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拗らせすぎる知事予定の夫妻たち(三男除く)
関わり合いたくない人たち
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18時30分に、撫子さんが部屋にやってきた。ちなみに私に与えられたゲストルームは、12畳はあろうかという部屋で、しかも畳が4.5畳ついていた!嬉しい、井草の香り…。癒される…。
「お姉さま、まだ早いのですけど…夕食が19時からなので、お迎えにきました」
「ありがとうございます。じゃあ、さっそく階段で行きますか…あれ?蘇芳さんは?」
撫子さんはサッと顔を赤くすると、「なんだか、その、…お姉さまに準備していただいた漫画が刺激が強かったみたいで…」
え、まさか、
「え、鼻血出して倒れてるとか!?」
「ち、違います違います!蘇芳様が、その、…『僕も、こんなふうに撫子に触れたり、カラダに口づけたりしていいんだ』って、なんだか、とても妖しい雰囲気になってしまって…慌てて、先に出てきたんです!」
あ、そうなんだ。良かった。
「蘇芳さんは、まったくの純粋培養だから吸収も早いかもしれませんね。勉強熱心みたいだし。撫子さん、大変なことになっちゃったらごめんね」
「そ、そんなこと…!むしろ、ありがたいです、お姉さま。お姉さまのおかげで、離縁も回避できそうですし、その、…蘇芳様にも、触れていただけそうですし…」
ポッと頬を染める撫子さんが可愛い。ぽっちゃりでも蘇芳さんはぜんぜんイケそうだけど、後々子どものこととか考えるとせめて標準体重にはなってたほうがいいよね。
食堂は5階にあるそうで、ふたりでゆっくり階段を登っていると、「撫子!」と声がした。蘇芳さんがすごい速さで登ってくる。
「蘇芳様、そんなに急いでは足元が」
「撫子!僕、早く痩せるから!一緒にお風呂入って、エッチなことたくさんしよう、痛っ」
思わず手が出てしまった。不敬になるかな、でも私も他国の皇太子妃だしいいよね!
「蘇芳さん!そういう発言はプライベートルームで、ふたりきりで!お願いします!あと、すぐに痩せようとするのはダメ!体重を一気に落としすぎるとカラダが危機感を覚えて痩せにくくなりますよ!体重が落ちないとダイエットのモチベーションも上がらないし、早く痩せたいのはみんな同じだけど、少しずつが正解です。焦っちゃダメ」
蘇芳さんは私に叩かれた頭を押さえてポカンとしていたが、「あ、そうか、そうですね、ソフィアさん、すみません」と真っ赤になった。
撫子さんも、「お風呂でエッチ…」と真っ赤になっている。今聞いて欲しかったのはダイエット情報!!もう…仕方ないけど…。
ゼエハアゼエハア言いながら3人でなんとか登りきり非常階段から出ると、目の前にスラリとした美男美女が立っていた。その目が、イヤらしく歪む。
「は、何かと思えば。豚が3匹も穴蔵から出てきたぞ、紫陽。あー、くさいくさい。なんで豚が人間様と同じ空間で食事をしようとするのか。遠慮をしらないな、さすが下等生物は図々しさが違うよ」
「上総」
そこに地の底から響くような声が聞こえてきた。
「…っ、父上、」
「下等生物はおまえだ、バカが。おまえの目にはこの3人が人間ではなく見えるようだが、こちらのソフィアさんはソルマーレ国の皇太子妃だぞ。おまえなんかより身分から言えばよほど上の方だ。おまえは身分で差別するのが好きだろう?だったら自分より身分が上の方にそんな口をきくのはやめろ。次にやったら不敬罪で海水につけるぞ。紫陽、おまえもだ」
「お義父様、わたくしは…っ」
「何も言ってない、と言いたいのか?イヤらしい顔で嗤っていたではないか。だいたい蘇芳は拝田家の長男だぞ。おまえの義兄、撫子はその妻だ。そのふたりにそんな暴言を吐く自分の夫を諌めることすらできない能無しの嫁は同罪だ。おまえも次はないぞ。さぁ、行きましょう、ソフィアさん。おや、蘇芳、なんだか嬉しそうだね?撫子も。何かいいことがあったのかい?」
唇を噛み締めてこちらを睨み付けるふたりを見向きもせず、英樹さんは私をそっとエスコートしてくれた。
「父上、あの…ご心配を、おかけして申し訳ありませんでした」
歩きながら蘇芳さんが英樹さんに話し掛ける。いつの間にか撫子さんと手を繋いでいる…この人、セックスしないだけで撫子さんには息するように触れるよね。親の前でもてらいなく手を繋ぐってある意味凄いよね。
「うん?あれ、…もしかして、」
「はい、離縁はしなくて済みそうです!ね、撫子」
ニコッと撫子さんに顔を向けると、蘇芳さんは嬉しそうに、
「ソフィアさんのおかげで、なんとかなりそうです。あ、父上、僕たち、ソフィアさんと3人でダイエットしますので…あんまり、おやつを差し入れないでくださいね」
「ええー、一緒にお茶飲みしたいのに。ずるいよ、陛下ばっかり」
「いや、陛下にもおやつはお断りしますから」
