お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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この先の道は

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30分程で戻ってきた悪魔は、私の荷物をいそいそとまとめ始めた。

「ギデオンさん、本気で今日帰る気なの?」

「就任式も終わったのですよ、フィー。何か問題がありますか」

問題だらけだよ。まだ誰にも何にも言ってないのに、帰るなんて勝手に決めたりしたら。

焦っていると、「お姉さま」と撫子さんの声と共にノックの音がした。

「はい、どうぞ」

撫子さんは入ってくると、悪魔にペコリと一礼をした。悪魔も軽くお辞儀をしているが手を止める気配はない。その姿を横目に見ながら撫子さんは、

「お姉さま、ケガが治るまではソルマーレ国にお帰りになると聞きました。お姉さまのケガが治るのに合わせて織部様が結婚式を挙げるから、ぜひ参加してくれと仰ってます。3ヶ月後くらいを予定するそうです」

もう帰る話にしてきちゃったのか…チンピラにまで怒られたのにこの悪魔はブレないなぁ…。

でも確かに、利き腕がこんな状態では一人でできないことも出てくるだろうし、その方がいいのかも。王妃様も、また来たらいいって言ってくれてたから、ジャポン皇国に来ることは許可してもらえるだろう。

「わかりました、織部さんによろしく伝えてください」

撫子さんはニッコリすると、悪魔に向かって、

「ギデオン様も、是非いらしてくださいと。織部様がご招待したいそうです」

悪魔は、「ありがとうございます」と言うと、なんとなく嬉しそうな顔になった。

英樹さんや啓一郎さんに会う前に、悪魔によって馬車に押し込められ強制送還された私は、船の中で一晩中悪魔に抱き締められていた。

「ギデオンさん、眠れないんだけど」

「ああ、船の中だと慣れないからですね。大丈夫ですよ、ソルマーレ国についたら一日休みましょう」

違う、と抗議したかったが悪魔があまりに嬉しそうなので言えなくなった。仕方がないので、

「ギデオンさん、エッチの仕方ってわかるの?」

と話を振ってみた。

悪魔はスッと真面目な顔になると、

「蘇芳さんに、たくさんお土産をいただいたので勉強するつもりです。フ、フィーが、痛くないように、気持ちよくなれるように頑張りますから」

と顔を赤らめた。…お土産?

どうやら悪魔は、ティーンズラブの漫画とDVD一式をいただいてきたようだ。

「フィーの寝室の漫画も読みましたが、あれは男性同士ですから少し異なりますからね」

「え!?私のコレクション、勝手に読んだの!?」

「わたくしは、手紙に書いたんです。フィーのことを知りたいから、読むのを許してほしいと。手紙を握り潰した王妃陛下の責任です。わたくしを責めるのは間違ってますよ、フィー」

そう言って悪魔は私の耳元に口づけた。

「…たくさん、フィーが気持ちよくなれるようにします。フィーは、今はわたくしを好きではないですが、フィーの漫画では、『好きじゃなかったのに絆される』という描写がありました。わたくしも、これからはフィーにどんどん愛を囁きます。もちろん、フィーのおっぱいも舐めます」

…そんなにおっぱいを舐めたいのか、悪魔よ。

「男性同士と言えば、」

悪魔はおっぱい星人、と結論づけていると、いきなり悪魔が意外なことを言い出した。

「フィーは、宰相閣下の近衛騎士…スティーブ先輩を知っていますよね。わたくしが読んでいたら、先輩が是非にも読みたいと…まあ、わたくしも先輩も、まだジャポン語が完璧ではないのでわからない部分も多々あるのですが、フィーが帰ってきたら相談したいことがあると伝えてくれと頼まれました」

「え!?スティーブさんにまで見せたの!?」

「手紙に書きました。わたくしは悪くありません。返事をよこさないフィーが悪いのです」

いや、王妃様に握り潰されるような手紙を書いた貴方が悪いよね!…しかし、スティーブさん、

「スティーブさん、気持ち悪がってなかった…?」

「いいえ、むしろ、妃殿下は素晴らしいと称賛していました」

…なぜそうなるのか?

訳がわからないまま更に悶々として、気付いたらソルマーレ国の港に着いていた。
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