53 / 161
拗らせすぎる知事予定の夫妻たち(三男除く)
3
しおりを挟む
次の日から、私たち3人…私、蘇芳さん、撫子さんは、羅刹さんと伽藍さんという名のふたりの鬼にしごかれることになった。「痩せるには走り込みが一番!」という体力バカふたりに竹刀を持って追いかけ回される。ヘトヘトになって戻ってくる私たちを、芙蓉さんが手作りドリンクとともに迎えてくれる。
昨夜、羅刹さんは、芙蓉さんに口づけをして、手を繋いで寝たと真っ赤になって報告してきた。どうやら私は経験値ゼロに近しいにも関わらず彼らの恋愛マスターになってしまったらしい。…虚しい。私は相手がいないのに。
まあエッチに関しては、知識だけはあるからね!と悲しく開き直って彼らのお手伝いをすることにした。
羅刹さんはほぼ童貞とおなじレベルなので、蘇芳さんとともにティーンズラブの漫画を読ませることにした。はじめは、「な…っ、なんて、ふしだらな…っ」なんて真っ赤になってたけど、「同意も得ず突っ込む男より、こういう身も心も甘く蕩けさせて気持ちよくしてくれる男のほうがいいに決まってるじゃん。ふしだらとか言ってるけど、ふしだらなことしたじゃん、すべて飛び越して最後までしちゃったじゃん」と言ったら大人しく読みだした。まったく、頭の固い男だよ。だから親にまで「脳筋」なんて言われるんだよ。
…無理矢理走らされている仕返しをしているわけではない、けして。たぶん。
伽藍さんとは同じ部屋になったおかげでたくさん話をするようになった。
「10年も前から私を知っていたなんて、思いもしなかった…」
昨日の朝霧さんの告白にはかなり衝撃を受けたらしい。確かに、一方的に知られてて、「僕の!」宣言されても困惑しかないよねぇ…。
「私は、男ばかりの兄弟でね。我が家は剣士を育てる家だったから、自然と剣の道に進んで…女性らしいことなんて何にもしてこなかったから、拝田家の嫁にと言われた時は何かの間違いじゃないかと思ったんだ…」
伽藍さんはフッと自嘲気味に笑うと、
「…私のような女が妻になっても、朝霧を満足させることはできない」
と寂しそうに言った。
「…別に満足させなくてもいいんじゃないですか?」
「…え?」
「伽藍さん、私は前世、40歳で死んだんですけど。私は、32歳からセックスしてません。かたや、私の同僚は、45歳でもセックスしてました。人生がひとりひとり違うように、セックスだってひとりひとり違って当たり前ですよ。伽藍さんは、朝霧さんを満足させられない、って言うけど、伽藍さんだって朝霧さんでは満足できなくなるかもしれませんよ?始まりはみんな一緒なんだし、もし朝霧さんが他の女を抱いてきたことに嫌悪感があるなら、」
伽藍さんは慌てたように首を振ると、
「いや、あの、…先ほど言ったように私は男ばかりに囲まれてきて、私も男みたいなものだったから、欲求を吐き出すために、その…お金を出して、女性に相手をしてもらう、なんていう話も聞いていたし、男性の場合、生理現象として必要なことだとわかっているし…朝霧も、誰か特定の相手と何度もしていたわけではないらしいし、その、嫌悪感は、ないんだが、いかんせん、自分のカラダに、自信がなくて…。たくさん、キレイなカラダを見てきた朝霧が、私に欲情してくれるのだろうか」
「少なくとも、朝霧さんは伽藍さんが好きなんですから欲情するに決まってます。昨日だって、犯す宣言してたじゃないですか。伽藍さんを抱きたいって」
「でも、実際カラダを見たら、」
私は伽藍さんの手をギュッと握った。
「わからない、相手の心をなんだかんだと妄想してみたところで答えはでませんよ。…そうだ、伽藍さん。今夜は、みんなでお風呂に入りませんか?」
「お風呂…?」
そんなわけで、私、撫子さん、芙蓉さん、伽藍さんの4人でお風呂に入ることにした。
「…伽藍様は、キレイなカラダですね」
ホウッとため息をつくように芙蓉さんが言った。
「え、…いや、私は」
「この引き締まっているのに柔らかそうなお腹。胸も大きいし。まったく、見たこともないくせに、あの三男はずいぶんひどいことを言いますね!」
プリプリ怒りながらカラダを洗う芙蓉さんは、全体が丸みを帯びて柔らかそうだ。胸はそんなに大きくないが、お尻がプリンとしてむしゃぶりつきたくなる…ハッ、いかん。オヤジ目線になっていた。
そして確かに伽藍さんは胸が大きい…服を着てるときはむしろぺったんこに見えたのに…?
「ああ、それは…さらしをキツく巻いているから…剣を振るのに、邪魔になるので」
…なるほど。こんなに素晴らしいカラダを見たら朝霧さんはさらに伽藍さんに執着するんじゃないかな…。あの言動からして、朝霧さんは執着・ヤンデレ系…もしかしたら伽藍さんを閉じ込めて出さなくなるかもしれない。
物理的に離しておく期間が長くなるとヤバいかも、なんて悶々していたら、撫子さんが意外なことを言った。
「そう言えば、お姉さま、伽藍様。私も先ほど蘇芳様から聞いたのですが、朝霧様、今朝早く白虎州の伽藍様のご実家に行かれたそうです」
…え?