仲のいい親子なんだな、と思いつつ、先ほど垣間見えた英樹さんの冷酷さに「だから朱雀州知事に…そして次の皇帝になれるんだな」と納得した。ほんわかした雰囲気のダンディーなおじさまだけど、国のために切り捨てるべきことは決断できる人なんだろう。優しさだけでは国は治められない。
「お姉さま、まだ早いのですけど…夕食が19時からなので、お迎えにきました」
「ありがとうございます。じゃあ、さっそく階段で行きますか…あれ?蘇芳さんは?」
撫子さんはサッと顔を赤くすると、「なんだか、その、…お姉さまに準備していただいた漫画が刺激が強かったみたいで…」
え、まさか、
「え、鼻血出して倒れてるとか!?」
「ち、違います違います!蘇芳様が、その、…『僕も、こんなふうに撫子に触れたり、カラダに口づけたりしていいんだ』って、なんだか、とても妖しい雰囲気になってしまって…慌てて、先に出てきたんです!」
あ、そうなんだ。良かった。
「蘇芳さんは、まったくの純粋培養だから吸収も早いかもしれませんね。勉強熱心みたいだし。撫子さん、大変なことになっちゃったらごめんね」
「そ、そんなこと…!むしろ、ありがたいです、お姉さま。お姉さまのおかげで、離縁も回避できそうですし、その、…蘇芳様にも、触れていただけそうですし…」
ポッと頬を染める撫子さんが可愛い。ぽっちゃりでも蘇芳さんはぜんぜんイケそうだけど、後々子どものこととか考えるとせめて標準体重にはなってたほうがいいよね。
食堂は5階にあるそうで、ふたりでゆっくり階段を登っていると、「撫子!」と声がした。蘇芳さんがすごい速さで登ってくる。
「蘇芳様、そんなに急いでは足元が」
「撫子!僕、早く痩せるから!一緒にお風呂入って、エッチなことたくさんしよう、痛っ」
思わず手が出てしまった。不敬になるかな、でも私も他国の皇太子妃だしいいよね!
「蘇芳さん!そういう発言はプライベートルームで、ふたりきりで!お願いします!あと、すぐに痩せようとするのはダメ!体重を一気に落としすぎるとカラダが危機感を覚えて痩せにくくなりますよ!体重が落ちないとダイエットのモチベーションも上がらないし、早く痩せたいのはみんな同じだけど、少しずつが正解です。焦っちゃダメ」
蘇芳さんは私に叩かれた頭を押さえてポカンとしていたが、「あ、そうか、そうですね、ソフィアさん、すみません」と真っ赤になった。
撫子さんも、「お風呂でエッチ…」と真っ赤になっている。今聞いて欲しかったのはダイエット情報!!もう…仕方ないけど…。
ゼエハアゼエハア言いながら3人でなんとか登りきり非常階段から出ると、目の前にスラリとした美男美女が立っていた。その目が、イヤらしく歪む。
「は、何かと思えば。豚が3匹も穴蔵から出てきたぞ、紫陽。あー、くさいくさい。なんで豚が人間様と同じ空間で食事をしようとするのか。遠慮をしらないな、さすが下等生物は図々しさが違うよ」
「上総」
そこに地の底から響くような声が聞こえてきた。
「…っ、父上、」
「下等生物はおまえだ、バカが。おまえの目にはこの3人が人間ではなく見えるようだが、こちらのソフィアさんはソルマーレ国の皇太子妃だぞ。おまえなんかより身分から言えばよほど上の方だ。おまえは身分で差別するのが好きだろう?だったら自分より身分が上の方にそんな口をきくのはやめろ。次にやったら不敬罪で海水につけるぞ。紫陽、おまえもだ」
「お義父様、わたくしは…っ」
「何も言ってない、と言いたいのか?イヤらしい顔で嗤っていたではないか。だいたい蘇芳は拝田家の長男だぞ。おまえの義兄、撫子はその妻だ。そのふたりにそんな暴言を吐く自分の夫を諌めることすらできない能無しの嫁は同罪だ。おまえも次はないぞ。さぁ、行きましょう、ソフィアさん。おや、蘇芳、なんだか嬉しそうだね?撫子も。何かいいことがあったのかい?」
唇を噛み締めてこちらを睨み付けるふたりを見向きもせず、英樹さんは私をそっとエスコートしてくれた。
「父上、あの…ご心配を、おかけして申し訳ありませんでした」
歩きながら蘇芳さんが英樹さんに話し掛ける。いつの間にか撫子さんと手を繋いでいる…この人、セックスしないだけで撫子さんには息するように触れるよね。親の前でもてらいなく手を繋ぐってある意味凄いよね。
「うん?あれ、…もしかして、」
「はい、離縁はしなくて済みそうです!ね、撫子」
ニコッと撫子さんに顔を向けると、蘇芳さんは嬉しそうに、
「ソフィアさんのおかげで、なんとかなりそうです。あ、父上、僕たち、ソフィアさんと3人でダイエットしますので…あんまり、おやつを差し入れないでくださいね」
「ええー、一緒にお茶飲みしたいのに。ずるいよ、陛下ばっかり」
「いや、陛下にもおやつはお断りしますから」
仲のいい親子なんだな、と思いつつ、先ほど垣間見えた英樹さんの冷酷さに「だから朱雀州知事に…そして次の皇帝になれるんだな」と納得した。ほんわかした雰囲気のダンディーなおじさまだけど、国のために切り捨てるべきことは決断できる人なんだろう。優しさだけでは国は治められない。
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