お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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拗らせすぎる知事予定の夫妻たち(三男除く)

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次の日から、私たち3人…私、蘇芳さん、撫子さんは、羅刹さんと伽藍さんという名のふたりの鬼にしごかれることになった。「痩せるには走り込みが一番!」という体力バカふたりに竹刀を持って追いかけ回される。ヘトヘトになって戻ってくる私たちを、芙蓉さんが手作りドリンクとともに迎えてくれる。

昨夜、羅刹さんは、芙蓉さんに口づけをして、手を繋いで寝たと真っ赤になって報告してきた。どうやら私は経験値ゼロに近しいにも関わらず彼らの恋愛マスターになってしまったらしい。…虚しい。私は相手がいないのに。

まあエッチに関しては、知識だけはあるからね!と悲しく開き直って彼らのお手伝いをすることにした。

羅刹さんはほぼ童貞とおなじレベルなので、蘇芳さんとともにティーンズラブの漫画を読ませることにした。はじめは、「な…っ、なんて、ふしだらな…っ」なんて真っ赤になってたけど、「同意も得ず突っ込む男より、こういう身も心も甘く蕩けさせて気持ちよくしてくれる男のほうがいいに決まってるじゃん。ふしだらとか言ってるけど、ふしだらなことしたじゃん、すべて飛び越して最後までしちゃったじゃん」と言ったら大人しく読みだした。まったく、頭の固い男だよ。だから親にまで「脳筋」なんて言われるんだよ。

…無理矢理走らされている仕返しをしているわけではない、けして。たぶん。

伽藍さんとは同じ部屋になったおかげでたくさん話をするようになった。

「10年も前から私を知っていたなんて、思いもしなかった…」

昨日の朝霧さんの告白にはかなり衝撃を受けたらしい。確かに、一方的に知られてて、「僕の!」宣言されても困惑しかないよねぇ…。

「私は、男ばかりの兄弟でね。我が家は剣士を育てる家だったから、自然と剣の道に進んで…女性らしいことなんて何にもしてこなかったから、拝田家の嫁にと言われた時は何かの間違いじゃないかと思ったんだ…」

伽藍さんはフッと自嘲気味に笑うと、

「…私のような女が妻になっても、朝霧を満足させることはできない」

と寂しそうに言った。

「…別に満足させなくてもいいんじゃないですか?」

「…え?」

「伽藍さん、私は前世、40歳で死んだんですけど。私は、32歳からセックスしてません。かたや、私の同僚は、45歳でもセックスしてました。人生がひとりひとり違うように、セックスだってひとりひとり違って当たり前ですよ。伽藍さんは、朝霧さんを満足させられない、って言うけど、伽藍さんだって朝霧さんでは満足できなくなるかもしれませんよ?始まりはみんな一緒なんだし、もし朝霧さんが他の女を抱いてきたことに嫌悪感があるなら、」

伽藍さんは慌てたように首を振ると、

「いや、あの、…先ほど言ったように私は男ばかりに囲まれてきて、私も男みたいなものだったから、欲求を吐き出すために、その…お金を出して、女性に相手をしてもらう、なんていう話も聞いていたし、男性の場合、生理現象として必要なことだとわかっているし…朝霧も、誰か特定の相手と何度もしていたわけではないらしいし、その、嫌悪感は、ないんだが、いかんせん、自分のカラダに、自信がなくて…。たくさん、キレイなカラダを見てきた朝霧が、私に欲情してくれるのだろうか」

「少なくとも、朝霧さんは伽藍さんが好きなんですから欲情するに決まってます。昨日だって、犯す宣言してたじゃないですか。伽藍さんを抱きたいって」

「でも、実際カラダを見たら、」

私は伽藍さんの手をギュッと握った。

「わからない、相手の心をなんだかんだと妄想してみたところで答えはでませんよ。…そうだ、伽藍さん。今夜は、みんなでお風呂に入りませんか?」

「お風呂…?」

そんなわけで、私、撫子さん、芙蓉さん、伽藍さんの4人でお風呂に入ることにした。

「…伽藍様は、キレイなカラダですね」

ホウッとため息をつくように芙蓉さんが言った。

「え、…いや、私は」

「この引き締まっているのに柔らかそうなお腹。胸も大きいし。まったく、見たこともないくせに、あの三男はずいぶんひどいことを言いますね!」

プリプリ怒りながらカラダを洗う芙蓉さんは、全体が丸みを帯びて柔らかそうだ。胸はそんなに大きくないが、お尻がプリンとしてむしゃぶりつきたくなる…ハッ、いかん。オヤジ目線になっていた。

そして確かに伽藍さんは胸が大きい…服を着てるときはむしろぺったんこに見えたのに…?

「ああ、それは…さらしをキツく巻いているから…剣を振るのに、邪魔になるので」

…なるほど。こんなに素晴らしいカラダを見たら朝霧さんはさらに伽藍さんに執着するんじゃないかな…。あの言動からして、朝霧さんは執着・ヤンデレ系…もしかしたら伽藍さんを閉じ込めて出さなくなるかもしれない。

物理的に離しておく期間が長くなるとヤバいかも、なんて悶々していたら、撫子さんが意外なことを言った。

「そう言えば、お姉さま、伽藍様。私も先ほど蘇芳様から聞いたのですが、朝霧様、今朝早く白虎州の伽藍様のご実家に行かれたそうです」

…え?
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