昨夜、羅刹さんは、芙蓉さんに口づけをして、手を繋いで寝たと真っ赤になって報告してきた。どうやら私は経験値ゼロに近しいにも関わらず彼らの恋愛マスターになってしまったらしい。…虚しい。私は相手がいないのに。
まあエッチに関しては、知識だけはあるからね!と悲しく開き直って彼らのお手伝いをすることにした。
羅刹さんはほぼ童貞とおなじレベルなので、蘇芳さんとともにティーンズラブの漫画を読ませることにした。はじめは、「な…っ、なんて、ふしだらな…っ」なんて真っ赤になってたけど、「同意も得ず突っ込む男より、こういう身も心も甘く蕩けさせて気持ちよくしてくれる男のほうがいいに決まってるじゃん。ふしだらとか言ってるけど、ふしだらなことしたじゃん、すべて飛び越して最後までしちゃったじゃん」と言ったら大人しく読みだした。まったく、頭の固い男だよ。だから親にまで「脳筋」なんて言われるんだよ。
…無理矢理走らされている仕返しをしているわけではない、けして。たぶん。
伽藍さんとは同じ部屋になったおかげでたくさん話をするようになった。
「10年も前から私を知っていたなんて、思いもしなかった…」
昨日の朝霧さんの告白にはかなり衝撃を受けたらしい。確かに、一方的に知られてて、「僕の!」宣言されても困惑しかないよねぇ…。
「私は、男ばかりの兄弟でね。我が家は剣士を育てる家だったから、自然と剣の道に進んで…女性らしいことなんて何にもしてこなかったから、拝田家の嫁にと言われた時は何かの間違いじゃないかと思ったんだ…」
伽藍さんはフッと自嘲気味に笑うと、
「…私のような女が妻になっても、朝霧を満足させることはできない」
と寂しそうに言った。
「…別に満足させなくてもいいんじゃないですか?」
「…え?」
「伽藍さん、私は前世、40歳で死んだんですけど。私は、32歳からセックスしてません。かたや、私の同僚は、45歳でもセックスしてました。人生がひとりひとり違うように、セックスだってひとりひとり違って当たり前ですよ。伽藍さんは、朝霧さんを満足させられない、って言うけど、伽藍さんだって朝霧さんでは満足できなくなるかもしれませんよ?始まりはみんな一緒なんだし、もし朝霧さんが他の女を抱いてきたことに嫌悪感があるなら、」
伽藍さんは慌てたように首を振ると、
「いや、あの、…先ほど言ったように私は男ばかりに囲まれてきて、私も男みたいなものだったから、欲求を吐き出すために、その…お金を出して、女性に相手をしてもらう、なんていう話も聞いていたし、男性の場合、生理現象として必要なことだとわかっているし…朝霧も、誰か特定の相手と何度もしていたわけではないらしいし、その、嫌悪感は、ないんだが、いかんせん、自分のカラダに、自信がなくて…。たくさん、キレイなカラダを見てきた朝霧が、私に欲情してくれるのだろうか」
「少なくとも、朝霧さんは伽藍さんが好きなんですから欲情するに決まってます。昨日だって、犯す宣言してたじゃないですか。伽藍さんを抱きたいって」
「でも、実際カラダを見たら、」
私は伽藍さんの手をギュッと握った。
「わからない、相手の心をなんだかんだと妄想してみたところで答えはでませんよ。…そうだ、伽藍さん。今夜は、みんなでお風呂に入りませんか?」
「お風呂…?」
そんなわけで、私、撫子さん、芙蓉さん、伽藍さんの4人でお風呂に入ることにした。
「…伽藍様は、キレイなカラダですね」
ホウッとため息をつくように芙蓉さんが言った。
「え、…いや、私は」
「この引き締まっているのに柔らかそうなお腹。胸も大きいし。まったく、見たこともないくせに、あの三男はずいぶんひどいことを言いますね!」
プリプリ怒りながらカラダを洗う芙蓉さんは、全体が丸みを帯びて柔らかそうだ。胸はそんなに大きくないが、お尻がプリンとしてむしゃぶりつきたくなる…ハッ、いかん。オヤジ目線になっていた。
そして確かに伽藍さんは胸が大きい…服を着てるときはむしろぺったんこに見えたのに…?
「ああ、それは…さらしをキツく巻いているから…剣を振るのに、邪魔になるので」
…なるほど。こんなに素晴らしいカラダを見たら朝霧さんはさらに伽藍さんに執着するんじゃないかな…。あの言動からして、朝霧さんは執着・ヤンデレ系…もしかしたら伽藍さんを閉じ込めて出さなくなるかもしれない。
物理的に離しておく期間が長くなるとヤバいかも、なんて悶々していたら、撫子さんが意外なことを言った。
「そう言えば、お姉さま、伽藍様。私も先ほど蘇芳様から聞いたのですが、朝霧様、今朝早く白虎州の伽藍様のご実家に行かれたそうです」
…え?
34
お気に入りに追加
5,689
あなたにおすすめの小説

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~
Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。
「俺はお前を愛することはない!」
初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。
(この家も長くはもたないわね)
貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。
ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。
6話と7話の間が抜けてしまいました…
7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる