お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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この先の道は

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「ギデオンさん、約束の内容を教えてもらわないと、いいも悪いも、」

「断らないなら、教えます」

また…私には選択肢ないじゃん。

ただ、今の話を聞いて、今のところ私しか人間に見えず、しかも自慰行為が虚しい、と言われてしまえば、だいたい内容は予想がついた。

「…私と、エッチしたいってこと?」

悪魔はまた真っ赤な顔になると、ブンブンと首を縦に振り、…そのあと小さな声で「…ダメですか」と呟いた。

なんというか…。ソフィア本人だったらマズイんだろうけど、私は3年後、離縁したらソルマーレ国からは出る予定だし、別に処女じゃなくても構わないって人がいるかもしれないし。そもそも、結婚するかどうかもわからないし。ギデオンさんが、私以外の女性をもし選ぶことになったとしても、今は私しかいないんだから、人命救助みたいなものだと考えればいいのかなぁ。したいのにできない、って…8年、セックスレスだった私には痛いほどよくわかる。

「ギデオンさんがいいなら、いいよ」

「わたくしがいいなら、って、わたくしはフィーが好きなんですよ!お願いしているのはわたくしです!」

私しか人間に見えないんだから、好きだと思うしかないだろう。吊り橋効果、じゃないけど、すりかえられてしまったのだ。ギデオンさんに言ったところで頑なに認めないだろうから言わないけど。

私は、そっと悪魔の手を握った。今までの悪魔の寂しさを思うと、なんとなく鼻の奥がツンとなる。筆下ろしかぁ…あ、ソフィアも処女だった。

そんなことを考えていたら、悪魔がギュッと抱きついてきた。

「痩せたら性欲が出ると言っていたから、痩せたフィーを見て心臓が止まるかと思いました。もう恋人ができていたりしたらどうしようかと。でも、出てないと言ってくれたので良かったです。あの、フィー、」

「なに?」

「フィーは、その、腕を折られてしまってますし、すぐに性交は難しいと思うのですが、あの、…負担がかからなければ、触ったり、舐めたりするのはいいですか」

真剣な顔だが話している内容はかなりぶっ飛んでいる。エロい方向に。舐める?

「…舐めたいの?」

「舐めたいです。まずは、フィーのおっぱいを舐めたいです」

キレイな顔でキリッとしながら、「おっぱいを舐めたい」とか言うのなんとかならないのかな。まあ、でもいいか。あんな鬼畜にやられるのはイヤだったけど、少なくとも悪魔とは一緒に寝てきた仲間みたいなもんだし。ソフィアも許してくれるだろう、…たぶん。

「…ダメですか」

しょんぼりしながら言うのはズルいと思うんだけどなぁ…。

「ええと、ギデオンさん」

「やっぱりイヤになったんですか」

「ううん、そうじゃなくて。あのね。今は私しか人間に見えないわけだよね。でも、もし今後、人間に見える人が出てきたら、その時は私に遠慮したりせず、新しい恋をしてみると約束してくれないかな」

悪魔はとたんにギュッと眉をしかめると、イヤそうな顔になった。

「そんなにしてまで、わたくしのことがイヤなんですか。よくわかりました」

…なぜそうなる?

「ギデオンさん、そうじゃなくて、」

悪魔はプイッと横を向き、むくれた顔になった。…めんどくせぇ男だなぁ…。前からわかってたことだけど。まあ、恋人になるわけじゃないからな。

自分でそうしたくせに、私が黙っていると、窺うようにチラチラこちらを見ている。ここは中身が40歳の私が折れるしかないか。

「ギデオンさん、キスしてもいい?」

「え?」

ビックリしたような顔でこちらを見た悪魔にチュッとする。唇を離すと、とたんに噛みつくように口づけられた。

ハムハムと唇を食むようにしながら、舌で舐める悪魔の手が、私の胸に伸びてきて、ホニャリと触れる。自分で触れたくせに、悪魔のカラダがビクッとなった。

「フ、フィー、こ、こんな、や…柔らかいの、触って、大丈夫なのですか、壊したら、」

「ギデオンさん、おっぱいは強く握っても壊れないよ。痛いからあんまり強いのはヤダけど、心配しなくても大丈夫だから」

悪魔の手に自分の手を重ねてギュッと押し付けるようにしたら、「フィー!」と叫んで押し倒してきた。前世で、童貞の人としたことがないから、どうしたらいいのかわからない。とりあえず悪魔がしたいようにしてもらうしかないかな。

上から私を見下ろす悪魔の顔は、ほんのりと赤く染まりなんだか色っぽかった。

「フィー、フィーのおっぱい、柔らかいです。もっと、触りたい、あの、舐めてもいいですか」

悪魔はたどたどしい手つきで私のブラウスのボタンを外し、そっとはだけると、「う…っ」と呻いて股関を押さえた。

「…ギデオンさん?」

「フィー…。すみません、我慢が…あの、ソルマーレ国に帰ってから、また、させてくださいっ」

ガバッと起き上がり、ドアに追突しそうな勢いで「く…っ」とまた呻きながら出て行った。大丈夫だろうか。

なんだか突拍子もないことを約束してしまったが、寂しい気持ちで生きてきた悪魔が少しでも寂しくなくなるなら、それもいいような気がした。
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