お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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ジャポン皇国へ

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「ジャポン皇国の皇帝は、拝田啓一郎って言うんだ。黒い髪、黒い目。周りにいた人間も、ほとんど同じ色味だったな。ちょっと変わった色だったのは、緑色の髪の毛に青い目、だな」

緑色の髪の毛?そんな色…染めてるのかな?

「啓一郎さんが言うには、その変わった色味の人間たちは、元々ジャポン皇国に住んでた原住民で『トゥランクメント族』というらしい。トゥランクメント族は、災害で同胞の命がたくさん喪われることを嘆き、神に祈ったんだそうだよ。この部族は大なり小なり魔術が使えるらしく、それで召還されたニッポン人が災害から命を守るためにいろんな技術を駆使してくれて、おおよそ300年前に今のジャポン皇国になったらしい」

魔術が使える原住民…日本のようで、やはり日本とは異なるってことだよね。

「イングリットがおまえをジャポン皇国に出したい、って言ったときは正直なんでなのかと思ったが…まったく同じじゃなくても、前のおまえが住んでた国と似てるのであれば少しは気も紛れるだろ」

気も紛れる?

「陛下、私、特に落ち込んだりはしていませんけど」

「いや、でもよ。いきなりわけのわからねぇ所にきて、しかもあのボンクラの妻で自分自身はバカな豚と来たもんだ。落ち込むな、ってほうが無理じゃねぇか」

…そういうあんたの貶め発言の方がよっぽど落ち込むよ。無自覚だから言ってもムダだけど。

「見習い料理人だっていうことにしておくが、別に料理を習う必要ねぇんだろ?知識はあるんだから。俺が出した離縁のための課題を解くための時間にしたらいい。楽しんでこいよ。いいとこだからよ」

「ありがとうございます」

3年の間に何かしらの利益を出す、そのためには成長に時間がかかる作物とか、そういうものを新たに栽培する、とかはダメだろうなぁ。ジャポン皇国では育つけど、ソルマーレ国の土壌に合うかどうかはわからないし…。外来種とかになっちゃったら、利益どころか損失しかない。植物系はひとまず諦めよう。研究を重ねていけばできるかもしれないけど、結果を出すには3年は短いだろう。

王妃陛下は「新しい食文化」って言ってたな…。ソルマーレ国は小麦文化だから、お米を使った食べ物を流行らせる?でもそうなると、お米を輸入しなくてはならないだろう。…貿易とか、どうするつもりなんだろう。

悶々と考えていると、「そういえばよ」というチンピラの声に意識を戻された。

「なんですか?」

「あの調印式のあと、なんか変わったことはなかったか」

…変わったこと?

「陛下のご子息たちに言葉を教えることになったとか?…痛い!」

チンピラにオデコをペチッと弾かれる。物理的攻撃、やめて!口にしたら最後、どんな攻撃をされるか恐ろしくてとても抗議できないけど…。

「そうじゃねぇだろ。あの場にいたヤツラから接触はなかったか、って聞いてんだよ」

…そんな聞き方してないじゃん、という不満は飲み込む。人のことバカな豚とか言ってるんだから、もっとわかりやすく言ってよ。

「接触というか、王宮に行くたびに宰相様が声をかけてくださって…」

そう、誘い受けの宰相様が、毎日のように王宮に行く私を毎回笑顔で迎えてくださるのだ。昇天するなめくじの気持ちになる。笑顔が素敵すぎて。そして!調印式の時にはいなかった細マッチョの騎士がいつも宰相様の後ろに寄り添っているのだ!

初日、そのお二人の姿に興奮し過ぎて不躾にも挨拶もせずに「宰相様、そちらの方は…っ!?」と叫んだ私に、ニッコリした宰相様は

「ソフィア様、彼はわたくしの近衛のスティーブです。スティーブ、ソフィア様にご挨拶を」

スティーブさんはスッとひざまずくと、

「ソフィア様、お初にお目にかかります。わたくし、宰相閣下の近衛を務めさせていただいておりますスティーブ・マッケインと申します。以後、お見知りおきください」

立ち上がったスティーブさんは身長が宰相様よりも頭ひとつぶんくらい大きい…宰相様は170cmくらいかな?光の加減でキラキラ煌めく銀の髪の毛に、優しそうな紫色の瞳。

「…すみません。質問してもいいですか」

我慢できない。こんな、こんな…っ!こんなカップリングを見せつけられて我慢なんてできないっ!

「なんでしょう?」

「スティーブさんは、おいくつですか!?ついでに、あ、すみません、宰相様はおいくつですか!?」

飛びかからんばかりの勢いの私に面食らったようなお二人は、「31歳です」「40歳です」と答えてくださった。…年の差。いい。実にいい。

スティーブさんは超大型わんこ攻めだ。いつもは宰相様にマメマメしくご奉仕するけど、エッチの時は宰相様が懇願しても「…お許しください、それだけは聞けません」ってガツガツ貪っちゃうタイプ!年上の宰相様は体力がついていけなくて、ぐったりした事の後にまた甲斐甲斐しくお世話しちゃう…!

妄想に悶える私を心配してくれた宰相様は、スティーブさんを伴って王妃陛下のお部屋まで連れて行ってくれたのだ…あとで変態近衛に説教されたのは言うまでもない。

「おい。おい!こら!どこに意識飛ばしてんだ!」

ハッ、またトリップしてた。目の前にはチンピラが…。

「すみません」

「で?エリオットがどうした?」

「どうもしません。優しいってだけです。すごく」

あー…ジャポン皇国は楽しみだけど、エリオット宰相様×スティーブさんを見れなくなるのだけがツラい…。
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