27 / 161
悪魔がペットを好きすぎる件
2
しおりを挟む
王妃陛下に見せてもらった『我が国の食文化』という書物は、日本食の紹介ブックだった。嬉しい…!
「ソフィアちゃん、お米を知ってるの?」
「はい!陛下からお聞きかと思いますが、ソフィアになる前の私が暮らしていた国…日本の主食なんです!」
うわー、味噌、醤油、砂糖、塩、日本酒…ジャポン酒も!刺身とか、天麩羅とか、トンカツもあるの!?すごい!
涎が出そうになりながら眺める私を面白そうに見ていた王妃陛下は、
「ソフィアちゃん」
と私を呼んだ。
「は、…あ、すみません。せっかくお時間いただいてるのに、」
「ううん、あのね。ソフィアちゃん、良かったら、ジャポン皇国に行かない?」
…え?
「実はね、わたくしもこの本を見て、是非にも食べてみたいと思って…!でも、わたくし自ら行けないから、王宮の料理人を二人ほど派遣しようと陛下に申請してみたの。そうしたら、本人が希望するなら行かせていい、って言ってくれたから。ソフィアちゃん、王太子妃って立場では行かせてあげられないけど、見習い料理人として行かない?どう?」
「いいんですかっ!?」
王妃陛下はニコニコすると、「わたくしがお願いしたいのよ、ソフィアちゃんが行ってくれたら嬉しいわ。知識があるんだもの」とギュッと手を握ってくれる。
「行きたいです、是非にも行か」
「ダメです」
ウキウキした気持ちに水を差したのは、やはり悪魔だった。
反論しようとした私よりも先に、王妃陛下の言葉が飛ぶ。
「なぜダメなの?ソフィアちゃんは適任よ。国交を結んで、これからソルマーレとジャポン皇国は異文化交流を深めていくのよ。その第一歩として、食文化の交流を行うのよ。国のためにすることなのに、なぜダメなのか理由を言いなさい」
天使と悪魔がバチバチと睨み合う。怖くて近づけない。
「フィーは、なんにもわからないバカなんですよ、文化の交流に役立つはずがない」
「だから、食文化だって言ったじゃない。ソフィアちゃんが持ってる知識を活かせるのよ」
「ソルマーレ国を代表して行くのに、ソルマーレについて答えられない人間を行かせるべきではないと考えます」
その言葉を聞いた王妃陛下はニヤリと嗤った。昨日覗いたドSの片鱗が…!
「じゃあ、ソフィアちゃんがソルマーレ国についての知識があれば問題ないということね。言ったわよ、ギデオン」
悪魔から私に視線を移した王妃陛下は、「ソフィアちゃん、ジャポン皇国に行くのは1ヶ月後なの。それまでに、我が国についての知識をかんっぺきに仕上げるわよ。いいわね」と宣言した。目が…目が笑ってない…可愛らしい笑顔なのに…。
「…返事は?」
「はい、やります!」
王妃陛下に対する恐怖もあるが、それを上回る嬉しさがある。米を食べられる…!
「フィー、なぜ!?じゃあわたくしも行きます!」
叫ぶ悪魔に王妃陛下は冷たく告げた。
「ソフィアちゃんは、王太子妃として行くんじゃない、見習い料理人として行くのよ。近衛騎士の貴方が着いていくのおかしいじゃない。何を考えてるの?バカも休み休み言いなさい。ソフィアちゃんをバカ呼ばわりしているけれど、貴方のほうがよっぽどバカよ」
痛い。容赦ない。悪魔も、「ぐぅ…っ」と唸るのみで反論できないようだ。
「さ、邪魔だから出て行きなさい、ギデオン。そもそもなぜ部屋の中にしれっといるのかわからないわ。ここにはわたくしの近衛がいるから安心なさい。貴方はどこかで待機してなさい。夕飯には呼んであげるわ。ただし、ソフィアちゃんの隣はわたくしよ。貴方は陛下の隣にでも座りなさい」
しっ、しっ、と犬を払うように手を振る王妃陛下。強い…!羨ましい…!さすが天使…!
