お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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まさかのリアルBL

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たぶん宰相様は、自分が一番スティーブさんと近しいはずなのに、自分ではなく私に相談がある、と言ったことに…嫉妬したんだ。宰相様のスティーブさんに対する気持ちが恋愛かどうかはまだわからないけど、少なくともスティーブさんに頼られるのは誰でもなく自分でありたい、という気持ちであるのは間違いない。

そう思ってニヤニヤしていると、スティーブさんに「あの、ソフィア様…?」と訝しげな顔で見られた。

「あ、すみません、つい妄想が先走って…あの、スティーブさん。差し支えなければ、なんですけど、いつから宰相様を好きなんですか?」

スティーブさんはまた顔を赤らめると、恥ずかしそうに俯いた。

「俺が、エリオット様の近衛に選ばれたのは3年前なんですが、俺がエリオット様の近衛になったのを面白く思わない人間もいまして…まあ、自分のほうが実力がある、とか、そういう自尊心からくる嫉妬なんでしょうけど。男も、陰湿なヤツは結構いますからね。地味にやられて落ち込んでいたんですが、そのことをエリオット様は知っていたみたいなんです。でもエリオット様は、ただ一言『スティーブ、おまえに私の命を預ける。頼むぞ』と仰って」

「スティーブ先輩が陰湿な嫌がらせを受けていたのを知っていたけれど、あえてやめさせることをしなかったのは自分が圧力をかけたところで根本的な解決になるとは思わなかったからなんでしょうね」

悪魔の言葉にコクリと頷いたスティーブさんは、

「エリオット様にいただいた言葉で、俺は強くなれました。近衛になったばかりなのに、全幅の信頼を寄せてくださっているのかと思ったら、こんなくだらないことで落ち込んでいるよりも、自分を鍛え、人間性を磨くべきだと思えて。エリオット様の信頼に足る人間に成長したいと努力することができたんです」

スティーブさんはその時を思い出すように目を細めた。

「ただ、その時は特に今みたいな感情はなくて、エリオット様のお役に立てる人間になりたいと思っていただけだったのですが、…元ご長男の事件であの元愚妻に罵られるエリオット様を見て、ああ、俺が守ってさしあげたい、と…騎士としてではなく、ひとりの男としてエリオット様を守って、…甘やかして差し上げたいと、そう思ったんです」

「宰相閣下は優秀であり、ご自分にも厳しい方ですから…なかなか気を抜ける場所もなかったでしょうに、唯一安らげると思っていた家庭でまさかの仕打ちを受けたわけですからね。…え、えと、陛下もあの時はかなり胸を痛めていらっしゃいました」

悪魔の言葉になんとなく引っ掛かりを覚えたが、それがなんなのかイマイチはっきりわからなかった。

「スティーブさんは、宰相様を甘やかしてあげたいんですね」

「そ、うです。俺はエリオット様より年下ですし、こんな言葉烏滸がましいとお思いでしょうが…でも、俺の前でだけは、自分をさらけ出して、安心して過ごしてもらいたい…エリオット様の、拠り所になりたいんです」

健気…!スティーブさんたら、なんて健気なんだろう…。

「とりあえず、宰相様に想いを伝えるのが先決だと思います。こんな言い方したら、気を悪くされるかもしれないんですけど、…宰相様は、スティーブさんの恋愛感情を受け入れられるかわからないですし。そのあたりは、男女の恋愛と変わらないですよね。セックスうんぬんはそれからです」

スティーブさんは、「そうですね…」ととたんにしょんぼりしてしまう。

「ただ、あの…私の個人的な感触ですけど、少なくとも宰相様は私にヤキモチを妬くくらいにはスティーブさんを好きだと思いますよ」

「ヤキモチ、ですか?エリオット様が?」

「ええ。昨日、私に相談があると言った後に、宰相様の機嫌が悪くなったじゃないですか。あれは嫉妬です。間違いありません」

スティーブさんは、私の言葉にクビを傾げたものの、

「とりあえず、当たって砕けろですね。ひとりで悶々していてもどうしようもないですし、エリオット様に俺の気持ちをお伝えしてみます」

すると悪魔が、

「もし宰相閣下が先輩の気持ちを受け入れなかったら、気まずくないんですか。今後、どうされるのですか」

…まあ、確かに。そうだけど…。

しかしスティーブさんは、ヘニャリと笑うと、

「その時はその時で、お側にいられるだけで幸せだと思うことにします」

ううー、この健気なワンコの想い…。宰相様、受け入れてくれないかなぁ…。
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