お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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拗らせすぎる知事予定の夫妻たち(三男除く)

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「蘇芳様、お姉さま、お帰りなさい」

「撫子、ただいま」

蘇芳さんは撫子さんに近づくとキュッと抱き締めて口づけた。ここまでしてるくせに、なんで…!

「あ、お姉さま、あの、」

「はい?」

ラブラブバカップルを見せつけられてぐったりしていると撫子さんに声をかけられた。

「先ほど言っていた、妊娠中毒症というのは、」

あー、すっかり忘れてた!

ソファに座らせてもらって、一息ついてから説明をした。

「…というわけで、太っているといろんな障害がでてくると…たぶん、妊娠もしづらいと…聞いたことがあります」

私は前世子なしなので、あくまで知識の範囲でしか話せないけど。

撫子さんは「妊娠しづらい…」と青ざめてるけど、

「あの、撫子さん!妊娠しづらい以前に、まだ行為にも至ってないわけですから!」

「あ、…そうですね」

良かった、少し笑ってくれて。

「それで、撫子さんにお話があるんです。私と、ダイエットしませんか?」

「ダイエット、ですか」

「ええ。ギスギスに痩せなくていいけど、やっぱり今よりは痩せたほうがカラダも軽いと動きやすいですし、体力もつけられると思うんです。明日から一週間、休ませると皇帝陛下は仰ってましたけど…その後も、仕事についてはやり方を見直したほうがいいと思います。疲れすぎるまで働いてたらいつまでも蘇芳さんと撫子さんの関係性は変わりませんよ」

撫子さんは少し考える様子になり、その後、スッと顔をあげた。

「お姉さまの仰る通りにします。私、がんばります!」

「蘇芳さんもダイエットしてください」

「は、…?」

「痩せましょう、3人で!」

「…は、はい!わかりました」

そうだよ。性知識がないせいもあるだろうけど、蘇芳さんの勃起不全は肥満が原因かもしれないんだし。その他にもカラダに不調が出てくる可能性だってあるし、今よりは痩せたほうが絶対にいいはず!!

「あの、蘇芳さんはそもそもなぜこんなに太ってしまったのですか」

蘇芳さんは困ったような顔になると、

「実はその…子どもの時はそんなでもなかったのですが、この城に越してきてから、なんです。つまり、父が朱雀州の知事になってから、なんですけど。
それまでは家の中にエレベーターとかエスカレーターなんてありませんでしたから、動きますし、外遊びもしてましたし…でも、ここでは外遊びをする気になれなくて…その、陛下の執務室にある本が面白くて読書ばかりしていて、その上陛下がお菓子やら夜食やら差し入れてくださって…この城のシェフの料理も最高でして…」

カロリー過多の運動不足、ってことですね。お籠り人間だった私には痛いほどよくわかる。

「いきなり食事制限はつらいでしょうし、反動で食べ過ぎるようになるのも困りますし…ゆるく糖質制限してみるのはどうでしょう?」

それからまた機械の前に行き、糖質制限のレシピ本を出してもらい、シェフにお願い事してもらうことにした。なんてったって、ここには豆腐やおからが存在する!あと、もち麦もあるらしい。嬉しい。さっそく私たち3人のご飯にはもち麦を混ぜてもらうように交渉した。

シェフは、「腕がなります!わたくしが、皆様を立派に痩せさせてみせます!」と言ってくれた。ついでに自分もダイエットするらしい。たしかに、私といい勝負…食べるのも仕事だもんね。このシェフは佐々木雄輔さんというのだが、この後思いがけないことでとても仲良くなる。

「あとは、移動するのになるべく階段を使うといいですね」

「階段、ですか…確か非常階段があったはずです。では、そちらを使うようにしましょう。撫子、僕、頑張るからね、だから、その、」

蘇芳さんは真っ赤な顔になると、

「僕が、その、…勃起するようになるまで、待っててくれるかな」

「もちろんです、蘇芳様!私と、離縁しないでくださるのですよね?」

「うん!ごめんね、バカなこと言って」

「蘇芳様…」

「撫子…」

「ウオッホン!!あとでふたりきりになってからお願いします!!」

またバカップルになりそうなふたりを牽制する。目の前でイチャイチャされすぎてはたまったものではない。

「あ、ふたりきりといえば。蘇芳さん、まずはこの漫画を読んで勉強してください」

機械が出してくれた漫画を一式蘇芳さんに渡す。キュンキュン甘酸っぱく、しかもエッチもしちゃうこの内容はおふたりにぴったりだろう。

「あと、これも。これは、夜、見てください。撫子さんも一緒に観るといいと思います」

アダルトビデオとプレーヤーも渡す。

「百聞は一見に如かずです、蘇芳さん。よく勉強してください」

「は、…?はい、わかりました…?」

観たことない蘇芳さんからすればかなり刺激が強いだろうけど、撫子さんもついてるしなんとか介抱してくれるだろう。

そして、もう一度あらためて…。

「じゃあ、蘇芳さん、離縁は、なしですね!」

「は、はい、ないです、ないです!僕が不甲斐ないせいで撫子を悲しませるのがイヤだったから、なので…まだ勃起するかどうかわからないけど、…撫子、僕でいい?」

「僕で、じゃなくて、蘇芳様だけがいいんです!」

蘇芳さんはホニャリと笑うと、「ありがとう、撫子。愛してるよ」と口づけた。

…とりあえずこれで、離縁は回避できたことになるのかな。関わってしまったからには最後まで…ふたりがエッチできるようになるまで、とりあえずお付き合いしよう。ダイエットにもなるし。ダイエット仲間ができて嬉しい。

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