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まさかのリアルBL
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チンピラ、王妃様、悪魔と共に馬車に乗る。王妃様が隣に座ろうとしたら、悪魔は私をスッと抱き上げ横抱きにし、ふたりと向かい合うように座ってしまった。
「ギデオン!」
「王妃陛下。わたくしは、きちんとフィーに自分の気持ちを伝えました。そのうえで、フィーはわたくしと性交してくれると約束してくれました。半年離れていた分を埋めなくてはならないので。今は腕も折れていますし」
王妃様は目を丸くすると、
「ソフィアちゃん、いいの?」
「いいというか…唯一エッチできそうなのが私だというなら…私、今世では処女ですけど、前世では一応エッチしてますし。陛下のお許しが出て無事離縁できたら、ソルマーレ国からは出るつもりですから、」
「…なんですって?」
頭の上からひっくい声が振ってきたと思ったら、対面からも「なんだと?」と聞こえてきた。
「ソフィアおまえ、」
「フィー、出ていくとは、」
チンピラと悪魔は「俺が話してる!」「陛下、少し黙ってください!」と言い合っている。なんかマズイこと言ったかな、と思っていたら王妃様が、
「ふたりとも黙りなさい!」
と怒鳴った。
王妃様は私をじっと見ると、
「ソフィアちゃん、離縁が成立したらソルマーレ国から出ていくつもりなの?」
「…あの。まだ、はっきりは決めてないんですが、少なくともソフィアの実家には戻りたくないですし、皇太子妃だった、ってことを知られているわけですから…それよりは、柵がない場所で心機一転、」
「実家に戻る必要なんてないわ。離宮で生活すればいいのよ。なんなら、王宮に移っても構わないのよ、今すぐにでも」
「いや、そんなわけには…。皇太子がいる所に住みたくないですし…」
王妃様は「それはそうね」と頷くと、「あなた」とチンピラを見た。
「皇太子の恋人が最近ずいぶん頻繁に王宮に入って来ようとしているでしょう。機密や警護の面から見たらあの娘を入れるべきではないわ。城門からすぐの場所に、離宮みたいな建物があるじゃない。あそこに皇太子の住まいを移せばいいわ。王宮には入らせないで。皇太子も恋人と思う存分イチャイチャできるんだから文句ないでしょ。その前に、準備として、あの建物は塀で覆いましょ。入り口をつけて、そこに3人くらい見張りをつけておけば、不用意に出入りもできないでしょ。壁はいつまでできるかしら」
「そうさな…」
「ちょ、ちょっと待ってください、あの、」
チンピラと王妃様は揃って私を見ると、
「ソフィア」「ソフィアちゃん」
と言った。ふたりからの圧力に思わず怯む。
「あのね。私は、皇太子の産みの親じゃないから、貴女のこともどうでも良かったの。だけど、ソフィアちゃん、貴女の中身が変わったことで、私は貴女に関わりたくなった。皇太子とは離縁するのよね?」
「…お許しが、出るなら」
王妃様はひとつ頷くと、
「今までは離宮に暮らしてたけど、これからは王宮で生活してほしい。理由は、私たち王族がどのように生きているのか…生活しかり、公務しかり、それを間近で見て学んで欲しいの。貴女が、ジャポン皇国に行く前に一緒に1ヶ月勉強したでしょ?王宮にいれば、もっと気軽に教えることができるわ。王宮に来たら私の補佐官に任命するから、公務を共にこなしてちょうだい。たくさん学ぶことがあるけど、貴女ならできる」
突然の内容に理解が及ばない。なんで…?
「あの、王妃陛下、私は離縁したら…王族ではなくなります。それなのに、なぜ私に王族としての生活をさせようとなさるのですか?
やりたくない、とかではなくて、そんな時間を割いていただいても、勿体無いとしか思えません」
王妃様は私の質問には答えず、
「やりたくないわけではないなら、やりましょう。いいわね」
とニコリとした。目が笑ってない。元より、逆らえる相手ではない。王妃様の隣でうんうんと頷いていたチンピラは、
「ソフィア、おまえは離縁しても俺の娘であることに変わりはねえ。これは、おまえがいやだと言っても絶対だ。おまえみたいな面白い女を、俺は逃がす気はねえぞ」
と言う。…どういうこと?
