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拗らせすぎる知事予定の夫妻たち(三男除く)
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食堂に入ると、女性がこちらに近づいてきた。
「ソフィアさん、わたくしの家内の早苗です。可愛い自慢の嫁です」
こんなふうに旦那さんに言ってもらえるなんて嬉しいだろうな、と思いながら目を移すと、「もう、あなたったら…!」と恥ずかしそうにしていた。
「はじめまして、ソフィアさん。もっと早くご挨拶したかったんですけど、蘇芳と大事な話をしているから邪魔しちゃいけないと夫に言われて…ごめんなさいね。朱雀州知事の妻の、拝田早苗です。よろしくお願いします」
「ソフィア・エヴァンスです、はじめまして。こちらこそ、申し訳ありません。これからよろしくお願いいたします」
正統派美人の早苗さん…英樹さん、めっちゃメンクイなんだね。そして妻にメロメロなのがよくわかる。もう腰に手を回して髪に口づけている…蘇芳さんの息するようなスキンシップは、英樹さん譲りなのか…。
そのまま席に案内され、他の方が来るのを待つ。私の席は、早苗さんと撫子さんの間。かなり防衛力が高い場所だ。よほどのことがない限り、手出しされない位置と言えるだろう。
陛下もやってきたので立ち上がろうとすると、「ソフィアさん、そのままでいいから」とニコニコされた。
陛下が席につくと同時に、入り口からまた新たに入ってくる人がいる。英樹さんは立ち上がると、「ソフィアさん、こちらへ」と私をまたエスコートしてくれる。
「次男夫婦と、四男夫婦です。4人とも、こちらがソルマーレ国皇太子妃のソフィアさんだ。しばらくの間、蘇芳のところに滞在してもらうから。交流してね、文化も違うところだし」
「ソフィア・エヴァンスです。今日からお世話になります」
お辞儀をすると、「ソフィアさんは転生者なんだって?」と男性の声がした。そちらを見ると、ツンツンヘアーの眼光鋭い男性と目が合った。スッ、と手を出されたので握り返す。硬い手のひら。
「拝田家の次男、拝田羅刹だ。よろしく頼む。こちらが、…つ、…つ、」
とたんに真っ赤な顔になった羅刹さんに驚いていると、「兄上、妻、ですよ、妻」と新たな声がした。
「わ、わかってる…っ!つ、妻の、芙蓉だ」
「拝田芙蓉です。ソフィアさん、よろしくお願いいたします」
ニコッとしてくれた芙蓉さんは、儚げな日本人形のような容姿だった。身長は150cmくらい?羅刹さんが180cmはありそうなので身長差がある。前髪も眉の上で切り揃え、おかっぱ頭。着物を着ているし、ほんとに日本人形みたい。撫子さんとはまた違った可愛らしさがある。
「僕は、四男の拝田朝霧です。僕の奥さんは、こちらの伽藍さん」
「…拝田伽藍だ。よろしくたのむ」
伽藍さんは、長い黒髪をポニーテールに結い上げ、袴を身につけていた。女性剣士のようにカッコいい。
「さ、じゃあ席について、みんな。食事にしよう」
三男夫婦も入ってきたが、英樹さんは私を改めて紹介する気はないようだった。私もあまり接触をもちたくないのでスルーすることにした。初対面の人間を豚呼ばわり…変態近衛と同じだけど、ギデオンさんからはああいう蔑みみたいなのはまったく感じなかったな、そういえば、と思う。同じ言葉だけど、心底バカにした言い方だとあんなに心が抉られるものなんだな…。
「父上、まだおばあ様が来ていませんが」
上総さんの発言にピクッとする英樹さんを手で制すと、陛下はまったく目が笑っていない胡散臭い笑顔で「じゃあ上総君と紫陽さんだけ待ってたら?私たちは待つ義理ないから。さ、いただこうか」と言って食べ始めた。
隣の早苗さんが、
「ソフィアさんは久しぶりのお米だと聞いたので、今日は何にしようか迷ったのだけど…カツ丼にしてもらったの!どうかしら?」
と普通に話し掛けてくる。スルーしていいんだ、三男夫婦は…。
「あ、嬉しいです。トンカツ…」
すんごいいい匂いがする…!この卵の絶妙な半熟加減…!佐々木さん、やるな…!
ひとくち含むと、ホワッと甘いお米の味が。その中にプチプチした感触もある。もち麦もさっそく入れてくれたんだ…!嬉しい…!
