お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

文字の大きさ
上 下
50 / 161
拗らせすぎる知事予定の夫妻たち(三男除く)

しおりを挟む
秘書の方が呼びに行ってくれて、…なぜか撫子さんと伽藍さんまで一緒にやってきた。

「ちょうど、3人でお姉さまの話をしていたのです」とのこと。どんな話か気になるが後にしよう。

3人がそれぞれ夫の隣に座る。蘇芳さんは安定の腰抱きだが、芙蓉さんと伽藍さんは少し離れて座った。二人の夫も、触れる気配がない。羅刹さんについてはわかるけど、…朝霧さんのとこもなの?

英樹さんがおもむろに口を開く。

「芙蓉、伽藍。あのね、蘇芳夫婦が離縁するかもしれなくて、」

「父上、離縁しません!やめてください!」

「…ああ、間違えた、動揺してて…ごめん、蘇芳。ええと、蘇芳が勃起しなくて、」

「父上っ!?」

「あ、…ごめん。何を言おうとしたんだっけ。あ、そうだ。芙蓉。芙蓉は、羅刹に無理矢理犯されたんだってね。父親として謝罪する。本当に申し訳ないことをした」

「ち、父上っ!」

…もうぐちゃぐちゃだ。英樹さん、わざとやってるのかな。

芙蓉さんはサッと顔を青くしたが、俯いたりせずに英樹さんを毅然と見返した。

「…お義父様。確かにわたくしは、羅刹様に無理矢理されましたが、犯されたとは思っておりません。夫婦になったからにはカラダを繋げるのは当然の義務です。ましてや羅刹様は次代の皇帝陛下のご子息…皇位継承権を得るには最低でも4人子どもがいなくてはならないのですから」

淡々と告げる芙蓉さんからは言葉とは裏腹に羅刹さんへの明らかな拒絶を感じる。当たり前のことだけど。

「…でも、最初の日以来、羅刹様はわたくしに触れません。…羅刹様」

芙蓉さんは隣に座る羅刹さんを見上げると、「やはり、伽藍様がお好きなのですか。わたくしでは、身代わりにもなれないのですか」と言って、くしゃりと顔を歪めた。

「…え?」

芙蓉さん以外の全員が固まる。一番はじめに戻ってきたのは、朝霧さんだった。

「そうか、だから、…やっぱり伽藍さんは、羅刹兄さんのことが好きだったんだね。だから、僕とはセックスしてくれないんだね!」

またもや違う方角から爆弾が投下された。…なんだって?

「ち、違う、朝霧、」

ビックリしたように朝霧さんを見る伽藍さんの手首をグイッと掴み上げると、朝霧さんはギリッと羅刹さんを睨み付けた。

「伽藍さんは僕のだ!剣の全国大会で伽藍さんが表彰のために城に来た時から…10年前から、僕のだ!僕が、初めて伽藍さんを見つけたんだ!絶対に羅刹兄さんには渡さない!伽藍さんに手を出したりしたら、兄さん、殺すからね」

「ま、待ってくれ、朝霧、」

真っ青な顔でなんとか朝霧さんを宥めようとする伽藍さんを振り向くと、朝霧さんは頬を挟むようにして伽藍さんに口づけた。

びっくりして動けないであろう伽藍さんから口を離し、ヒョイッと抱き上げると、そのままソファに座り伽藍さんを横抱きにした。顔を自分の胸に抱き込み、そのまま背中を撫でる。朝霧さんの手が上に、下に、と動くたび、伽藍さんのカラダがピクッと跳ねる。なんか…やらしいんだけど…。

「伽藍さんは僕のです。今夜、全部僕のモノにします。今まで我慢してきたけど、もう我慢しない。伽藍さんが僕に抱かれる気になってくれるまで我慢しようと思ったけど、羅刹兄さんにとられるくらいならそれこそ無理矢理やる。犯してやる。僕から、絶対に離れられないカラダにしてやる。いいね、伽藍さん。もう僕、待たないからね…痛っ!?」

横抱きにされている伽藍さんの拳が朝霧さんの腹に炸裂した。そのまま朝霧さんの腕から抜け出した伽藍さんは、静かに泣いていた。撫子さんが立ち上がって伽藍さんを抱き締める。私も立ち上がり、自分が座っていたソファに伽藍さんを挟むようにして座った。蘇芳さんがジト目で見てるけど…いま、そういう嫉妬とかする場面じゃないよね!

「…まず。羅刹」

英樹さんがようやく覚醒したようだ。あまりに爆弾が破裂しすぎて、惨状が凄い。

「は、はい、父上」

「芙蓉が言うように、おまえは伽藍が好きなのか?」

「え、ち、ちが」

「そうです!だって、いつでも一緒に剣の訓練をしていらっしゃるし、わたくしになんて笑ってもくれないのに、伽藍様にはいつでもニコニコしていらっしゃるし!わたくしにあれ以来触れないのだって、わたくしのカラダが不満だからなのでしょう!?わたくしは、伽藍様のように鍛えられたカラダではありませんし…っ。背も低いですし…っ。それなら、顔合わせの時、三男の方のようにわたくしではイヤだと、伽藍様が欲しいと、言ってくだされば良かったではありませんか!」

「ダメ!伽藍さんは僕の!」

英樹さんはジロリと朝霧さんを睨み付けると「朝霧、順番だ。もう少し待ちなさい」と言って羅刹さんに視線を移した。

「羅刹。ここまで芙蓉に言わせて、おまえは恥ずかしくないのか」

羅刹さんは、グッと詰まったようになると、芙蓉さんを見て「…触れてもいいか」と、そっと肩に手を添えた。ビクッとした芙蓉さんを見て、顔を歪めた羅刹さんは「すまない…」と俯いてしまったが、離れようとした手を芙蓉さんがキュッと握った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~

Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。 「俺はお前を愛することはない!」 初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。 (この家も長くはもたないわね) 貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。 ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。 6話と7話の間が抜けてしまいました… 7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

処理中です...