしてみました。気に入っていただけるといいんですが」
「ソフィア様、とても美しい色ですわ!ね、羅刹様。羅刹様にぴったりです、青い色」
「芙蓉…芙蓉にもとても似合ってる」
こちらもイチャイチャし始める青龍州知事夫妻。
「藤乃、キレイだ。おまえにふさわしい色だ。気高く美しい中に凛とした強さと優しさがある。ソフィアさん、最高のプレゼントだ。すごくすごく嬉しいよ、本当にありがとう」
褒めまくられた藤乃さんは真っ赤な顔で俯いてしまった。相変わらず可愛らしい。そしてやっぱり織部さんも英樹さんの息子さんなんだな…奥様への溺愛っぷりが半端ない。
「いいなー。僕も早く伽藍さんに嵌めてあげたい…僕のも、」
「朝霧、セクハラ発言はやめなさい。ソフィアさん、本当にありがとう。大事にします」
「喜んでいただけて嬉しいです。おふたりの愛の証として、ぜひ普段使いで…お手入れ方法とかは、ボールドウィン伯爵からご説明いたします」
朝霧さん以外は、夫婦で指を見せ合いながら和やかに微笑み合っている。良かった。…ぜひとも販路拡大に繋がりますように…!
「そういえばソフィアさん、明日、織部たちの結婚式が終わったらその足で玄武州に来ませんか?佐々木が会いたがっていまして、ぜひとも連れてきてくれと」
「また兄上は!ズルいですよ!」
朝霧さんに睨まれるが軽く受け流し、「ボールドウィン伯爵も是非。翡翠を使ったアクセサリーについてご教授ください」なんてやっている。すごいバイタリティー…。啓一郎さんは、こういうことも見越した上で、上総の性格とかも見越した上で、結婚させる相手を選んだのだろうか。上総が撫子さんを拒絶すること、否定することまで見越してわざと初めは上総に撫子さんを、としたのであれば…かなりの戦略家だ。現に蘇芳さんは、玄武州を盛り上げるべく活発に動いている。皇帝になれるはずがない、なんて諦念はまったく感じられない。羅刹さんも朝霧さんも、まだ目立った新規事業を始めてはいないものの、今までの知事とは違うだろう。蘇芳さんに負けまいとする気概が見え隠れする。
こうやってお互いが高め合えば、より国は発展していくだろう。…もしその思惑通りなのだとしたら、…啓一郎さんはすごい。
「お姉さま、いかがですか?」
自分の思考の海に沈んでしまっていて、声をかけられ覚醒する。
「お邪魔してもいいなら是非、佐々木さんに会いたいし…その、特別区にもいきたいです」
そうだ。ボールドウィン伯爵を是非とも特別区に…!
「そうですね、佐々木が頑張ってますので、ぜひ見てやってください。佐々木も自分の店を出したんですよ。お酒も飲めるけど食事も楽しめる、という店です。明日はそこで食事をしましょう」
「え…。蘇芳さんたちも、ですか?」
「もちろんです。あ、僕たちが一緒ではマズイですか?そうですよね、佐々木と込み入った話もあるでしょうし…。3ヶ月前に、いきなり恋人と離されてしまったわけですからね」
「…恋人?」
いきなり手をギュウッとされ、ハッと見上げると、それはそれは恐ろしい悪魔の瞳が私を見下ろしていた。
「フィー。どういうことか説明してください。佐々木さんとは、あの時フィーと共に捕らえられていた男性のことですよね。彼の恋人だったのですか、フィー。彼とお付き合いをしていたと?でもあの時、わたくしには『好きな男性はいない、エッチもしていない』と言いましたよね。あれはウソだったんですか、わたくしを騙したんですか、フィー、」
「落ち着け、ギデオンさん。佐々木とソフィアさんはそんなんじゃない。ったく、蘇芳兄さん。佐々木はゲイなんだろ。いきなり宗旨変えして女と付き合うはずないだろうが。あんなに言い寄られて、むしろ迷惑がってたのに。自分の奥さんにしか興味ないのはわかるけど、佐々木をメッチャ働かせておきながら彼についてきちんと理解しないのは上に立つ人間として恥ずかしいことだと思わないのか?
