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ジャポン皇国へ
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「おまえがジャポン皇国に行ったあと、ギデオンをどうするか迷ったんだが…本人が、おまえが戻るまではアネットと離宮を整備したいっていうからそうすることにした」
…は?なんですって?
「陛下、それおかしくないですか?私がいなくなるんだから、それこそ双子王子の近衛とかにしてあげればいいじゃないですか」
「仕方ねぇだろ、本人がそうしたいって言うんだからよ」
そんなワガママ許されるの?近衛って、王族に仕えてるんでしょ?私がいないのにそのまま近衛でいるなんて…。経費のムダにならないのかな…。
「ところで陛下、私はジャポン皇国にどのくらい滞在できるんですか?」
するとチンピラ国王が不敵な顔でニヤリと笑った。
「おまえはほんとおもしれぇな。どのくらい滞在できるんですか、なんて。一緒に行く料理人たちはどのくらいで帰国していいですか、と言ったがなぁ。…あのな、ソフィア」
「はい?」
「とりあえず、おまえは料理人たちとは別行動でいい。いたいだけジャポン皇国にいていいぞ。ただし、最終期限はおまえとおまえの書類上の夫の離縁が認められる日までだ。それまでに何かしら利益を出せなかったら、国外どころか離宮から永遠に出さない。お飾り妃として一生を終えろ。離縁は認めない。俺が死ぬまで、絶対にな」
いつもふざけてかけてくる圧とは違う種類の圧力を感じて背筋がゾワリとする。この人は本気だ。本気で私を離宮から出さない気だ。
怖くて無意識にカラダが震える。どうしてこの人は、ソフィアを皇太子の妃にしておくことに拘るんだろう?ソフィアの両親のことだってどちらかと言えば嫌っていたんだろう。それにも関わらず、産まれてすぐの赤子を皇太子の婚約者に決めて、…いったい、何があるんだろう?
あまりにも情報量が少なすぎる。
冷たくなってきた指先を温めるように擦り合わせる。とにかく、本気で課題をクリアするしかないんだ。しかし、さっきの話…ミューズは相当なビッチ…それをわかっていながら皇太子の次の妃にする…誓約書にまで記載してるんだから、私が離縁できたらビッチが次代の王妃陛下になる…。
手を擦り合わせながらそっと国王を窺うが、その表情からは何も読み取れない。今までも何度か質問してきたが、一度たりともまともな答えはもらえなかった。この人が何をどう考えているのか…その真意はわからない。わからないのだから、私は私でやるべきことをやるしかない。
…そんなことを思い出しているうちに、ジャポン皇国に入港する。港からは馬車に乗り、最寄の駅まで運ばれた。ジャポン皇国には汽車が走っているのだ。すごい…!
駅でぼんやり立っていると、「ソフィアさんですね」と声をかけられた。振り向くと、男性がひとり。一緒に来た料理人のおふたりはいつの間にか離れたところに立っていた。
「はい、ソフィア…です」
見習い料理人として来ているのに、王家の名前…エヴァンスと名乗る訳にはいかない、とグッと飲み込んだところ、「ようこそいらっしゃいました、ソフィア・エヴァンスさん」とニッコリされた。…え?
「…あ、来たようです。詳しくは中で」
男性は駅に入ってきた汽車に目を向け、それ以上何も言わなかった。この人いま、エヴァンス、って言ったよね…。よくある名字、とかいう認識なのかな。というより、ソフィア・エヴァンス、って紹介状に書いてあるのかな?肝心なことを何にも聞いてこなかった自分の愚かさにため息が出る。
乗り込んだ車両には、その男性と私しかいなかった。
「改めまして、ソフィアさん。わたくしはジャポン皇国朱雀州の知事を務めております、拝田英樹と申します。ソフィアさんは転生者とお聞きしています。この見た目、懐かしいでしょう?」
おどけたように言われるが、あまりの衝撃に声も出ない。この人いま、朱雀州知事って名乗らなかった?
「ソフィアさん?大丈夫ですか?」
目の前でヒラヒラと手を振られてハッとする。
「あ、の、…申し訳ありません。ソフィア・エヴァンスです。朱雀州の知事を務めていらっしゃる方がなぜ私の出迎えに、」
「だってソフィアさんはソルマーレ国の皇太子妃なんでしょう?わたくしが来るのは当然のことですよ」
「…え」
ニコニコしている英樹さんの言葉は、私に衝撃しか与えない。
「私が、皇太子妃、だと、」
「ええ、こちらに来るとソルマーレ国王からお手紙をいただきました。料理人二人にはジャポン皇国の食文化を学ばせて欲しい、と。我々の国には翻訳機があるので、ソフィアさんのようにジャポン語を理解していなくても大きな問題はないはずです。1ヶ月ほど滞在したら帰国させると書いてありました。
ソフィアさん、あなたは帰れません。1ヶ月では帰れないと思ってください」
…あれ。来て早々、脅迫を受けてるのかな?