ギデオンさんは恨みがましい目で私をじっと見ていたが、トボトボと出て行った。あの後ろ姿を見ると可哀想になるけど、私はジャポン皇国に行きたい!是非にも行きたい!だから邪魔されては困る。ここはいくら可哀想でも放置するしかない。
そこからの3時間で、王妃陛下は私の中で天使から魔王になった。怖い。容赦ない。しかし目的のために、このしごきに耐えるしかない…!必死にノートをとり、王妃陛下が準備してくれた蔵書を読み、最後に確認テストを受ける。ソフィアの頭には本当に何もない…帰ったら復習しないと!
夕食はマナー講習の場になり、王妃陛下に直された部分をメモする。大変だけど楽しい。ただ、…悪魔の視線が痛い。
離宮に戻る馬車の中で、悪魔は私の手を繋ぎ離さなかった。離宮に着くと私を追いたてるように風呂に入れ、入れ違いに自分も高速で入り、すぐさまベッドに押し込まれた。そのままギュウッと抱き込まれる。
「…ギデオンさん、何がしたいの」
「フィーが、ジャポン皇国に行くなんて言うから悪いんです!本当はお風呂だって一緒に入りたいくらいです!」
「何を言ってるの!?いくら私をペットだと思ってるからって、」
衝撃発言に思わず顔を見上げると、ギデオンさんは不貞腐れた顔でこちらを見ていた。
「…どうしても行くんですか。わたくしは行けないのに」
「行くよ。せっかく王妃様がチャンスを与えてくれたんだよ?もしかしたら、陛下の課題を解決するヒントを掴めるかもしれないじゃない。私は、絶対に王太子と離縁するの。そのために、できることはやる。すぐにやる。やらずに後悔したくないの」
一番は米目当てなんだけど。
ギデオンさんは何も言わず、私をギュウッとする。ペットがいなくなると寂しい気持ちはわかるけど、我慢してもらうしかない。
「フィー」
「なに?」
「わたくしとの約束は、必ず守ってもらいますからね」
…内容わからないのに。脅迫にしか聞こえない。
ギデオンさんに抱き込まれたまま、いつの間にか眠りについた。
「ソフィアちゃん、お米を知ってるの?」
「はい!陛下からお聞きかと思いますが、ソフィアになる前の私が暮らしていた国…日本の主食なんです!」
うわー、味噌、醤油、砂糖、塩、日本酒…ジャポン酒も!刺身とか、天麩羅とか、トンカツもあるの!?すごい!
涎が出そうになりながら眺める私を面白そうに見ていた王妃陛下は、
「ソフィアちゃん」
と私を呼んだ。
「は、…あ、すみません。せっかくお時間いただいてるのに、」
「ううん、あのね。ソフィアちゃん、良かったら、ジャポン皇国に行かない?」
…え?
「実はね、わたくしもこの本を見て、是非にも食べてみたいと思って…!でも、わたくし自ら行けないから、王宮の料理人を二人ほど派遣しようと陛下に申請してみたの。そうしたら、本人が希望するなら行かせていい、って言ってくれたから。ソフィアちゃん、王太子妃って立場では行かせてあげられないけど、見習い料理人として行かない?どう?」
「いいんですかっ!?」
王妃陛下はニコニコすると、「わたくしがお願いしたいのよ、ソフィアちゃんが行ってくれたら嬉しいわ。知識があるんだもの」とギュッと手を握ってくれる。
「行きたいです、是非にも行か」
「ダメです」
ウキウキした気持ちに水を差したのは、やはり悪魔だった。
反論しようとした私よりも先に、王妃陛下の言葉が飛ぶ。
「なぜダメなの?ソフィアちゃんは適任よ。国交を結んで、これからソルマーレとジャポン皇国は異文化交流を深めていくのよ。その第一歩として、食文化の交流を行うのよ。国のためにすることなのに、なぜダメなのか理由を言いなさい」
天使と悪魔がバチバチと睨み合う。怖くて近づけない。
「フィーは、なんにもわからないバカなんですよ、文化の交流に役立つはずがない」
「だから、食文化だって言ったじゃない。ソフィアちゃんが持ってる知識を活かせるのよ」
「ソルマーレ国を代表して行くのに、ソルマーレについて答えられない人間を行かせるべきではないと考えます」
その言葉を聞いた王妃陛下はニヤリと嗤った。昨日覗いたドSの片鱗が…!
