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拗らせすぎる知事予定の夫妻たち(三男除く)
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「詳細に、この人間はこういう性格だ、とか、今何を考えているか、とかがわかるわけではありません。ただ、その人間の悪意というか…黒い部分が見えるんです。上総様は、真っ黒でした。こんな悪意だらけの人が私の旦那様に、と絶望を感じていたところに被せるように暴言を吐かれて、…絶対にこんなヤツの前で泣いたりするもんか、って歯を食いしばっていたら、…蘇芳様が、助けてくださったんです」
嬉しそうに頬を染めた撫子さんは、恋する乙女、という言葉がぴったりくるくらいに可愛らしい。
「そのあと、陛下も私と蘇芳様を夫婦にすると言ってくださって…結婚して一年、その、まだ、契ってはおりませんけれど、その、…私は、蘇芳様の妻として、幸せな気持ちで過ごしてきて…一緒にいればいるほど、誠実で、優しくて、努力家の蘇芳様が大好きになって。だから今回の蘇芳様のお言葉はショックでしたが、理由がわかりましたし、その、…蘇芳様が、私を抱きたいと、仰ってくださったので…嫌われて、離縁されるのだと思っていたので、良かったです」
そのあとハッとしたように撫子さんは、
「す、すみません、話が逸れてしまって」
と真っ赤になった。
「いえ、撫子さんと蘇芳さんがいかに仲良し夫婦かということがよくわかりました」
そう答えつつ…これ、もう、解決した、ってことでいいのかな?つまるところ、勃起しないからって理由だもんね。撫子さん相手に欲情しない、ってことではないんだし。意外に早く帰れるかも。
そう思っていたら、ドアが開いて蘇芳さんが入ってきた。手に何かを持っている。
「ソフィアさん、ありました!先ほど教えていただいた研究内容が載った本が!」
…研究内容?
「じゃあ、やっぱり蘇芳さんが診てもらったお医者さんが知識のない人だったんですね。そんな本まであるのに、」
「いえ、これは、『言われた内容でだしちゃうもん』から取り出した本です。奥付けは…2005年、と書いてありますね」
「…そのふざけた名前みたいなのは、」
「ええ、その名前の通りの機械です。具体的な内容を言うと、それに見合ったものを出してくれます。ただし大きさに制限があるので、あまり大きなモノは出せません」
そう言って蘇芳さんはパラパラと本をめくった。
「…今まで考えたこともありませんでしたが、確かに太りすぎはよくないですね」
今さらかい!と突っ込みたくなったが、グッと我慢する。
「ええ。若いうちはまだいいですけど、年齢が上がるといろんな病気も出てきますし…血液検査で、コレステロールが高いとか…」
「お姉さま、血液検査とは…病院で毎回検査するのですか?」
「いえ、健康診断で、」
「…健康診断?」
内容を説明すると、ふたり揃って「素晴らしい!」と叫んだ。
「つまり、毎年…一年に一度、カラダを調べるという制度なのですね!?」
「そうですね。ある程度、安価で受けられます」
そう答えながら撫子さんを見る。
「撫子さん、私が今からいうこと、腹立たしいだろうけど聞いてくれますか」
「もちろんです、お姉さま!」
私は撫子さんを連れて、部屋にある姿見の前に並んで立った。
「…お姉さま?」
「私と、撫子さんはだいたい同じ体型ですよね」
質問の意図がわからないからであろう、撫子さんは曖昧にうなずく。
「私は、今、体重が70キロあります。ていうことは、撫子さんも同じくらいですよね」
とたんに真っ赤な顔でうつむき、「はい…」と小さく返事をする撫子さん。
「…妊娠中毒症、って聞いたことありますか?」
撫子さんはキョトンとした顔になり、フルフルと首を横に振って「…蘇芳様はご存知ですか?」と聞いた。
蘇芳さんも「いや、聞いたことはない…ソフィアさん、それは何かの病気なのですか」と言う。
ジャポン皇国はかなり技術が発展してるみたいなのに、医療は遅れてるってこと…?そういうと蘇芳さんが、
「今ある技術は、召還された人間たちの置き土産なので…その人たちは国をいかに作るか、ってことにはこだわったみたいですが個個人の健康とか、…カラダに関することについてはあまり興味はなかったのでしょうね」
聞いてみると、だいたいソルマーレと同水準な医療体制かな、と感じた。
「ソフィアさん、話の途中ですみません。その、恥ずかしいんですが、言います。…祖父と父から、僕の祖母のことは聞きましたよね?」
コクリ、と頷いてみせると、「…あの人が原因で、」と蘇芳さんは険しい顔になった。
「皇室の人間は閨教育を受けられなくなったんです」
「…どういうことですか?」
「あの人は上総が生まれると、自分の宮に連れ去ったのですが、たぶんゆくゆく自分と自分の父親の関係に持ち込もうとしてたんでしょう。上総と自分を。他の女のカラダに触れさせたりしないようにするためか、上総がまだ一歳の時、法律を押し通したんです。
皇室の人間は、高貴な人間なのだから閨教育など受けてはならない、と、閨教育を廃止してしまったのです」
閨教育を廃止した…。でも、
「…そういう知識は、あるんですよね?だってさっき、撫子さんを抱きたい、って」
蘇芳さんは真っ赤になると、「その、抱く、という言葉はわかるのですが、どこに何を挿入するか、知識はありますけど、実際に見たことはないので、女性のカラダを」
「え、あの…雑誌とか、」
「雑誌?」
「ええ、と、その…漫画とか、」
「漫画…」
しびれを切らして「セックスを描写した絵物語とか、実際にしてる感じの写真とかですよ!」
「…たぶん、ソフィアさんが言っているものは存在していないかと」
「じゃあ、国民の方々もなんにも知らずにいるんですか!?性教育どうなってんの!」
というより、ジャポン皇国の方々はムラムラしないわけ?…皇室の方々は閨教育があったにしても、国民の皆様は何をおかずに自分のカラダを慰めてるの?