…は?なんですって?
「陛下、それおかしくないですか?私がいなくなるんだから、それこそ双子王子の近衛とかにしてあげればいいじゃないですか」
「仕方ねぇだろ、本人がそうしたいって言うんだからよ」
そんなワガママ許されるの?近衛って、王族に仕えてるんでしょ?私がいないのにそのまま近衛でいるなんて…。経費のムダにならないのかな…。
「ところで陛下、私はジャポン皇国にどのくらい滞在できるんですか?」
するとチンピラ国王が不敵な顔でニヤリと笑った。
「おまえはほんとおもしれぇな。どのくらい滞在できるんですか、なんて。一緒に行く料理人たちはどのくらいで帰国していいですか、と言ったがなぁ。…あのな、ソフィア」
「はい?」
「とりあえず、おまえは料理人たちとは別行動でいい。いたいだけジャポン皇国にいていいぞ。ただし、最終期限はおまえとおまえの書類上の夫の離縁が認められる日までだ。それまでに何かしら利益を出せなかったら、国外どころか離宮から永遠に出さない。お飾り妃として一生を終えろ。離縁は認めない。俺が死ぬまで、絶対にな」
いつもふざけてかけてくる圧とは違う種類の圧力を感じて背筋がゾワリとする。この人は本気だ。本気で私を離宮から出さない気だ。
怖くて無意識にカラダが震える。どうしてこの人は、ソフィアを皇太子の妃にしておくことに拘るんだろう?ソフィアの両親のことだってどちらかと言えば嫌っていたんだろう。それにも関わらず、産まれてすぐの赤子を皇太子の婚約者に決めて、…いったい、何があるんだろう?
あまりにも情報量が少なすぎる。
冷たくなってきた指先を温めるように擦り合わせる。とにかく、本気で課題をクリアするしかないんだ。しかし、さっきの話…ミューズは相当なビッチ…それをわかっていながら皇太子の次の妃にする…誓約書にまで記載してるんだから、私が離縁できたらビッチが次代の王妃陛下になる…。
手を擦り合わせながらそっと国王を窺うが、その表情からは何も読み取れない。今までも何度か質問してきたが、一度たりともまともな答えはもらえなかった。この人が何をどう考えているのか…その真意はわからない。わからないのだから、私は私でやるべきことをやるしかない。
…そんなことを思い出しているうちに、ジャポン皇国に入港する。港からは馬車に乗り、最寄の駅まで運ばれた。ジャポン皇国には汽車が走っているのだ。すごい…!
駅でぼんやり立っていると、「ソフィアさんですね」と声をかけられた。振り向くと、男性がひとり。一緒に来た料理人のおふたりはいつの間にか離れたところに立っていた。
「はい、ソフィア…です」
見習い料理人として来ているのに、王家の名前…エヴァンスと名乗る訳にはいかない、とグッと飲み込んだところ、「ようこそいらっしゃいました、ソフィア・エヴァンスさん」とニッコリされた。…え?
「…あ、来たようです。詳しくは中で」
男性は駅に入ってきた汽車に目を向け、それ以上何も言わなかった。この人いま、エヴァンス、って言ったよね…。よくある名字、とかいう認識なのかな。というより、ソフィア・エヴァンス、って紹介状に書いてあるのかな?肝心なことを何にも聞いてこなかった自分の愚かさにため息が出る。
乗り込んだ車両には、その男性と私しかいなかった。
「改めまして、ソフィアさん。わたくしはジャポン皇国朱雀州の知事を務めております、拝田英樹と申します。ソフィアさんは転生者とお聞きしています。この見た目、懐かしいでしょう?」
おどけたように言われるが、あまりの衝撃に声も出ない。この人いま、朱雀州知事って名乗らなかった?
「ソフィアさん?大丈夫ですか?」
目の前でヒラヒラと手を振られてハッとする。
「あ、の、…申し訳ありません。ソフィア・エヴァンスです。朱雀州の知事を務めていらっしゃる方がなぜ私の出迎えに、」
「だってソフィアさんはソルマーレ国の皇太子妃なんでしょう?わたくしが来るのは当然のことですよ」
「…え」
ニコニコしている英樹さんの言葉は、私に衝撃しか与えない。
「私が、皇太子妃、だと、」
「ええ、こちらに来るとソルマーレ国王からお手紙をいただきました。料理人二人にはジャポン皇国の食文化を学ばせて欲しい、と。我々の国には翻訳機があるので、ソフィアさんのようにジャポン語を理解していなくても大きな問題はないはずです。1ヶ月ほど滞在したら帰国させると書いてありました。
ソフィアさん、あなたは帰れません。1ヶ月では帰れないと思ってください」
…あれ。来て早々、脅迫を受けてるのかな?
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