「じゃあ、ソフィアちゃんがソルマーレ国についての知識があれば問題ないということね。言ったわよ、ギデオン」
悪魔から私に視線を移した王妃陛下は、「ソフィアちゃん、ジャポン皇国に行くのは1ヶ月後なの。それまでに、我が国についての知識をかんっぺきに仕上げるわよ。いいわね」と宣言した。目が…目が笑ってない…可愛らしい笑顔なのに…。
「…返事は?」
「はい、やります!」
王妃陛下に対する恐怖もあるが、それを上回る嬉しさがある。米を食べられる…!
「フィー、なぜ!?じゃあわたくしも行きます!」
叫ぶ悪魔に王妃陛下は冷たく告げた。
「ソフィアちゃんは、王太子妃として行くんじゃない、見習い料理人として行くのよ。近衛騎士の貴方が着いていくのおかしいじゃない。何を考えてるの?バカも休み休み言いなさい。ソフィアちゃんをバカ呼ばわりしているけれど、貴方のほうがよっぽどバカよ」
痛い。容赦ない。悪魔も、「ぐぅ…っ」と唸るのみで反論できないようだ。
「さ、邪魔だから出て行きなさい、ギデオン。そもそもなぜ部屋の中にしれっといるのかわからないわ。ここにはわたくしの近衛がいるから安心なさい。貴方はどこかで待機してなさい。夕飯には呼んであげるわ。ただし、ソフィアちゃんの隣はわたくしよ。貴方は陛下の隣にでも座りなさい」
しっ、しっ、と犬を払うように手を振る王妃陛下。強い…!羨ましい…!さすが天使…!
ギデオンさんは恨みがましい目で私をじっと見ていたが、トボトボと出て行った。あの後ろ姿を見ると可哀想になるけど、私はジャポン皇国に行きたい!是非にも行きたい!だから邪魔されては困る。ここはいくら可哀想でも放置するしかない。
そこからの3時間で、王妃陛下は私の中で天使から魔王になった。怖い。容赦ない。しかし目的のために、このしごきに耐えるしかない…!必死にノートをとり、王妃陛下が準備してくれた蔵書を読み、最後に確認テストを受ける。ソフィアの頭には本当に何もない…帰ったら復習しないと!
夕食はマナー講習の場になり、王妃陛下に直された部分をメモする。大変だけど楽しい。ただ、…悪魔の視線が痛い。
離宮に戻る馬車の中で、悪魔は私の手を繋ぎ離さなかった。離宮に着くと私を追いたてるように風呂に入れ、入れ違いに自分も高速で入り、すぐさまベッドに押し込まれた。そのままギュウッと抱き込まれる。
「…ギデオンさん、何がしたいの」
「フィーが、ジャポン皇国に行くなんて言うから悪いんです!本当はお風呂だって一緒に入りたいくらいです!」
「何を言ってるの!?いくら私をペットだと思ってるからって、」
衝撃発言に思わず顔を見上げると、ギデオンさんは不貞腐れた顔でこちらを見ていた。
「…どうしても行くんですか。わたくしは行けないのに」
「行くよ。せっかく王妃様がチャンスを与えてくれたんだよ?もしかしたら、陛下の課題を解決するヒントを掴めるかもしれないじゃない。私は、絶対に王太子と離縁するの。そのために、できることはやる。すぐにやる。やらずに後悔したくないの」
一番は米目当てなんだけど。
ギデオンさんは何も言わず、私をギュウッとする。ペットがいなくなると寂しい気持ちはわかるけど、我慢してもらうしかない。
「フィー」
「なに?」
「わたくしとの約束は、必ず守ってもらいますからね」
…内容わからないのに。脅迫にしか聞こえない。
ギデオンさんに抱き込まれたまま、いつの間にか眠りについた。
47
お気に入りに追加
5,689
あなたにおすすめの小説

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました
常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。
裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。
ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~
Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。
「俺はお前を愛することはない!」
初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。
(この家も長くはもたないわね)
貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。
ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。
6話と7話の間が抜けてしまいました…
7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる