お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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拗らせすぎる知事予定の夫妻たち(三男除く)

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「…とりあえず。話は以上…じゃなかった、ソフィアさん」

英樹さんに声をかけられ、私も思い出した。なんか話があるんだったよね。

「はい」

「今回、ソルマーレの料理人の方がこちらに来てくれたけど、1ヶ月後、かれらが帰国するときにこちらからもシェフを行かせようと思ってるんです。それで、その…貿易の話をしたいんだけど、いいですか?」

「え、…私でいいんですか?」

「最終的に決めるのはあちらの国王陛下でしょうけど、こちらから何が欲しいか…ソフィアさんに選択は任せたいと仰ってましたから。まず、お米は輸入していただけると思ってるんですが…」

「お姉さま、お米ならぜひ玄武州の米を!」

すかさず売り込んでくる撫子さんがすごい。

「…あとは、こちらの要望として…大豆を、ソルマーレ国で栽培していただけないかと思っているんです」

「大豆、ですか?」

英樹さんはコクリと頷くと、

「いま、我が国では大豆の消費がものすごく増えていまして。でもこの国土ですから、なかなか栽培量が増えないのです。豆腐などは生物ですから、できれば自国で作られたほうが出来立ての美味しさも味わえるでしょうし、ソルマーレ国にとっても大豆栽培はいい話ではないかと考えています」

確かに、豆腐とか、さらにおからとか、期限が短いもんなぁ。大豆料理専門店とか出して、湯葉を名物にするとかいいかも…!豆乳も飲めるし…チンピラに相談だな。

「それから、ソルマーレ国の小麦も輸入したいので、これもぜひご相談ください」

「わかりました、ありがとうございます」

「では、とりあえず今夜はこれでお開きにしましょう。ソフィアさん、来たばかりなのに、ありがとうございました。ゆっくり休んでください。あ、蘇芳、羅刹」

「はい、父上」

「ソフィアさんの部屋に、客人用の布団を一式運んでくれ。伽藍、それでいいかな?」

「義父上、お心遣い感謝いたします」

伽藍さんは、私のところに来ると、「ソフィア殿、迷惑をかける。すまない」としょんぼりした様子で言うので、なんだか可愛らしくなってしまった。

「私だってお邪魔してる身なんですから、遠慮しないでください。むしろ、誰かが一緒に過ごしてくれるなら嬉しいです」

お互いニコニコしていると、いきなり目の前に割って入ってくる人物がひとり…朝霧さんだ。

「伽藍さん、僕、結婚してからは誰ともしてない!欲しかった伽藍さんが僕の奥さんになってくれて、もう、」

「…でも、きっと、私に飽きたらまた別な女を抱くんだろう?」

「え!?ま、待って、伽藍さん、」

「ほら、やめろ朝霧。伽藍が嫌がってるだろうが」

「うるさい…っ!なんで、なんで羅刹兄さんは僕の伽藍さんを呼び捨てにするの!?やめてよ!伽藍さんは僕のなんだよ!」

「うるさい。早く歩け」

羅刹さんに強制連行された朝霧さんはいつまでも「伽藍さん!」と叫んでいた。

「…芙蓉殿、申し訳なかった」

「い、いえ、こちらこそ、勝手な思い込みで…っ!申し訳ありません!」

ふ、と笑った伽藍さんは女性も見惚れる男らしさだった。女性だけど。

「…羅刹殿は、本当に貴女を大事に思っている。剣の腕を磨きたいのも、貴女を守りたいからだと言っていた。大事にされて、羨ましい」

ポツリ、とこぼした本音に、キュッと胸がしめつけられる。

「わたくしたち、これまでほとんど交流もありませんでしたけど、これからはたくさんお話しましょう、伽藍様!わたくしも、お部屋にお邪魔してよろしいですか?ソフィア様」

「もちろんです、ぜひ来てください。ね、伽藍さん」

ニコ、っと笑ってくれた伽藍さんにホッとする。しかし…

「…上総は、そうとうあちこちで陰湿な嫌がらせをし続けているんだねぇ。今回ソフィアさんの助言がなければ、羅刹のところは目論見通り拗れて終わるところだった。
…あと少し」

そのあとの英樹さんの言葉は「お姉さま、参りましょう!」という撫子さんの声に消されてしまって聞こえなかった。

ほんとに、かなりの性悪男だよね。しかも、かなりイヤなやり方をして関係性を壊そうとしてる。現に伽藍さんのところは壊れる寸前だ。

うちの皇太子といい、上総といい…なんで問題ありとわかっていながら将来トップの座につけようとしているんだろう?それまでには性格も改善されるだろうって楽観視してるのかな?

考えても答えは出ないが…ため息が出る。
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