「陛下、離縁したら私は陛下の義理の娘ではなくなりますよね、…どういうことですか?離縁しても娘のまま?」
チンピラも私の質問には答えず、「とりあえず」と王妃様を見た。
「ソフィアは3ヶ月後にジャポン皇国の朱雀州知事の結婚式に呼ばれてるだろ。帰ってきたら王宮に入れるように準備する。3ヶ月あれば壁もできるだろ。どうだ」
王妃様が頷くと、悪魔が「王妃陛下」と言った。
「なに?ギデオン」
「3ヶ月後にフィーが王宮に移るまでは、公務は免除していただきたいです」
「理由は?」
「先ほどフィーはわたくしと性交してくれると言いました。ただ、今は腕も折れてますし、悪化しても困るので無理はできません。その間、性交はしないにしても、わたくしのことを好きになってもらえるように…その時間をいただきたいのです」
しごく丁寧な言葉で言ってるけど、要は「セックスするからそのための時間をよこせ」ってことだよね…。悪魔のメンタルの強さにこちらのほうが恥ずかしくなる。
「わかったわ。まぁ、今の貴方では無理でしょうけどねぇ、ギデオン?」
ニヤリとする王妃様は魔王に変化していた。煽り具合が半端ない。
私をギュッと抱き締めると、悪魔は私の頬に口づけた。
「…フィーは、絶対に離しません。わたくしを、必ず好きにさせてみせます」
…圧力かけられてる気持ちがするのは、私だけなんだろうか。
「ギデオン!」
「王妃陛下。わたくしは、きちんとフィーに自分の気持ちを伝えました。そのうえで、フィーはわたくしと性交してくれると約束してくれました。半年離れていた分を埋めなくてはならないので。今は腕も折れていますし」
王妃様は目を丸くすると、
「ソフィアちゃん、いいの?」
「いいというか…唯一エッチできそうなのが私だというなら…私、今世では処女ですけど、前世では一応エッチしてますし。陛下のお許しが出て無事離縁できたら、ソルマーレ国からは出るつもりですから、」
「…なんですって?」
頭の上からひっくい声が振ってきたと思ったら、対面からも「なんだと?」と聞こえてきた。
「ソフィアおまえ、」
「フィー、出ていくとは、」
チンピラと悪魔は「俺が話してる!」「陛下、少し黙ってください!」と言い合っている。なんかマズイこと言ったかな、と思っていたら王妃様が、
「ふたりとも黙りなさい!」
と怒鳴った。
王妃様は私をじっと見ると、
「ソフィアちゃん、離縁が成立したらソルマーレ国から出ていくつもりなの?」
「…あの。まだ、はっきりは決めてないんですが、少なくともソフィアの実家には戻りたくないですし、皇太子妃だった、ってことを知られているわけですから…それよりは、柵がない場所で心機一転、」
「実家に戻る必要なんてないわ。離宮で生活すればいいのよ。なんなら、王宮に移っても構わないのよ、今すぐにでも」
「いや、そんなわけには…。皇太子がいる所に住みたくないですし…」
王妃様は「それはそうね」と頷くと、「あなた」とチンピラを見た。
「皇太子の恋人が最近ずいぶん頻繁に王宮に入って来ようとしているでしょう。機密や警護の面から見たらあの娘を入れるべきではないわ。城門からすぐの場所に、離宮みたいな建物があるじゃない。あそこに皇太子の住まいを移せばいいわ。王宮には入らせないで。皇太子も恋人と思う存分イチャイチャできるんだから文句ないでしょ。その前に、準備として、あの建物は塀で覆いましょ。入り口をつけて、そこに3人くらい見張りをつけておけば、不用意に出入りもできないでしょ。壁はいつまでできるかしら」
「そうさな…」
「ちょ、ちょっと待ってください、あの、」
チンピラと王妃様は揃って私を見ると、
「ソフィア」「ソフィアちゃん」
と言った。ふたりからの圧力に思わず怯む。
「あのね。私は、皇太子の産みの親じゃないから、貴女のこともどうでも良かったの。だけど、ソフィアちゃん、貴女の中身が変わったことで、私は貴女に関わりたくなった。皇太子とは離縁するのよね?」
「…お許しが、出るなら」
王妃様はひとつ頷くと、
「今までは離宮に暮らしてたけど、これからは王宮で生活してほしい。理由は、私たち王族がどのように生きているのか…生活しかり、公務しかり、それを間近で見て学んで欲しいの。貴女が、ジャポン皇国に行く前に一緒に1ヶ月勉強したでしょ?王宮にいれば、もっと気軽に教えることができるわ。王宮に来たら私の補佐官に任命するから、公務を共にこなしてちょうだい。たくさん学ぶことがあるけど、貴女ならできる」
突然の内容に理解が及ばない。なんで…?
「あの、王妃陛下、私は離縁したら…王族ではなくなります。それなのに、なぜ私に王族としての生活をさせようとなさるのですか?
やりたくない、とかではなくて、そんな時間を割いていただいても、勿体無いとしか思えません」
王妃様は私の質問には答えず、
「やりたくないわけではないなら、やりましょう。いいわね」
とニコリとした。目が笑ってない。元より、逆らえる相手ではない。王妃様の隣でうんうんと頷いていたチンピラは、
「ソフィア、おまえは離縁しても俺の娘であることに変わりはねえ。これは、おまえがいやだと言っても絶対だ。おまえみたいな面白い女を、俺は逃がす気はねえぞ」
と言う。…どういうこと?
「陛下、離縁したら私は陛下の義理の娘ではなくなりますよね、…どういうことですか?離縁しても娘のまま?」
チンピラも私の質問には答えず、「とりあえず」と王妃様を見た。
「ソフィアは3ヶ月後にジャポン皇国の朱雀州知事の結婚式に呼ばれてるだろ。帰ってきたら王宮に入れるように準備する。3ヶ月あれば壁もできるだろ。どうだ」
王妃様が頷くと、悪魔が「王妃陛下」と言った。
「なに?ギデオン」
「3ヶ月後にフィーが王宮に移るまでは、公務は免除していただきたいです」
「理由は?」
「先ほどフィーはわたくしと性交してくれると言いました。ただ、今は腕も折れてますし、悪化しても困るので無理はできません。その間、性交はしないにしても、わたくしのことを好きになってもらえるように…その時間をいただきたいのです」
しごく丁寧な言葉で言ってるけど、要は「セックスするからそのための時間をよこせ」ってことだよね…。悪魔のメンタルの強さにこちらのほうが恥ずかしくなる。
「わかったわ。まぁ、今の貴方では無理でしょうけどねぇ、ギデオン?」
ニヤリとする王妃様は魔王に変化していた。煽り具合が半端ない。
私をギュッと抱き締めると、悪魔は私の頬に口づけた。
「…フィーは、絶対に離しません。わたくしを、必ず好きにさせてみせます」
…圧力かけられてる気持ちがするのは、私だけなんだろうか。
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