「すんごく美味しいです!」
思わず叫ぶと、蘇芳さんが
「でしょ、ソフィアさん!僕の言ってたことわかってくれました!?」
と力説しながらかきこんでいる。
「蘇芳さん、ゆっくり!よく噛んで!」
「あ、そうだ、つい」
しかしほんとに美味しいわー。佐々木さん、天才!この味をぜひ身につけてソルマーレ国の料理人のふたりには帰国してもらいたい。
なるべく30回噛むように気をつけながら食べる。久々のお米に恍惚となる。…さっき、ふいに思い出したからだけど。ギデオンさんや、アネットさんにも食べさせたいなぁ…。
「お米がソルマーレにもあればいいのに…」
思わずボソッと呟いてしまった私の声を拾った英樹さんが、
「ソフィアさん、あとでわたくしの執務室に来てくれませんか?蘇芳も一緒においで」
と言った。
「ソフィアさん、わたくしの家内の早苗です。可愛い自慢の嫁です」
こんなふうに旦那さんに言ってもらえるなんて嬉しいだろうな、と思いながら目を移すと、「もう、あなたったら…!」と恥ずかしそうにしていた。
「はじめまして、ソフィアさん。もっと早くご挨拶したかったんですけど、蘇芳と大事な話をしているから邪魔しちゃいけないと夫に言われて…ごめんなさいね。朱雀州知事の妻の、拝田早苗です。よろしくお願いします」
「ソフィア・エヴァンスです、はじめまして。こちらこそ、申し訳ありません。これからよろしくお願いいたします」
正統派美人の早苗さん…英樹さん、めっちゃメンクイなんだね。そして妻にメロメロなのがよくわかる。もう腰に手を回して髪に口づけている…蘇芳さんの息するようなスキンシップは、英樹さん譲りなのか…。
そのまま席に案内され、他の方が来るのを待つ。私の席は、早苗さんと撫子さんの間。かなり防衛力が高い場所だ。よほどのことがない限り、手出しされない位置と言えるだろう。
陛下もやってきたので立ち上がろうとすると、「ソフィアさん、そのままでいいから」とニコニコされた。
陛下が席につくと同時に、入り口からまた新たに入ってくる人がいる。英樹さんは立ち上がると、「ソフィアさん、こちらへ」と私をまたエスコートしてくれる。
「次男夫婦と、四男夫婦です。4人とも、こちらがソルマーレ国皇太子妃のソフィアさんだ。しばらくの間、蘇芳のところに滞在してもらうから。交流してね、文化も違うところだし」
「ソフィア・エヴァンスです。今日からお世話になります」
お辞儀をすると、「ソフィアさんは転生者なんだって?」と男性の声がした。そちらを見ると、ツンツンヘアーの眼光鋭い男性と目が合った。スッ、と手を出されたので握り返す。硬い手のひら。
「拝田家の次男、拝田羅刹だ。よろしく頼む。こちらが、…つ、…つ、」
とたんに真っ赤な顔になった羅刹さんに驚いていると、「兄上、妻、ですよ、妻」と新たな声がした。
「わ、わかってる…っ!つ、妻の、芙蓉だ」
「拝田芙蓉です。ソフィアさん、よろしくお願いいたします」
ニコッとしてくれた芙蓉さんは、儚げな日本人形のような容姿だった。身長は150cmくらい?羅刹さんが180cmはありそうなので身長差がある。前髪も眉の上で切り揃え、おかっぱ頭。着物を着ているし、ほんとに日本人形みたい。撫子さんとはまた違った可愛らしさがある。
「僕は、四男の拝田朝霧です。僕の奥さんは、こちらの伽藍さん」
「…拝田伽藍だ。よろしくたのむ」
伽藍さんは、長い黒髪をポニーテールに結い上げ、袴を身につけていた。女性剣士のようにカッコいい。
「さ、じゃあ席について、みんな。食事にしよう」
三男夫婦も入ってきたが、英樹さんは私を改めて紹介する気はないようだった。私もあまり接触をもちたくないのでスルーすることにした。初対面の人間を豚呼ばわり…変態近衛と同じだけど、ギデオンさんからはああいう蔑みみたいなのはまったく感じなかったな、そういえば、と思う。同じ言葉だけど、心底バカにした言い方だとあんなに心が抉られるものなんだな…。
「父上、まだおばあ様が来ていませんが」
上総さんの発言にピクッとする英樹さんを手で制すと、陛下はまったく目が笑っていない胡散臭い笑顔で「じゃあ上総君と紫陽さんだけ待ってたら?私たちは待つ義理ないから。さ、いただこうか」と言って食べ始めた。
隣の早苗さんが、
「ソフィアさんは久しぶりのお米だと聞いたので、今日は何にしようか迷ったのだけど…カツ丼にしてもらったの!どうかしら?」
と普通に話し掛けてくる。スルーしていいんだ、三男夫婦は…。
「あ、嬉しいです。トンカツ…」
すんごいいい匂いがする…!この卵の絶妙な半熟加減…!佐々木さん、やるな…!
ひとくち含むと、ホワッと甘いお米の味が。その中にプチプチした感触もある。もち麦もさっそく入れてくれたんだ…!嬉しい…!
「すんごく美味しいです!」
思わず叫ぶと、蘇芳さんが
「でしょ、ソフィアさん!僕の言ってたことわかってくれました!?」
と力説しながらかきこんでいる。
「蘇芳さん、ゆっくり!よく噛んで!」
「あ、そうだ、つい」
しかしほんとに美味しいわー。佐々木さん、天才!この味をぜひ身につけてソルマーレ国の料理人のふたりには帰国してもらいたい。
なるべく30回噛むように気をつけながら食べる。久々のお米に恍惚となる。…さっき、ふいに思い出したからだけど。ギデオンさんや、アネットさんにも食べさせたいなぁ…。
「お米がソルマーレにもあればいいのに…」
思わずボソッと呟いてしまった私の声を拾った英樹さんが、
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と言った。
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