嬉しそうに頬を染めた撫子さんは、恋する乙女、という言葉がぴったりくるくらいに可愛らしい。
「そのあと、陛下も私と蘇芳様を夫婦にすると言ってくださって…結婚して一年、その、まだ、契ってはおりませんけれど、その、…私は、蘇芳様の妻として、幸せな気持ちで過ごしてきて…一緒にいればいるほど、誠実で、優しくて、努力家の蘇芳様が大好きになって。だから今回の蘇芳様のお言葉はショックでしたが、理由がわかりましたし、その、…蘇芳様が、私を抱きたいと、仰ってくださったので…嫌われて、離縁されるのだと思っていたので、良かったです」
そのあとハッとしたように撫子さんは、
「す、すみません、話が逸れてしまって」
と真っ赤になった。
「いえ、撫子さんと蘇芳さんがいかに仲良し夫婦かということがよくわかりました」
そう答えつつ…これ、もう、解決した、ってことでいいのかな?つまるところ、勃起しないからって理由だもんね。撫子さん相手に欲情しない、ってことではないんだし。意外に早く帰れるかも。
そう思っていたら、ドアが開いて蘇芳さんが入ってきた。手に何かを持っている。
「ソフィアさん、ありました!先ほど教えていただいた研究内容が載った本が!」
…研究内容?
「じゃあ、やっぱり蘇芳さんが診てもらったお医者さんが知識のない人だったんですね。そんな本まであるのに、」
「いえ、これは、『言われた内容でだしちゃうもん』から取り出した本です。奥付けは…2005年、と書いてありますね」
「…そのふざけた名前みたいなのは、」
「ええ、その名前の通りの機械です。具体的な内容を言うと、それに見合ったものを出してくれます。ただし大きさに制限があるので、あまり大きなモノは出せません」
そう言って蘇芳さんはパラパラと本をめくった。
「…今まで考えたこともありませんでしたが、確かに太りすぎはよくないですね」
今さらかい!と突っ込みたくなったが、グッと我慢する。
「ええ。若いうちはまだいいですけど、年齢が上がるといろんな病気も出てきますし…血液検査で、コレステロールが高いとか…」
「お姉さま、血液検査とは…病院で毎回検査するのですか?」
「いえ、健康診断で、」
「…健康診断?」
内容を説明すると、ふたり揃って「素晴らしい!」と叫んだ。
「つまり、毎年…一年に一度、カラダを調べるという制度なのですね!?」
「そうですね。ある程度、安価で受けられます」
そう答えながら撫子さんを見る。
「撫子さん、私が今からいうこと、腹立たしいだろうけど聞いてくれますか」
「もちろんです、お姉さま!」
私は撫子さんを連れて、部屋にある姿見の前に並んで立った。
「…お姉さま?」
「私と、撫子さんはだいたい同じ体型ですよね」
質問の意図がわからないからであろう、撫子さんは曖昧にうなずく。
「私は、今、体重が70キロあります。ていうことは、撫子さんも同じくらいですよね」
とたんに真っ赤な顔でうつむき、「はい…」と小さく返事をする撫子さん。
「…妊娠中毒症、って聞いたことありますか?」
撫子さんはキョトンとした顔になり、フルフルと首を横に振って「…蘇芳様はご存知ですか?」と聞いた。
蘇芳さんも「いや、聞いたことはない…ソフィアさん、それは何かの病気なのですか」と言う。
ジャポン皇国はかなり技術が発展してるみたいなのに、医療は遅れてるってこと…?そういうと蘇芳さんが、
「今ある技術は、召還された人間たちの置き土産なので…その人たちは国をいかに作るか、ってことにはこだわったみたいですが個個人の健康とか、…カラダに関することについてはあまり興味はなかったのでしょうね」
聞いてみると、だいたいソルマーレと同水準な医療体制かな、と感じた。
「ソフィアさん、話の途中ですみません。その、恥ずかしいんですが、言います。…祖父と父から、僕の祖母のことは聞きましたよね?」
コクリ、と頷いてみせると、「…あの人が原因で、」と蘇芳さんは険しい顔になった。
「皇室の人間は閨教育を受けられなくなったんです」
「…どういうことですか?」
「あの人は上総が生まれると、自分の宮に連れ去ったのですが、たぶんゆくゆく自分と自分の父親の関係に持ち込もうとしてたんでしょう。上総と自分を。他の女のカラダに触れさせたりしないようにするためか、上総がまだ一歳の時、法律を押し通したんです。
皇室の人間は、高貴な人間なのだから閨教育など受けてはならない、と、閨教育を廃止してしまったのです」
閨教育を廃止した…。でも、
「…そういう知識は、あるんですよね?だってさっき、撫子さんを抱きたい、って」
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「え、あの…雑誌とか、」
「雑誌?」
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「じゃあ、国民の方々もなんにも知らずにいるんですか!?性教育どうなってんの!」
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