ギデオンさん、佐々木は男性が好きなんだ。俺は確かにここに来て日は浅いけど、ソフィアさんも佐々木もお互いそんなふうな目で見てないよ。な、落ち着け。ソフィアさんが怖がってるだろ」
織部さんの言葉に悪魔がビクッとして私を見下ろした。
「あ、…フィー、」
「…ギデオンさん、手、離して」
「フィー、あ、あの、」
私は悪魔の手を振り払い、
「申し訳ありません、こんな風にしてしまって…ボールドウィン伯爵、私、先に休ませていただきます。すみません皆さん、失礼します」
ペコリと一礼し歩きだした私を藤乃さんが追い掛けてきた。
「ソフィア様、大丈夫ですか?蘇芳様は、ああいう無頓着に他人を争わせるような火種を撒き散らすことがあるんです。あちらは織部様に任せて、行きましょう。お部屋にご案内しますね」
…そうだ。怒りに任せて歩きだしてしまったものの、準備してもらった部屋の場所はわからない。
「ありがとうございます、藤乃さん」
フフフ、と嬉しそうに笑った藤乃さんは、
「撫子様もたぶんかなりお怒りのはずですわ。もうあの時に、佐々木さんとソフィア様はそんな仲ではなかったとわかっていたのに蒸し返したりした蘇芳様をお許しにならないでしょう」
玄武州は黒でオニキス、青龍州は青でサファイア、朱雀州は赤でルビー、白虎州は白でホワイトオニキスにしてみました。気に入っていただけるといいんですが」
「ソフィア様、とても美しい色ですわ!ね、羅刹様。羅刹様にぴったりです、青い色」
「芙蓉…芙蓉にもとても似合ってる」
こちらもイチャイチャし始める青龍州知事夫妻。
「藤乃、キレイだ。おまえにふさわしい色だ。気高く美しい中に凛とした強さと優しさがある。ソフィアさん、最高のプレゼントだ。すごくすごく嬉しいよ、本当にありがとう」
褒めまくられた藤乃さんは真っ赤な顔で俯いてしまった。相変わらず可愛らしい。そしてやっぱり織部さんも英樹さんの息子さんなんだな…奥様への溺愛っぷりが半端ない。
「いいなー。僕も早く伽藍さんに嵌めてあげたい…僕のも、」
「朝霧、セクハラ発言はやめなさい。ソフィアさん、本当にありがとう。大事にします」
「喜んでいただけて嬉しいです。おふたりの愛の証として、ぜひ普段使いで…お手入れ方法とかは、ボールドウィン伯爵からご説明いたします」
朝霧さん以外は、夫婦で指を見せ合いながら和やかに微笑み合っている。良かった。…ぜひとも販路拡大に繋がりますように…!
「そういえばソフィアさん、明日、織部たちの結婚式が終わったらその足で玄武州に来ませんか?佐々木が会いたがっていまして、ぜひとも連れてきてくれと」
「また兄上は!ズルいですよ!」
朝霧さんに睨まれるが軽く受け流し、「ボールドウィン伯爵も是非。翡翠を使ったアクセサリーについてご教授ください」なんてやっている。すごいバイタリティー…。啓一郎さんは、こういうことも見越した上で、上総の性格とかも見越した上で、結婚させる相手を選んだのだろうか。上総が撫子さんを拒絶すること、否定することまで見越してわざと初めは上総に撫子さんを、としたのであれば…かなりの戦略家だ。現に蘇芳さんは、玄武州を盛り上げるべく活発に動いている。皇帝になれるはずがない、なんて諦念はまったく感じられない。羅刹さんも朝霧さんも、まだ目立った新規事業を始めてはいないものの、今までの知事とは違うだろう。蘇芳さんに負けまいとする気概が見え隠れする。
こうやってお互いが高め合えば、より国は発展していくだろう。…もしその思惑通りなのだとしたら、…啓一郎さんはすごい。
「お姉さま、いかがですか?」
自分の思考の海に沈んでしまっていて、声をかけられ覚醒する。
「お邪魔してもいいなら是非、佐々木さんに会いたいし…その、特別区にもいきたいです」
そうだ。ボールドウィン伯爵を是非とも特別区に…!
「そうですね、佐々木が頑張ってますので、ぜひ見てやってください。佐々木も自分の店を出したんですよ。お酒も飲めるけど食事も楽しめる、という店です。明日はそこで食事をしましょう」
「え…。蘇芳さんたちも、ですか?」
「もちろんです。あ、僕たちが一緒ではマズイですか?そうですよね、佐々木と込み入った話もあるでしょうし…。3ヶ月前に、いきなり恋人と離されてしまったわけですからね」
「…恋人?」
いきなり手をギュウッとされ、ハッと見上げると、それはそれは恐ろしい悪魔の瞳が私を見下ろしていた。
「フィー。どういうことか説明してください。佐々木さんとは、あの時フィーと共に捕らえられていた男性のことですよね。彼の恋人だったのですか、フィー。彼とお付き合いをしていたと?でもあの時、わたくしには『好きな男性はいない、エッチもしていない』と言いましたよね。あれはウソだったんですか、わたくしを騙したんですか、フィー、」
「落ち着け、ギデオンさん。佐々木とソフィアさんはそんなんじゃない。ったく、蘇芳兄さん。佐々木はゲイなんだろ。いきなり宗旨変えして女と付き合うはずないだろうが。あんなに言い寄られて、むしろ迷惑がってたのに。自分の奥さんにしか興味ないのはわかるけど、佐々木をメッチャ働かせておきながら彼についてきちんと理解しないのは上に立つ人間として恥ずかしいことだと思わないのか?
ギデオンさん、佐々木は男性が好きなんだ。俺は確かにここに来て日は浅いけど、ソフィアさんも佐々木もお互いそんなふうな目で見てないよ。な、落ち着け。ソフィアさんが怖がってるだろ」
織部さんの言葉に悪魔がビクッとして私を見下ろした。
「あ、…フィー、」
「…ギデオンさん、手、離して」
「フィー、あ、あの、」
私は悪魔の手を振り払い、
「申し訳ありません、こんな風にしてしまって…ボールドウィン伯爵、私、先に休ませていただきます。すみません皆さん、失礼します」
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…そうだ。怒りに任せて歩きだしてしまったものの、準備してもらった部屋の場所はわからない。
「ありがとうございます、藤乃さん」
フフフ、と嬉しそうに笑った藤乃さんは、
「撫子様もたぶんかなりお怒りのはずですわ。もうあの時に、佐々木さんとソフィア様はそんな仲ではなかったとわかっていたのに蒸し返したりした蘇芳様をお許しにならないでしょう」
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